スルガ銀の組織ぐるみ不正融資を断罪し、金融庁の責任も問う各紙


◆優等生とされた地銀

 低金利でも収益上げた地銀の優等生、実はコンプライアンス(法令順守)無視の“トンデモ”銀行だった――。

 シェアハウスへの不適正な融資問題で、スルガ銀行(静岡県)の第三者委員会がまとめた調査報告書から浮び上がった同行の実態である。

 調査報告書を受け、9日付社説で論評を掲載した各紙の見出しは、次の通りである。

 読売「全社的な融資不正にあきれる」、朝日「解体的出直しが必要だ」、毎日「地域金融機関の資格欠く」、日経「スルガ銀は経営再建へ社風を刷新せよ」。報告書発表当日の8日付社説で同行を扱った東京の見出しは「地域金融の原点に返れ」である。

 列挙した見出しの通り、各紙いずれも、同行断罪の論調である。このうち、読売、朝日、日経は金融機関として、東京と毎日は地銀という地域金融機関としての視点から、同行の行動を問題視した。

 各紙が共通して批判するのは、行き過ぎた利益至上主義とその達成のための過剰なノルマ主義、審査より営業優先のコンプライアンス無視の姿勢、それらを許したガバナンス(企業統治)の著しい欠如である。結果として、シェアハウスのオーナーは借金返済に窮するなど、「肝心な顧客の利益は、二の次にされていた」(読売)わけである。

◆各紙も不正見抜けず

 これらの批判は、確かにもっともであるが、同行はこうした実態がシェアハウス問題で明るみになるまでは、地銀の「優等生」として金融庁から評価され、各紙も見抜けなかったことを考えると、釈然としない面が残る。

 日経は次のように指摘する。「安定しているが、もうけの薄い地元法人向け貸し出しを圧縮し、リスクはあるが利ざやの厚い個人取引を全国展開する。地域経済と密接不可分な地銀としては、大胆な戦略を推進したスルガ銀は2017年3月期まで最高益を更新し続けてきた。全国のほかの地銀が低金利のあおりで収益低迷に苦しむなかでも稼ぐ『異形』の銀行を、株式市場だけでなく、金融庁も一時は評価した」。

 朝日も「まるで小説かテレビドラマのような出来事が、『優等生』とされた地方銀行を舞台に繰り広げられていた。驚くしかない」という具合で、金融庁に対しては「これだけの不正を見過ごし、高収益の銀行として持ち上げてきた責任を感じるべきだ」とした。

 同様に、「スルガ銀を模範とたたえていた金融庁の監督責任も問われよう」とした東京は、毎日とともに地域金融の原点回帰を説いた。

 特に東京は、今回、預金残高を改竄(かいざん)してまで不正融資を行っていたスルガ銀ばかりでなく、算定根拠が不明な融資手数料の受け取り(東日本銀)、長期間にわたる書類の偽造(みちのく銀)など、「最近明らかになった(地銀の)不正は形態こそさまざまだが、共通するのは収益を優先するあまりガバナンス(企業統治)が著しく欠如している点だ」と強調する。

◆経営環境厳しい現状

 だからこその原点回帰というわけなのだが、同紙も認めるように、地銀をめぐる環境は決して楽ではない。18年3月期決算では、地銀106行のうち半数以上の54行で本業の利益が赤字で、このうち40行は赤字が3期以上続いている状況であり、「低金利に加え人口減も逆風となっている」(東京)のである。

 創業家出身の岡野光喜会長や米山明広社長ら経営陣の退陣について、各紙は「当然」とし、今後は「企業体質の抜本的な改革を急がねばならない」(読売)、「銀行業を続けるのであれば、解体的出直しを図るしかない」(朝日)、「経営再建には創業家の影響力を排除し、社風を根本から改めることが欠かせない」(日経)などとした。

 もちろん、これらの指摘に異論はないが、毎日が強調するように、「無理をしないと収益を上げにくい地域金融機関の経営環境も無視できない」現状である。

 「地元で収益機会が細り、日銀の政策のあおりで国債の運用でも稼ぎにくくなった」「地方経済再生のために貸し出しを増やせ、と発破をかけるばかりでは、不良債権を増やし、結果的に地元経済に迷惑となる恐れもある」

 毎日はこう述べ、「地域経済と金融のあり方が問われているのも忘れてはならない」としたが、日銀の超低金利、大規模緩和策の批判と受け止めてもいいだろう。

(床井明男)