問題意識の違うアエラ「大人恋愛」とニューズウィーク「世界貿易戦争」
◆「野田氏排除」の意図
国会も終わり、自民党は総裁選に向けて動き出したタイミングで、候補に名乗りを上げた野田聖子総務相の「元暴力団員の夫」が取り上げられた。しかも週刊新潮(8月2日号)、週刊文春(同)の2誌同時にである。
立候補を取り沙汰されていた岸田文雄政調会長が早々に「安倍支持」を打ち出した中で、石破茂元幹事長、野田氏、安倍晋三総裁の三つどもえになろうかという時の“スキャンダル”報道には“何らかの意図”がありはしないかと勘繰ってしまう。
いや、意図はありありだろう。「元暴力団員」であり韓国の出自を持ち、大臣である妻の名をちらつかせながら「金融庁へ圧力をかけた」疑いのある夫を持つ野田氏は総裁候補としてふさわしくなく、総裁選から排除したいというものだ。
さらに、仮に野田氏が総理総裁になれば、この夫君が「ファースト・ジェントルマン」として公式行事や外交の場に立つことになる。それだけは絶対に許してはならない、という思いも強いはずだ。
2誌が同時にこのタイミングで報じたのはそうした“何らかの意図”に呼応したからであり、総裁選の“場外”で勝敗を決しようとした勢力、その意図に乗った週刊誌、というのはともに気持ちのいいものではない。
野田氏は、20人の推薦人確保も進まず、「金融庁圧力疑惑」が足かせとなって、「絶体絶命」という新聞報道もある。
総裁選に臨む党員が候補者の情報を知っておくことは重要だが、自ら“意図”に乗ったにせよ、このような形で週刊誌が結果的に一方の陣営に資するのは、週刊誌の報道の幅を狭めるものだ。
◆性的少数者が対象?
さて、アエラ(7月30日号)が大特集を組んだ。「大人恋愛の作法、40歳からが本気の恋」である。他の週刊誌と変わらず、アエラの読者層も中高年が中心であることを示す企画だ。「血圧」「相続」などと同列の「大人の恋」だと思って項をめくると、「不倫」「バイセクシャル」「セクハラ」「性的指向・性自認」などの記事が並び、どこが「40歳からの本気の恋」なのか分からない。週刊現代や週刊ポストがよくやる「中高年からのSEX」の類いの企画の方がよほど正直だ。
それぞれの年齢に応じた恋愛感情はある。「ともに白髪の生えるまで」老いても配偶者をいとおしく思う「愛」もある。年輪を重ねた夫婦が改めて「恋」に落ちる、人生の80年時代の「恋愛作法」というような記事があってもよかったのではないか。
だが、同誌はどちらかというと「性的少数者」を対象にした記事ばかりを載せた。つまり編集意図がそこにあったということだ。そこに「オトナだからできる恋」という見出しはそぐわない。
◆日本への影響触れず
アエラが「大人恋愛」を特集する同じ週のニューズウィーク日本版(7月31日号)は「世界貿易戦争」を特集していた。両誌の立ち位置や編集方針が違うのだから、まったく別の企画が出てくるのは当然だが、問題意識の違いはくっきりとしている。
現在の“貿易戦争”は強いアメリカを取り戻そうとするトランプ米大統領が中国に仕掛けた「赤字解消」の関税戦争だ。同誌は「世界的な貿易システムを傷つける」と警告し、最終的に「貿易戦争で得をする人はいない」と結論付けている。
トランプ大統領のターゲットである中国は売られたケンカに「報復措置」を用意していると同誌は伝える。「量的かつ質的な措置」だ。関税の掛け合いでは中国に勝ち目はない。そのため「質的」つまり通関遅延や中国内の米企業等への締め付け、営業妨害、非公式ボイコットをしてくるという見通しであるが、それが米国にどれほどの“報復”たり得るかの分析がないのが物足りない。
サード(高高度防衛ミサイル)配備に反発して中国が韓国を締め上げたことは記憶に新しい。中国各地のロッテマートが閉店に追い込まれ、中国人の韓国旅行が激減し、関連業界は減収、失業に見舞われたが、それは中国にズブズブな韓国だからの話だ。
この特集では「日本版」にもかかわらず、世界貿易戦争の日本への影響については何も書かれていなかった。まるでわが国は米中戦争の埒外にいるかのようだ。いくら「大人恋愛」を特集している国だといっても、1本ぐらい日本関連の記事があってもよかった。
(岩崎 哲)