内閣府世論調査報道で「生活満足」の結果を矮小化・抹殺する朝日・毎日

◆「満足」が過去最高に

 内閣府の世論調査に「国民生活に関する世論調査」というのがある。今年は6月に行われ、8月24日に公表された。

 同調査は新聞の世論調査と違って政治に関する質問がなく、生活に対する満足感や今後の生き方などを聞く、至って中立的なものだ。1万人を対象とした訪問面接調査で、統計調査として評価が高い。第1回は終戦直後の1948年で、58年以降ほぼ毎年行われており、トレンド(動向)を知る上で欠かせない。

 例えば、「物の豊かさか、心の豊かさか」との質問では、76年に初めて「心」が「物」を上回り、その後、「心」が増え続け、平成期はほぼ6対3。今年の調査結果でも、このトレンドは変わらなかった。

 今年の調査結果はどうか。読売25日付は「『生活に満足』74・7% 過去最高」、産経も「現在の生活に『満足』74・7% 過去最高」と報じている。満足率は調査項目に加わった1963年以来最高だった昨年(73・9%)を更新、「(内閣府は)緩やかな景気回復が影響したと分析している」(読売)という。

 内閣府のホームページで調査結果の時系列(63年以降)を見ると、安倍政権(第2次)以前に「生活満足」が70%を超えたのは85年と95年の2回しかない。前者はバブル期、後者は阪神大震災と地下鉄サリン事件があり、国民の多くが命のある現状の生活に満足したのかもしれない。

 それ以降、下がり続け小泉政権末期の2003年には50%台に落ちた。民主党政権下でも60%台だが、安倍政権が本格始動した13年に71%に上昇。それ以降、70%を超え続け今年は過去最高。これはどう見ても報道価値がある。読・産が重視するのは当然だ。

◆朝・毎は防災に焦点

 ところが、朝日と毎日は的外れなことを言う。朝日25日付は「力入れるべき政策 『防災』が過去最高」。記事には「今後、政府はどのようなことに力を入れるべきか」(複数回答)を尋ねたところ、『防災』が前年より2・4ポイント増の28・3%で過去最高となった」とある。

 これだけ読むと、政府への要望のトップが「防災」と錯覚するが、記事は続けて「(防災は)期間中に大阪北部地震が発生しており、内閣府は回答に影響した可能性があるとみている。最も多かったのは『医療・年金等の社会保障の整備』の64・6%」と、社会保障が防災の2倍以上の要望があったとしている。

 これも調べてみると、要望率が高いのはほかにも「高齢社会」「景気」(いずれも50%台)「防衛・安保」「外交・国際協力」(いずれも30%台)などがあり、「防災」は何と10番目の低さだった。昨年比の伸びは大きいが、取り立てて高いわけではない。過去最高の「生活満足」は付け足しのように記事末尾に短くあるだけだった。

 一方、毎日25日付は朝日と口裏を合わせたかのように「『政府は防災に力を』28% 過去最高 災害発生影響か」と防災を焦点化し、驚いたことに「生活満足」の記述がまったくない。記事の書き出しが朝日とそっくりなので、通信社の配信モノでもあったのかと調べてみると、すぐにネタが割れた。

◆ネタ元は時事の配信

 時事通信に発表された24日の夕刻に「『防災』に期待強まる=災害多発が影響―内閣府調査」との記事を配信していた(ネット版)。毎日は自社記事でなく、これを使っていた。ただし時事には「生活満足」が過去最高との記述があるが、毎日はその部分をそっくり省いていた。

 朝日には署名があるから自社記事なのだろうが、テーマの立て方も記事の進め方も時事と似ている。これもネタ元は時事だったのではないかと勘ぐってしまう。

 「生活満足」が安倍政権下で7割を超え、今年は過去最高を記録したのはアベノミクスの成果だろう。となれば、反安倍の朝日と毎日にとっては都合が悪い。それで時事の配信に飛び付き、「生活満足」を矮小(わいしょう)化したり、抹殺したりしたのではなかろうか。

 こんなふうに行政の単純な発表モノにも記者のバイアスがかかる。時事もその謗(そし)りを免れない。わが国の通信社は共同と時事の2社しかない。共同は朝日以上の左傾化で知られる。時事が「お前もか」ではメディアの信頼性が一層落ちる。苦言を呈したい。

(増 記代司)