新潮“好評”連載「食べてはいけない食品リスト」に疑義を投げ掛けた文春

◆検証記事をぶつける

 週刊新潮が連載して“好評”を博している「食べてはいけない食品リスト」。「第7弾」(7月5日号)では「パン」と「調味料」がやり玉に挙げられている。具体的な商品名を出して、記事では「◯◯になる可能性が高まる」とか、「△△の過剰摂取を招く可能性がある」と“警告”しているのだ。

 斜め読みをしている人は「そんな危ないモノなのか」と驚くかもしれないが、リストに挙げられた企業は同誌に、「当社製品は食品衛生法を遵守しており」とか「厚労省が定めた法令にのっとり」と返答しており、法を犯しているわけではない。なのに「いけない」と言われてしまったのだから、企業側としては釈然としないだろう。

 同誌のキャンペーンによって、スーパーやコンビニで商品を買う際、これまでせいぜい「消費期限」や「賞味期限」しか見なかったのが、「原材料名」や「栄養成分表示」をじっくり確かめるようになった人が増えたのではないだろうか。このキャンペーンによってどれだけ売り上げに影響が出たのかについては、同誌のどこにも書いていないが。

 さて、この新潮が進めてきた「食べてはいけない食品リスト」に疑義を投げ掛けたのがライバル誌の週刊文春だ。7月5日号で「本当に食べてはいけないのか?」の検証記事をトップで報じた。久々に他誌の企画に真っ向から対抗する記事をぶつけてきたもので、別の角度からの見方が提供されるのはいいことである。

◆食品安全委が“反論”

 文春は最初に内閣府の審議会である食品安全委員会が公式フェイスブックと公式ブログに「食品健康影響評価書を引用した週刊誌記事について」を公開して、「注意喚起」を行ったことを紹介している。

 それによると、例えば「ソルビン酸と亜硝酸塩について相乗毒性がある」との指摘について、「この加熱試験反応の根拠論文で確認されたソルビン酸と亜硝酸塩の反応生成物は通常の使用状況下とは異なる極めて限られた条件下で生成されたものです」とし、同誌の引用が不完全であることを指摘、「食品安全委員会としては、ソルビン酸と亜硝酸塩の併用使用について、通常条件下ではヒトの健康に対する悪影響はないと結論付けています」と説明している。

 つまり、「極めて限られた条件下で生成されたもの」で、通常では「ヒトへの危険性」がないことを新潮は伝えていないと、文春は指摘しているのだ。

 例えば、ソーセージに含まれているリン酸塩。「過剰摂取によって健康への悪影響(成人病や腎臓疾患など)が否定できない量」と新潮はリストアップしたが、実際「リンの摂取目安である成年男子1日1000㎎、女性800㎎」を超えるには、「小さなソーセージを一日で六十七本食べるとようやく耐容上限に達することになる」といい、実質的な悪影響はないに等しいということだ。

◆楽しみな新潮の返応

 続けて文春は、「ハムなどの加工肉は、WHO(世界保健機関)から発ガン性リスクが指摘されており、食べすぎは健康を損なう怖れがある」としながら、要は「問われれべきは『量』なのだ」と強調している。その通りだ。

 「現実的な食生活であれば、上限値に達しそうにない添加物を過剰に恐れる必要はなさそうな」ことを新潮は毎週あげつらっていたということになるわけだ。

 「NPO『食の安全と安心を科学する会』の山崎毅代表」は同誌に対して、生野菜に普通に含まれる硝酸塩について、「新潮の言うように、食品に添加されるわずかな量の亜硝酸塩を恐れるのであれば、野菜に含まれる硝酸塩も恐れなければいけないということでしょうか」とし、新潮の指摘が的外れだと指摘した。

 東日本大震災以来、“お上”(当時は民主党政権)の発表する数字を信じない人々が増えてきたように感じるが、「厚労省の基準も数年経てば180度変わることも珍しくない」として、現在の“安全基準”を信用しないという向きもある。

 しかし、それを言い出せば切りがない。中国産や韓国産に比べればはるかにまともで厳格な基準をわが国は守っているはず。今号の文春の記事に対して、新潮がどう答えてくるか、楽しみだ。

(岩崎 哲)