辺野古移設反対派が選挙・裁判で負け続ける理由に目をつぶる地元紙
◆反基地で暮らし疲弊
プロ野球の名監督だった野村克也さんが語った「野村語録」に「負けに不思議の負けなし」というのがある。もとは平戸藩の9代藩主、松浦静山が著した剣術指南書「剣談」の「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」で、運で勝つことがあっても、負けには必ず理由(わけ)があるという意味だそうだ。
今年に入って沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する翁長雄志知事ら反辺野古派の「負け」が続いている。2月の名護市長選、3月11日の石垣市長選、13日の辺野古工事差し止め訴訟、14日の山城博治・沖縄平和運動センター議長の地裁判決で、いずれも負けた。
名護では「反基地ばかりで暮らしが疲弊」したからだ。石垣では保守が分裂し、翁長知事が肩入れする反対派に有利とされたが、現職が4000票以上の大差で圧勝。中国の脅威が迫る中、「尖閣の地元を親中派に譲れない」との地元民の危機感が勝(まさ)った。
辺野古訴訟は、無許可での岩礁破砕は違法として県が国を相手に工事の差し止めを求めたが、那覇地裁から「国や地方公共団体が原告となった場合、行政上の義務の履行を求める訴訟は審判対象とならない」と門前払いとされた。
県側は「(訴訟対象の)海域を使用する権利があり、財産権に基づいて訴えている」と主張したが、判決は「海は公共のものであり、国が直接管理しており、私人の所有を認める法律もない」と退けられた。もともと合理性のない訴訟だった。
山城議長は2016年1月に辺野古の米軍キャンプ・ゲート前にコンクリートブロック1486個を積み上げて威力業務妨害、同年8月に東村高江の米軍北部訓練所付近で沖縄防衛局職員に暴力を振るい公務執行妨害で逮捕された。那覇地裁から「犯罪行為で正当化できない」と断じられ、懲役2年・執行猶予3年を言い渡された。
◆「市民」はプロ活動家
どれを見ても不思議の負けなしで、敗因は明らかだ。ところが、地元紙は負けの理由に目をつぶる。差し止め訴訟の県敗訴を受けた沖縄タイムス14日付社会面は「建設阻止 不屈の市民 司法判断に決意新た」と露骨に機関紙風の見出しを立て、辺野古のゲート前で座り込む「不屈の市民」の「新たな決意」を書き連ねた。
では、「不屈の市民」が誰かというと、記事でまず登場するのは県統一連の瀬長和男事務局長だ。統一連とは反米・反日米安保条約を唱える共産党系の全労連の沖縄組織で、瀬長氏は反対運動で公務執行妨害の逮捕歴のあるプロ活動家だ。
次いで「読谷村からゲート前に通う山内慶一さん」。この人もたびたび紙面に登場する反対派有名人。さらに名護市伊差川に住む63歳女性。伊差川は名護市といっても辺野古から遠く離れた地域。そして金武町の66歳男性と続き、最後に東京から訪れた72歳女性が登場する。つまり「不屈の市民」に地元の辺野古住民は一人もいなかった。
社会面の右ページ(第2社会面)には「断絶の海 届かぬ抗議」との見出しが躍っている。同紙記者が2カ月ぶりに船上取材に出たというルポ記事だが、抗議船の船長は「中原貴久子さん」とある。この人は奄美「自然の権利」訴訟などを手掛ける環境問題のプロ活動家だ。
◆扱い小さい地元の声
地元の声は黙殺かと社会面をよく見ると、小さく「容認の住民」との見出しがあった。記事には「(条件付き容認を決めた辺野古区の)区民は置き去りにされ、非常につらい思いだ。県はいたずらに工事の進行を止めるようなことはせず、国は条件整備を進めてほしい」(飯田昭弘・辺野古商工会前会長)、「国は粛々と建設を進めてほしい」(辺野古に住む島袋権勇・元市議)との地元住民の声が載っていた。
「不屈の市民」を言うなら、移設容認を貫いてきた辺野古住民こそふさわしい。それを外部のプロ活動家を「市民」とするのは偏向報道の極みだ。山崎議長の有罪判決には「見せしめが委縮を生む」(沖縄タイムス)、「問われるべきは国だ」(琉球新報)と筋違いな論法で犯罪者を庇(かば)う(いずれも15日付社説)。偏向にも不思議の偏向なし。その理由は左翼イデオロギーにある。
(増 記代司)