従来の学テ反対論を総括せず有効活用論に転向するも順位載せぬ朝日

◆成績向上しない大阪

 小学6年と中学3年を対象にした全国学力テスト(学テ)の結果が発表された(各紙1日付)。夏の甲子園が始まるとあって、出身地の成績が気になった方もおられよう。

 かく言う筆者は小中高とも大阪市立学校の出だ。中学生の頃は「受験戦争」と呼ばれた時代で、中間・期末試験に加えて毎月、実力テストに追われた記憶がある。それで大阪の結果につい目がいったが、都道府県別の成績一覧表を見て、思わずため息をついた。

 小中ともに全ての教科で全国平均を下回り、全都道府県中、小学生が44位、中学生が40位。とりわけ大阪市は政令指定都市の中で小中ともに最下位という散々たる結果だった。「橋下徹さん、これはどういうこっちゃ」と大阪弁で愚痴ってしまった。

 大阪の教育の低さはかねて問題にされ、橋下氏は府知事時代に全国最下位レベルの結果に「このザマは何なのか」と教委に情報開示を求めた。が、教委が拒んだので「クソ教育委員会」とののしり、それを契機に教育行政基本条例と職員基本条例を作った。

 市長時代にも教育改革に取り組んだはずなのに、それでも成績は向上しない。なんでや? 地元の人なら誰もが抱く疑問ではないか。

 それで大阪の知人に聞いてみると、「なにせ左翼教組が強くてアカンわ。それに西成区のように4人に1人が生活保護という大阪特有の問題もあるしね」と悲観的だった。

 橋下市政を継承した吉村洋文市長は、学テの成績で教員を評価し、手当を増減させる人事評価の導入を検討すると言う。なかなか大胆なアイデアだが、教組に加えて左派マスコミの反対も予想される。それ以前に地方公務員法や文科省が立ちはだかるかもしれない。

◆反学テ闘争を後押し

 さて、前置きが長くなった。朝日である。戦後、朝日は一貫して学テに反対してきた。過当競争や学校間の格差を生み出すというのがその理由だが、イデオロギー的な「平等主義」が根底にあったのは間違いない。

 1961年に日教組が全国各地で過激な反学テ闘争を繰り広げ、北海道旭川市では組合教師が学テに反対して学校を閉鎖する暴力事件を引き起こした。これを朝日は後押しし結局、学テは廃止された。

 それが復活したのは2007年のことだ。「ゆとり教育」で学力が低下したと批判されたからで、地域や学校の学力が学テで初めて明確になった。それでも朝日は反対し、テスト結果が公表されると、「これならもう要らない」(07年9月25日付社説)と難癖をつけ、学テ無用論を張った。

 だが、学校現場は違っていた。学テ結果を受け止め、優秀県に教員を派遣するなど学力向上に励んだ。その後、紆余(うよ)曲折もあったが、教育界も新聞も有効活用論が大勢を占めるようになった。

 すると、朝日は徐々に論調を変化させ、16年に集計ミスで発表が遅れると、指導や学習に支障を来すと文科省を叱る始末だった(同年9月30日付社説)。従来の反対論を一切総括せず、いつの間にか有効活用論に転向した。何ともやり方がずるい。

◆今年は社説も“沈黙”

 では、今年はどうか。学テ結果を各紙同様に報じるが、扱いは小さい。都道府県別の成績一覧表は点数があるだけで、順位はない。それで前記の大阪の順位は朝日で知ることができなかった(読売を参照した)。過当競争批判をしたので、あえて順位を削ったと思われるが、これでは各県・政令市の比較ができない。

 ちなみに沖縄タイムスにも順位がなく、記事は「県内小学校 全国並み/中学校は平均以下」とあるだけで、成績の実態がいまひとつ分かりづらい。これも読売で調べてみると、小学校は国語Aが43位と低迷しているものの、算数Aは4位。他の3教科も10位台前半で健闘していた。

 だが、「中学の平均以下」は国語Bが45位、他の4教科が47位つまり全国最下位という惨状だった。沖縄では小学生は成績が良いのに中学になると、がくんと落ちる。なぜそうなるのか、分析記事はない。むろん順位を書かない朝日にはそうした事実すら知るすべがない。

 とまれ朝日の学テ報道は落第だ。いつもなら黙っていない社説も今年は逃げている。朝日完敗の図だ。

(増 記代司)