日大選手会見に大学の社会的存在意義が問われると熱く断じた産経に同感

◆ルール無視した行為

 2020東京五輪を目指しスポーツ各競技団体は、参加選手やチームの選考や選抜、育成と強化に専心していく時期に入っている。その大事な時に、日本のスポーツ界では期待に逆行する不祥事が続いている。先のカヌー競技でのライバル選手の飲料に禁止薬物を混入して失格に追い込んだ事件や女子レスリング五輪4連覇中の伊調馨選手へのパワハラ問題。そして、今度は五輪種目ではないが、人気大学スポーツのアメリカンフットボールで、名門の日大選手が今月6日定期戦で無防備な関西学院大の選手に背後から激しいタックルを仕掛け、3週間のけがを負わせたのである。

 スポーツにけががあるのは仕方ないが、それもルールを守った上での話。日大選手の行為はルール無視のラフプレーで、その映像がインターネットなどで拡散されると、社会に大きな衝撃を与え激しい非難の渦を巻き起こしていったのである。

 この問題を論調で取り上げたのは、最も早く反応した産経が17日「スポーツ界の常識を疑う」。これに毎日18日「日大監督はなぜ説明せぬ」が続き、読売19日「ルール無視は競技への冒●(「涜」の旧字体)だ」、朝日・同「徹底した解明が必要だ」と4紙が論じたのである。

 いずれも「ルール度外視の行為を許しては、スポーツが成り立たない」(読売)、「命にかかわる事故になりかねない、極めて悪質な行為だ」(産経)、「衆人環視の下でスポーツとはかけ離れた悪質な行為が起きた」(毎日)、「競技の存立そのものを根底から揺るがすような、きわめて悪質なプレーがあった」(朝日)とスポーツの存立そのものから説き起こし真正面から糾弾した。

◆日大釈明を各紙追及

 その上で「問題は、なぜ危険なタックルに及んだか」のチームとしての見解を求めた関学側への日大の回答に言及。「指導と選手の受け取り方に乖離(かいり)が起きていたことが問題の本質」とした日大の釈明に、追及の手を緩めなかった。

 朝日は「(事実関係の詳細を先送りした)日大の回答はおよそ納得できるものではない」と断じ、問題は既に「この不祥事にどう対処するか、大学の姿勢が問われている」事態になっていると迫り、徹底した解明を求めた。

 関学への回答を「まるで選手が曲解したと言わんばかり」と評した毎日は「悪質な反則の後、選手を注意しなかった。さらに反則を重ねて退場となった際は、スタッフがねぎらうような仕草さえ見せた」ことを指摘。「日大の内田正人監督が反則行為を容認していたのでは、との疑問が生じている」のを看過できないとし、日大が「事態の深刻さをどこまで認識しているのかと首をかしげざるを得ない」と疑問を投げ掛けたのだ。

 読売も内田監督らがタックルをした選手に厳しく注意した形跡がない点などを問題視した関学の「『監督・コーチが容認していたと疑念を抱かざるを得ない』との見方は、うなづける面が多い」と日大の釈明を一蹴。「悪質な行為は決して見過ごしてもらえない時代になった。そのことを選手と指導者は肝に銘じてほしい」と説いたのである。

◆大きい首脳陣の罪

 各紙が追及したこれらの疑問は、当の日大の宮川泰介選手が勇気を出して行った22日の謝罪会見で大半が明白となった。各紙とも第1面で報道記事を掲載したほど、その内容は「悪質なプレーが監督やコーチの指示によるものであったことを明確に説明」するという衝撃的なものであった。

 昨日の新聞で、この会見を受けていち早く、この問題で2回目の論調を掲げたのは産経「スポーツ界最大の悲劇だ」だけである。「これほど悲痛な会見を見たことがない」とした上で「監督、コーチらが寄ってたかって1人の選手を追い詰め、危険なタックルを強要し、選手生命を奪おうとしている」「(加害者であるとしても彼は)被害者でもある。その罪は、首脳陣の方がはるかに大きい」と批判した。さらに「内田氏は監督を辞任したが、大学の実質ナンバー2である常務理事の職は続行する。教育に携わる資格があるのか」と舌鋒鋭く糾弾。さらに日大そのものが「日大は相当の決意をもって大学や部のあり方を見直さなければ、社会的存在意義さえ問われる」と断じたのだ。その熱い主張に同感である。

(堀本和博)