東京五輪まで2年、酷暑を吹っ飛ばし、とにかく元気が出る産経の主張

◆暑さ対策重視の各紙

 猛烈な酷暑に襲われている日本列島。暦の上で大暑となった24日は熊谷市などで国内の観測史上の最高気温を更新する41・1度、東京・青梅市では都内初の40度超え(40・8度)を記録した。

 この24日で、開幕まで残り2年となった2020年東京五輪・パラリンピックでは、競技スケジュールの大枠が決まり、競技会場の建設や整備など受け入れ準備などが進む。一方で、大暑にかかる期間の五輪開催で暑さ対策も織り込まれてきたが、これまでにない東京などの猛暑の前に改めて暑さ対策が重要課題として浮かび上がってきた。

 「五輪まで2年」を論じる各紙論調の見出しは次の通りである。

 読売「選手と観客を酷暑から守ろう」、日経「『酷暑五輪』に備えた対策を」、小紙「重要性増す酷暑への対策」、毎日「皆が参加できる仕組みに」、産経「日本の可能性示す大会に」(以上、小紙が25日付のほかは、いずれも24日付掲載)。朝日は25日までは未掲載。

 読売など3紙が見出しに取ったことが示すように、改めて酷暑対策を最重要課題に据えている。「重要性を増しているのが、暑さ対策である。このところの異常な猛暑を考えると、無事に大会を開催できるのか、心配になる」(読売)と心細いことを言う。

 日経は「最大の課題は酷暑に備えた対策だろう」と言い、小紙も「2年後の五輪に向けて猛暑を想定して準備しなければならない」と指摘する。その上で、マラソンや競歩でスタート時刻を繰り上げたのは「適切な対応だ」(読売)、「適切な措置」(小紙)などと評価。さらに他の屋外競技でも「日中の開催をもっと減らせないか、改めて検討すべき」(日経)ことなど工夫を求めた。

 またマラソンコースなど都道約136キロで進めている赤外線反射の「遮熱性舗装」や蓄えた水の気化熱で温度を下げる「保水性舗装」などで路面温度が8~10度下げられる技術などにも言及。「できる限りの対策」(小紙)や日除けの設置や木陰づくりなど「きめ細かな対策を積み上げ」ることを求めた(日経)。

◆ボランティアも重要

 いずれも妥当な主張ばかりの中で、特に留意したいのは日経の外国人観光客についての指摘だ。各紙も言及する、多言語で対応できる救急体制の整備はその通りだが、日経はさらに「東京の暑さに慣れていない外国人に対する、事前の情報提供も極めて重要」と指摘する。これも大切な“おもてなし”だと心得たい。

 酷暑対策を重点に論じた3紙に対して、毎日はボランティアを重点にユニークな視点を示した。大会運営を支えるボランティアは今秋、募集が始まる。その数8万人だが「これだけの人員が果たして集まるのか、不安視されている」。過酷な暑さを敬遠して「応募が伸び悩んだとしても不思議ではない」というのだ。

 厳寒の平昌冬季五輪では2000人を超す辞退者が出たことを挙げ「こういった事態は避けたい」として、1日8時間程度の活動で、期間は10日以上とあった当初の「参加条件の厳しさも障害だ」と指摘。修正された先月のボランティア要項で、自己負担だった交通費も補助される形になったことなどに言及し、夏休み期間と重なる五輪に「より多くの若者の参加を期待したい」と呼び掛けた。

◆前向きに捉える産経

 タイトルが示すように、また「する、観(み)る、支える―。スポーツに関わるすべての人が主役として輝く。そんな五輪を2年後の東京から世界に発信したい」とワイドスペースの主張を結ぶ産経はポジティブな論調の展開が印象深い。各紙が指摘した暑さ対策や交通インフラ、ボランティアの確保と効率的な運用などの問題にも言及しているが、これら「山積する課題は、むしろ解決に向けた日本の力を世界に示す好機」「『酷暑の五輪』だからこそ生かせる日本の技術があるはずだ」と前向きに捉える。

 先のロシアのサッカーW杯を成功に導いたのは低い下馬評を覆して8強入りした選手の活躍と冷たい国というイメージを一変させたボランティアの笑顔だった。「日本のボランティアには、これを上回る『おもてなし』の笑顔で」と期待を寄せるなど、とにかく元気が出る主張である。

(堀本和博)