W杯、五輪を前にチーム、組織の立て直し迫られたサッカー、レスリング協会
◆監督交代に理解示す
サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会が6月に迫る。あと2カ月のこのタイミングでの日本代表監督のバヒド・ハリルホジッチ氏の任期途中解任は、サッカーファンだけでなく日本代表の活躍を期待する多くの人々の注目を集めている。求められているのはW杯アジア最終予選で、日本を6大会連続の本大会出場を決めながら、その後の低迷している日本代表のチーム立て直しによる本大会での勝利追求である。
国民的関心は極めて高いテーマではあるが、米朝首脳会談や自衛隊のイラク派遣時の日報が見つかった防衛省の失態問題などに押しやられ、いち早く昨日までに論調を掲げたのは読売、産経(ともに10日付)。どちらもチームの立て直しを柱に論じている。
まずハリルホジッチ氏解任について、産経は「衝撃的ではあったが、誤った判断とまではいえない」と理解を示した。過去にもファルカン、加茂周の両氏が成績不振を理由に日本代表の監督を解任されたことや、加茂氏の後任となった岡田武史氏が日本のW杯初出場を果たしたことを例示。監督は選手選考と戦術の権限を持つが「結果に不満があれば、(サッカー)協会が解任する。世界のサッカー界では、当然の交代劇である」とクールに判断した。その上で「低迷するチームのカンフル剤として生き返らせる効果を生むかもしれない」と期待をにじませた。
◆踏み込んだ解説なし
読売はこの時期の監督解任には疑問符を付けつつも、協会の田嶋幸三会長が解任理由に挙げた「選手とのコミュニケーションや信頼関係が薄れてきた」ことには「監督と選手の間に溝が生じている以上、協会として避けて通れない決断だったろう」とした。日本代表が本大会出場を決めた後のハリルホジッチ氏の若返りを図る采配が目立ったことについては「世代交代を進めること自体は悪くないが、結果的に選手を固定でき」ず、低調な試合内容が続いたことで「批判が高まったのは無理もない」と理解したのである。
後任に就く西野朗・協会技術委員長と協会には、今回の事態を招いた責任の一端があることを指摘。一方で「悪影響を引きずらないよう、協会を挙げて立て直しに全力を尽くす」よう求め「久しぶりの日本人監督である。指導力を発揮し、代表チームをピンチから救ってもらいたい」とエールを送った。
同感ではあるが、スポーツ専門の論説委員が書くものにしては少し物足りない。すでに報道記事では、後任として西野氏の申し分のない実績などが伝えられている。西野氏の采配で日本代表の人選びとサッカースタイルなどがこれまでとどこが、どのように変わるのか、ぐらいの踏み込んだ解説ぐらいは示して目の肥えたファンらの高い関心に応えてほしかったからである。
◆組織的体質にも問題
一方、五輪4連覇で国民栄誉賞も受賞したレスリングの伊調馨選手へのパワーハラスメントが行われていたことが第三者委員会に認定された問題で、日本レスリング協会は組織の体質が問われ、その立て直しを迫られる事態となった。東京五輪を目指す伊調選手の練習環境づくりを支援することも急務だ。
この問題で論調を掲げたのは読売、毎日(ともに8日付)、朝日、産経(ともに10日付)の4紙である。
パワハラを問われたのは協会の栄(さかえ)和人(かずひと)強化本部長(当時)。だが、告発された時点で根拠もなくパワハラを否定していた福田富昭会長が第三者委の認定後の会見では、栄氏個人の問題にとどまらず「相当古くから存在して、こういう問題が起きた」と修正し、協会の組織的体質の問題と認めている。
4紙とも調査委が指摘した中でも、組織として深刻な例に「伊調選手を正当な理由がないまま、代表から外した」ことを挙げた。これを「(問題は)理事会が栄氏の専横を放置、黙認したことにある。これでは組織の体をなしていない」(産経)、「公正であるべき選手選考が、栄氏の私怨(しえん)で歪(ゆが)められた、とみられても仕方あるまい」(読売)、「権限が集中した栄氏を放任した協会の責任が大きい」(毎日)などと、それぞれ批判し、早急に協会の立て直しを迫ったのは当然である。
(堀本和博)