平昌五輪閉幕、北の融和攻勢に非核化迫る圧力増強を支持した4紙

◆日本選手団が大活躍

 「最強のチームジャパンであることを実証した」(日本選手団・斎藤泰雄団長)。

 17日間にわたる熱戦を繰り広げた平昌冬季五輪が2月25日に閉幕した。史上最多92カ国・地域から約2900人が氷雪上で力と技と美を競った大会で、日本は冬季史上最多となる金4、銀5、銅4の計13個のメダルを獲得。最も躍進したのは前回ソチ五輪でメダルなしの惨敗から4年間で態勢を立て直し、金3個を含む6個のメダルを獲得したスピードスケートの健闘である。終盤、一糸乱れぬ隊列でスケート王国オランダを鮮やかに抜き返して金メダルに輝いた女子団体追い抜きは、その象徴である。

 新聞もその活躍を「日本の五輪史に新たな章を記す大会として人々の記憶に残るだろう」「女子の躍進を象徴する勝利だった。/女子の『和』の力も印象に残る」(毎日社説26日付)、「チームワークの勝利だった。その『一糸乱れぬ隊列』は芸術的とも言えるもので、世界を驚かせた」(小紙同27日付)、「世界中に勇気と感動を与えてくれた選手らの活躍に大きな拍手を送りたい」(日経同26日付)などとたたえたが、同感である。

 さあ、次は平昌の勝利を2年後の東京夏季五輪の成功につなげようというわけだが、大きな課題が残る。五輪は主役があくまで選手だとしながら、競技時間など日程が巨額のスポンサーである欧米メディアに配慮した時間設定で行われたため、選手に大きな負担となったことである。

 これについて朝日(社説27日付)は「膨大な放映権料を払うテレビ局への配慮が、選手の体調管理や観客の利便よりも優先され、後味の悪さを残した」と指摘。毎日が「主役はあくまで選手であることを忘れず、東京大会に生かさねばならない」、日経は「積み重ねてきた選手らの努力を損ないかねず、ぜひ改めてもらいたい」と強く訴えたのは極めて妥当な主張で、東京五輪ではしっかり考慮されるべきである。

◆政治利用された大会

 平昌五輪は一方で、4年に1回開催される世界のスポーツの祭典である原点を離れて「開催国の韓国と、核・ミサイル開発に固執する北朝鮮が、最後まで政治利用した異例の大会」(読売社説26日付)となったことは汚点と言うべきだろう。大会直前にルールを無視した北朝鮮の参加表明と、この横紙破りを受け入れたIOC(国際五輪委)、開会式と閉会式に北朝鮮の問題人物(高官)らが出席したことや異様な女性応援団の派遣など政治と南北問題に翻弄(ほんろう)されてきたからだ。

 この問題は平昌五輪が幕を閉じた後、大きくクローズアップされ、当然のことながら新聞は厳しい論調であふれている。

 昨日までに五輪閉幕を論じたのとは別に、北朝鮮の融和攻勢について論調を掲げたのは産経(24日付主張)、日経(27日付社説)、毎日(27日付同)、読売(28日付同)の4紙である。読売は、北朝鮮が韓国と米国の独自制裁の対象となっている金英哲・朝鮮労働党副委員長を閉会式に送り込んだことについて「挑発的な人選だ」(26日付)と批判した。続く28日付では対話攻勢についても「緊張を和らげ、米国から攻撃される可能性の低減と制裁緩和を目指しているのは間違いない。核ミサイルの完成に向けた時間稼ぎの思惑も垣間見える」と警戒。「過去20年以上の米朝協議で、北朝鮮が核放棄に合意しても、ことごとく破ってきた経緯を忘れてはならない」とクギを刺した上で、まず非核化の意思を見極めよと主張したのは正論である。

◆日米韓の連携を訴え

 金氏を「国家テロの元締のような人物」とする産経も、北朝鮮が「核・ミサイル開発の時間を稼ぎ、制裁の骨抜きを図るつもりだろう」と読む。北が中止を求めてくると見越す米韓演習については、文在寅大統領に「けっして中止要請に応じてはならない」と訴えた。

 毎日は北朝鮮が年初から「対話攻勢に戦術を切り替えてきた」ことを踏まえ「非核化を目的にしないのであれば交渉に意味はない。強く圧力をかけ続けるのは、北朝鮮にこの点を理解させるため」だと、今の圧力増強路線の支持を明確にした。日経も「核放棄に向けた対話を北朝鮮に促すため、まずは日米韓が連携して実効性のある制裁圧力をかけていくことが肝要だ」と、4紙の主張は一致しているのである。

(堀本和博)