「非核化」のかかる米朝首脳会談には沈黙し、モリ・カケに狂奔する朝日
◆米の姿勢危ぶむ各紙
12日にシンガポールで予定される史上初となる米朝首脳会談の開催がいよいよ大詰めを迎えた。5日には米ホワイトハウスが会談場所が南部セントーサ島の高級ホテル「カペラ・シンガポール」になることを明らかにした。だが、これまでの曲折をたどった経緯とトランプ、金正恩両首脳の特異な性格などから、会談が実際に行われる当日までまだ何が起こるか分からず、先行きもおよそ読めない。予断を許さないのである。
こうした中で、新聞各紙はトランプ米大統領が1日に、金正恩朝鮮労働党委員長の親書を携えて訪米した金英哲党副委員長との会談後に、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を早期に実現するとしてきた米国の目標からトーンダウンとも取れる発言をしたことに、懐疑と懸念一色の論調展開となった(朝日は6日までに、社説なし)。
トランプ氏が首脳会談実現に前のめりとなっていることを危ぶむ各紙の論調タイトルは次の通りである。
産経「『非核化の原則』再確認を」、日経「米朝首脳会談を北の核完全放棄の契機に」、読売「非核化への圧力を緩めるのか」、毎日「迅速な非核化は譲れない」(以上、3日付)、小紙「トランプ氏は足元見られるな」(4日付)。
◆過去の失敗再現懸念
各紙が異口同音に主張するのは「非核化の原則」の貫徹である。そうでなければ、トランプ氏が同じ失敗はしないと言ってきた、これまでの米国の愚を繰り返すことになる。ワイドスペースを割き、もっとも力を込めて説く毎日社説はまず「特に相手は北朝鮮なのだ」と強調し、愚を犯してきたこれまでの対北交渉を次のように復習する。
「94年に北朝鮮の核開発を凍結する米朝枠組み合意が結ばれたが、北朝鮮は国際原子力機関(IAEA)の査察を拒否、あるいは査察要員を追放して、ひそかに核開発を進めてきた。/何より2005年9月の6カ国協議を思い出すべきだ。北朝鮮は他の5カ国とともに核放棄の共同声明を発表したが、合意事項を守らず翌06年には初の核実験を行った」ことを「米国は忘れてはいまい」と念押し。その上で、過去の失敗をしないというトランプ氏に「ならば、北朝鮮ペースの核廃棄ではらちが明かないと考えるべきだ」と迫った。何よりも、北朝鮮の非核化の実現が先決で「そこを間違えれば、地域の平和と安全への青写真もゆがんでしまう」と訴える。同感である。
トランプ氏が圧力を緩める節の発言にも各紙は強い懸念を示した。
読売は冒頭から「北朝鮮の非核化を巡る立場の違いは残されたままだ。圧力を緩めるのは時期尚早であることをトランプ米大統領は認識する必要がある」と強調。北朝鮮の段階的な非核化の求めに対し「『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』を早期に実現する目標が揺らいではならない」。産経は、トランプ氏が非核化まで制裁解除はしない方針なのを妥当としながらも「交渉中は追加制裁をしないと表明した」ことには「国際社会の北朝鮮制裁網が緩む恐れがある」と懸念。「経済、軍事両面の強い圧力があればこそ、北朝鮮は交渉の場に出てきた点を忘れてはなるまい」と強調し、真の非核化実現まで「北朝鮮に決して見返りを与えない原則」の堅持を強く求めた。
◆日本の立場を伝えよ
日経は「めまぐるしい動きに翻弄されて北朝鮮の完全な核放棄を追求する本質を見失ってはいけない」ことを指摘し、小紙も「北朝鮮への最大限の圧力を継続すべきだ」とした上で、「トランプ氏は北朝鮮に足元を見られないよう」いさめたのである。いずれも妥当な主張である。
そこで、日本である。安倍晋三首相が従来から主張している北朝鮮に対して圧力を高めることはもとより、北朝鮮の日本人拉致問題についての日本の明確な立場を改めてトランプ氏に伝えるべきである。各紙も「日米が立場を入念に擦り合わせる必要がある」(日経)、「日本政府は核・ミサイル、拉致問題の具体的進展を求める立場を米国に伝え続けねばならない」(読売)、「(トランプ氏は)日本による対北支援にも言及したが、拉致問題の全面解決なくして検討はあり得ない」(産経)などと訴える。
訪米の安倍首相に大きな期待が掛かる中で、朝日はこの大事に音無しの構え。相変わらず、モリ・カケ問題に血道を上げているのである。
(堀本和博)





