同性カップル「生産性」を障害者差別に結び付けた「ニュースウオッチ9」

◆率先して杉田氏批判

 日本に広がるLGBT(性的少数者)の権利拡大運動を支える柱の一つは、NHKだということは以前にこの欄で指摘した。行政によるLGBT支援の行き過ぎに疑問を呈する論考を、月刊誌に寄稿した杉田水脈(みお)衆院議員に対する、支援団体や左派メディアによるバッシングが続いているが、“LGBTアライ”(同盟者)のNHKも当然のごとくに、その仲間に加わっている。というよりも、“杉田バッシング”の先頭に立っていると言った方がいいだろう。

 LGBT支援に力を入れるNHKが反対派の言論を封じ込めるために、「ここまでやるか」と思わせたのは、8月3日報道の「ニュースウオッチ9」。画面に「『生産性がない』広がる波紋」というテロップを出し続けた上に「人を生産性で区別する考え、その波紋はLGBT以外の人にも広がっている」というナレーションを流し、あたかも杉田氏が人を生産性で差別する考えを持っているかのような印象操作を行ったのだ。

 杉田氏がバッシングされるようになったのは、寄稿の中で「生産性」という言葉を使ったからだが、その論旨は人を生産性で区別することを容認するようなものではない。

◆寄稿の論旨歪め報道

 NHKの報道が寄稿の論旨をいかに歪(ゆが)めて報道したかは、その部分を読めばすぐ分かる。少し長くなるが紹介する。

 「例えば、子育てや子供ができないカップルへの不妊治療に税金を使うというのであれば、少子化対策のためにお金を使うという大義名分があります。しかし、LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供をつくらない。つまり『生産性』がないのです。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか」

 NHKだけでなく、左派メディアや野党議員などは、LGBTには「生産性がない」と、杉田氏が述べたかのごとくに報道し、それは「LGBT差別だ」と攻撃している。しかし、しっかり読めば分かるように、「生産性がない」のは同性カップルのこと。つまり、同性カップルからは子供が生まれないという意味であって、「LGBT自体に生産性がない」と言ったのではない。そして、自然には子供が生まれる可能性のない同性カップルを、「夫婦」と同等に扱うことに疑問を呈しただけである。

 杉田氏はこれまでにも、現在のLGBT支援活動や行政の動きを批判する論考を発表しているが、今回の寄稿もその延長線にあり、特に目新しい内容ではない。ただ「生産性」という言葉を使ったために、支援団体や左派メディアから揚げ足を取られて猛批判にさらされているというのが騒動の実態である。

 例えば、テレビ朝日の「報道ステーション」(8月2日放送)は「生産性のないLGBTに税金に使うべきでない」と言ったかのように説明した後、「自民党として、人権を否定する杉田議員の主張を容認するのか」というナレーションを流した。これも同氏が人権を否定する人物と誤解させる印象操作である。

◆反対派の言論封殺へ

 NHKがえげつないのは、「生産性がない」という言葉を障害者差別に結び付けたことだ。「おととし、相模原市で起きた障害者殺傷事件の被告が『生産性のない人間は生きる価値がないなどという趣旨の発言をしている』」として、難病患者支援団体の事務局長の次のようなコメントを紹介した。

 「杉田議員の書かれた文章を読んで、真っ先にひらめいたのは植松(被告)と根っこは同じだなと。日本ももしかしたら医療費や介護費用を削減するような方向にこの次はくるなと。LGBTの次は重度障害者に話はくるのではないかと思った」

 そして、杉田氏の寄稿問題を扱った特集は、有馬嘉男キャスターの情緒的な言葉で締めくくった。「人、一人ひとりの価値を数字で測るような考え方、受け入れることはできません」。

 自然には子供が生まれない同性カップルを夫婦と同等に扱うことに疑問の声を出しただけなのに、なぜこんなコメントが出るのか。LGBT支援反対派に、「障害者差別」というレッテル貼り、その言論を封殺しようという意図があるとしか思えない。

(森田清策)