商業化など五輪テーマの収録に「憲法改正」の発言が出る「サンモニ」

◆朝日委員の妙な談話

 日本選手が活躍した平昌冬季五輪の期間、テレビ番組もにぎやかな時間が続いた。金4、銀5、銅4のメダル13個は過去最多で、お茶の間の歓声も今までにない盛り上がりだったことだろう。

 その中で、大会最終日の2月25日に放映されたTBS「サンデーモーニング」は、「多くのドラマの裏でさまざまな問題点が浮かび上がってきた」として、五輪の諸課題を「風をよむ」(収録)で取り上げた。強風の吹く平昌の悪天候、テレビの放映権が競技時間・日程を左右する商業主義の肥大化、開催に立候補した都市が手を下ろすほどの財政負担、政治色濃厚な北朝鮮の参加などだ。

 が、スタジオ出演者からは「憲法改正」に触れ、応援の際の「ニッポン!」コールへの批判が飛び出した。どちらも収録には無い内容だ。コメントしたのは朝日新聞論説兼編集委員・高橋純子氏。「国内に目を向けると安倍首相が2020年までの憲法改正ということを突然打ち上げたりしてですね、それは何でかなと思います」と、木に竹を接ぐような発言をした。

 「風をよむ」は収録の終わりにタイトルが出る。この日は「次は2年後 東京五輪」。高橋氏は続けて、「スポーツ選手の頑張りを見て感銘を受けることもありますが、やっぱり、ニッポン、ニッポンとみんなが言わないと許してもらえないような、そういう社会の空気にしていかないようにも気を付けていきたいなと思います」と述べた。

◆「ニッポン!」は自然

 何を恐れているのだろうか。応援するもしないも自由な日本の社会だ。ただ、人々の関心の集まり方が違うだけで、五輪に出場した日本選手に声援を送りたい人が全国的に多くいるということにすぎない。朝日が熱心な高校野球の応援と大差ない。

 しかし、安倍首相、憲法改正を前置きしているところ、「ニッポン!」コールが改憲に結び付くように利用されるとでも言いたげに受け取れる。とんだイメージ操作だが、今や五輪が政治に有利になるような単純な時代ではない。

 むしろ最近は、五輪開催地の政治がさまざまな試練に立たされる傾向がある。事実、平昌五輪の韓国でも前回夏季大会のリオデジャネイロ五輪のブラジルでも、前大統領が任期を全うしていれば五輪大会を迎えられたが、両方ともデモと弾劾で失職してしまった。前冬季大会のソチ五輪の際には、主催地国ロシアのクリミア侵攻につながるウクライナ政変が起き、その後ロシアは経済制裁でマイナス成長だ。

 東京都も五輪開催が決まってから知事が2人も代わった。巨大イベントだけに警備を含め開催地は難題を背負わされている。

◆選手に酷な夏の東京

 「風をよむ」は、国際五輪委員会(IOC)の収益のほとんどが放映権料であり、ソチ五輪から10大会分の放映権を持つ米国・NBCテレビの競技時間・日程への影響力は強いとして、東京五輪は開催期間が真夏になり、選手に負担を招く側面を懸念した。同日放送のフジテレビ「新報道2001」でも、「東京五輪最大の課題 猛暑対策に“日本の技術”」(収録)で開催時期について扱った。

 開会式が7月24日で「ヒートアイランド現象など年々厳しさを増す東京の暑さ」に課題ありとし、気象専門家の東京大学大学院教授・横張真氏は「そもそも通常の競技を行うような環境ではないということだと思う」と談話した。

 ここで「注目される日本の技術」として、渋谷駅前のスクランブル交差点で使用されている赤外線の8割をはね返す遮熱性舗装を紹介。ライトを照らした実験で普通のアスファルト表面が48度ほど、遮熱性のものが34度ほどと示していたが、番組の「暑さ対策のインフラ整備が東京オリンピックを成功に導く」との捉え方は、楽観的に思える。道だけ遮熱性にしても、真夏の都心の湿度や熱暑を思うと焼け石に水だろう。

 確かに五輪が商業化や大規模化に行き過ぎると、やがて一都市一時期の開催は限界を迎えかねない。東京五輪は339種目、選手数上限1万1090人の予定だが、将来、競技ごとに妥当な時期に分けるなど、何らかの手を打たなければならないのではないか。

(窪田伸雄)