減反補助金廃止で岐路に立たされるコメ農家とJAを特集したダイヤモンド

◆熾烈な研究開発競争

 2月28日、日本穀物検定協会が2017年度産米の食味ランキングを発表した。それによると、これまで日本のコメの代表的な銘柄とされてきた魚沼産のコシヒカリが最高評価の「特A」から2番目に高い「A」の評価となった。1989年以降、28年連続して「特A」として評価されてきた魚沼産コシヒカリが格下げされたというのは業界としては衝撃として受け止められた。

 ただ、これは決して魚沼産の食味が劣ってきたということではなく、むしろそれ以外の地域において食味に対する熾烈(しれつ)な研究開発競争を繰り広げてきたという背景がある。それはまさに、「売れるコメづくり」「消費者に買ってもらえるコメづくり」が根底にあることは言うまでもない。

 折しも2018年度産のコメから政府の減反政策が廃止される。一方、政府は日本の農業を成長産業の一つと位置付け、海外に対しても太刀打ちできるだけの競争力を高めていく方針だ。

 そうした中で、週刊ダイヤモンド(2月24日号)が日本の農業の実態について特集した。「JAを襲う減反ショック 儲かる農業」との見出しを付ける。減反ショックとは、前述した18年度からの減反補助金廃止による影響のこと。これまでコメの過剰生産から政府は減反した農家に補助金を出してきたが、これをやめるというのである。農家にしてみれば、減反補助金の廃止は即、収入の減少につながることから気分のいい話ではない。

◆輸出か野菜に転換か

 一方、農家と密接につながってきた各地のJAにとっても不安材料となっている。というのも、仮に農家が減反せずにコメの生産を続けていくと、それを引き受けるJAは膨大な在庫を抱えることにもなりかねず、経営にもろに悪影響を及ぼす。まさに「JAショック」なのである。

 ところで、日本の「農協」はこれまで、「農家をだめにする農協」「自己保身に走る農協」などと、いろいろな点で非難の的にされてきた。例えば、コメに関して言えば、700%以上の高い関税によって海外産米の流入を防ぎ、減反補助金、転作奨励金などふんだんに補助金を受けてきた。こんなコメ農家は果たして、海外との競争に打ち勝てるのか、という批判があった。

 こうした点を踏まえて、ダイヤモンドは「『大量離農』『減反廃止』『貿易自由化』の激流の中で、過去と同じ位置にとどまることはできない。今後は変わらないことが一番のリスクになる」と指摘した上で、「競争に敗れた農家はM&Aの対象になるか、廃業するかのいずれかである」と断言する。さらに「農家は、減反廃止という事実を冷静に受け止め、コメ輸出に取り組むか、業務米を作るか、はたまた野菜農家に転換するか―。まさに、重大な経営判断が問われる局面なのである」と警鐘を鳴らす。

 その一方で、コメの輸出で成功している農家を紹介。茨城県のコメ農家8人が4年前に企業を立ち上げ、JAを通さずに自ら米国に出向いて販売ルートを開拓し、コメの輸出拡大を図っていく。今年はコメ輸出に参加する農家は100人を超えるという。

◆足腰強い農業構築を

 少子高齢化による人口減少が続く日本。国内消費がおのずと落ち込んでいく。海外市場の開拓は必須事項と言える。農業にもIT化の波が押し寄せている。併せて販売チャンネルの多様化や企業の参入など流通改革は待ったなしの状態。これまで親方日の丸で胡座(あぐら)をかいていたJAについていえば、「確たる販売先を持っているところは、今後も求心力が高まり、その一方で農業振興に取り組まない『名ばかり農協』は農家の求心力を失っていく」と結論付ける。

 もっとも、ダイヤモンドのような経済誌は経済界の意向が強いため、どうしても企業サイドの視点から農業を見る傾向が強く、競争至上主義的な論調になりやすい。農業は国の根幹であり、多機能的な側面を持っており、一概に市場経済で論じ切れるものではないという主張もある。

 話は余談になるが、17年度産米で北海道の「ななつぼし」(6年連続)と「ゆめぴりか」(3年連続)が「特A」に認定された。かつて北海道産米は猫も食わない「猫またぎ米」と揶揄(やゆ)された。その汚名をそそぐきっかけになったのが、1995年の食糧管理制度の廃止であった。それまでの政府によるコメの全量買い入れが廃止された、それを機に北海道の農家やJA、農業試験場はおいしいコメの生産販売を目指して自ら品種改良を進め、日の目を見るようになったのである。

 ダイヤモンドが指摘するように、ただ座していればいいという時代ではないのは事実で、国の内外の情勢を見ながら、しっかりと足腰の強い農業を構築することが急務となっている。

(湯朝 肇)