朝から同性愛者の子づくり手段を扱うNHK「けさクロ」のグロテスク

◆適当な放送時間帯か

 朝は出勤前、登校前の親と子供たちが朝食を取り、部屋にはテレビがついているのが、家庭の日常的な光景だ。そのような時間帯に7日のNHKニュース「おはよう日本」の「けさのクローズアップ」(けさクロ・7時台)は、「子どもを持ちたい同性カップルの思い」(タイトル)を扱った。

 登場したのが女性・女性カップルで、女性だけでは子供を産めない。詰まるところ精液の調達と受精方法の話になる。結局、知人男性から精子を提供してもらい、自分で注入していると注入器具の映像が出た。これが、登校前の子供もいる家族も多い朝に適当なテーマなのだろうか。

 いわば、“出生の秘密”を扱っており、具体的な取り組みに触れるほど「けさクロ」ならぬ“今朝グロ”と感じた視聴者も多かったことだろう。生命倫理の視点に欠け、子供が目にしやすい時間帯でもあり、赤ちゃんの生命を人工的に捉えてしまいかねない問題がある。乳牛の繁殖に保冷タンク入りの精液を、畜産業者がカタログで入手するのとはわけが違う。

 番組はさらに、既に精子を提供してもらい2歳の男の子を持つ別の女性の女性パートナーに親権がないことを問題にして、同性婚の検討を唱えていた。NHKは酸性雨が鉄を少しずつ溶かすように容認へ誘導しているように見える。本来、子供には父親の愛情と母親の愛情が必要であり、大人の「思い」だけでなく子供の「思い」を考えるべきだ。

◆配慮がある学会見解

 1978年に人間で初めての人工授精となった「試験管ベビー」の時は、世の中を騒然とさせる生命倫理や人間の尊厳をめぐる議論が起きた。このケースは不妊夫婦に施された体外受精だった。が、番組はタイトル通りの同性カップルの思いに同情的で、医療機関で人工授精が原則として男女夫婦に限られるので、同性愛者には難しいと指摘。同性愛者に病院で人工授精できるようにと、「社会全体での議論」を呼び掛けた。

 人工授精を行う病院は日本産科婦人科学会に施設登録しなければならないが、同学会は「非配偶者間人工授精と精子提供」に関する見解をまとめている。ここで、夫の無精子症など人工授精以外に夫婦で妊娠成立の見込みがないと判断されることや、精子提供者、不妊の夫婦、出生児のプライバシー保護などを厳格に記している。

 番組では、日本産科婦人科学会の徳島大学医学部教授・苛原稔氏の、「生まれてきた子供が将来どうなっていくかまで考えて進めていかないといけない」という談話も紹介された。

 同学会見解は「プライバシーの保護」を強調している。生まれた子供が親夫婦から生まれたと疑いもなく成長していくための大切な配慮だ。しかし、同性カップルの場合は、そうならないだろう。子供はやがて、同性カップル2人から生まれたはずはないと知ることになる。一度生まれたら人生は老後まで長い。慎重を要するテーマである。

◆時事放談で「旧民進」

 ところで、4日放送のTBS「時事放談」に立憲民主党の枝野幸男代表が元総務相・片山善博氏と共に出演した。通常国会での森友学園問題などの話題の後、司会の御厨貴氏が「問題を追及する側の旧民進党。これは空中分解状態が続いているように見えますが」と質問した。

 枝野氏は、「これまで党の中で考え方がバラバラじゃないかという批判を長年にわたって受けてきた。今回のことで図らずも立憲民主党は考え方に整理がついた」と語り、片山氏は「政権を目指すということは、それを基軸としてどこまで広げていくかという、コアなものを大事にして広げていくプロセスが大事だ」と、政権交代勢力になるかのように話した。

 ここで御厨氏は「旧民進党」と言い、番組のテロップも「時事放談 枝野・片山 旧民進党『分裂状態』で」と出たが、民進党は存在しており、番組があった4日は東京・千代田区で定期党大会を開催している。同党HPに掲載される党籍を持つ国会議員は衆参合わせて54人で、依然それなりの勢力だ。「旧民進党」は誤報で、視聴者が民進党はなくなったと誤解するのではないか。立憲民主党ばかり目立つわけである。

(窪田伸雄)