放送終了近づく「時事放談」自民総裁選では石破氏サイドの出演一色

◆選挙に不公平な放談

 TBSの政治討論番組「時事放談」が今月末の30日放送を最後に終了するという。時期はちょうど自民党総裁選と重なり、毎週テーマになるが、安倍晋三首相と石破茂元幹事長の当落を決める選挙でも、安倍首相への批判・苦言が続く。無論、政治討論に政権批判は付き物。ただ、出演者に偏りがある。

 8月から見ると、5日に武村正義氏(元新党さきがけ代表、反自民非共産8党会派の細川連立内閣で官房長官)、片山善博氏(民主党政権・菅直人内閣で総務相)、12日に石破茂氏(自民党石破派領袖)、藤井裕久氏(民主党政権・鳩山内閣で財務相)、19日に村上誠一郎氏(自民党無派閥、総裁選で石破氏推薦人)、増田寛也氏(元岩手県知事、第1次安倍内閣、福田康夫内閣で総務相)、26日に鴨下一郎氏(自民党石破派幹部)、船田元氏(自民党竹下派)、9月2日に中谷元氏(自民党谷垣派)、武村氏、9日に増田氏、片山氏だ。

 このうち、現役の自民党国会議員は石破氏ほか村上、鴨下、船田、中谷の各衆院議員だが、いずれも石破氏支持か安倍首相の総裁選3選に否定的だ。番組では自民党議員の大多数が安倍首相支持と指摘しながら、その数多くいる方から出さない。選挙であり、出演者は公平にして双方半々にならなかったのか。

 8月26日放送で「誰に投票するかは決めかねている」という船田氏は、「あまり安倍一強という状況が続くとなると、国民世論から乖離(かいり)をする状況がますます強くなっていくのではないか。……やはり党内においても地方においても少しは票が散る形の方が望ましい」と、安倍氏に票が集まることを懸念した。

 石破派の鴨下氏は「各派閥の会長さんたちが安倍支持をするという方針をお決めになったということでありますけど……会長らが支持を決めたのなら、息苦しい空気になると思う」と述べ、党内民主主義を疑問視した。が、毎週見ても安倍氏支持者抜きで、放談は一方的だ。

◆判官贔屓を誘う印象

 また、産経(8・12)記事から安倍氏が「現職がいるのに総裁選に出るというのは、現職に辞めろと迫るのと同じだ」と周辺に語ったと引用し、質問を振った。船田氏は「総裁選挙が3年に1度必ずあるのだから、その時、出ちゃだめだという話は、これはもういただけない」と批判した。

 が、石破氏は8月10日既にに出馬表明していた。首相が言ったとされる内容は、現職に対抗馬が立つケースの選挙では当たり前であり、周辺に語ったということは、周辺外の石破氏に言ってないはずだ。まして選挙は銃弾を票に代えた戦争と例えられる。発言による威勢の張り合い、駆け引きなど当然だろう。

 ところが、「時事放談」はこの記事にこだわった。2日放送でもナレーションで「自民党国会議員の7割以上が安倍3選支持の石破包囲網です。これに対し、石破氏は『正直、公正』を掲げ安倍総理と一騎打ちです」と述べ、さらに「『首相圧勝で3選狙う』という記事ですが、中に安倍総理が石破氏を念頭に、『現職がいるのに…』」と繰り返した。強者の圧力に弱者が挑む判官贔屓(びいき)を誘った印象だ。

 中谷氏は、「自民党に必要なのは政策論争であり、切磋琢磨(せっさたくま)して、より国民に近い政党として磨きをかけていくという意味において、今回石破氏が出なかったら、安倍総理の独走、一強支配の自民党のままだ。そうすると自浄作用も緊張感も生まれてこない」と語った。総裁選の意義として聞かせるものがある。が、毎週ワンサイドの番組の上。放送された2日、中谷氏は高知市で石破氏支持を表明した。

◆「反安倍路線」に偏執

 既に本欄(6・17、8・2)でも触れたが、与野党が対立する通常国会中は立憲民主党の枝野幸男代表はじめ片山氏や藤井氏ら旧民主党政権にあった野党系論客ばかりで「モリカケ」追及。7月は水害前の「赤坂自民亭」写真を執拗に取り上げた首相批判、8~9月に総裁選が焦点になると今度は上述の通り石破氏サイド一色だ。

 番組副題に「政治を叱る」とあるが、毎週視聴すると出演者の偏りには反安倍首相路線と見える。放送打ち切りを決めたが、総裁選の現職優位が予想され、あと3年このワンパターンを続ける気力がなくなったのかも知れない。

(窪田伸雄)