尖閣に潜水艦送る習政権の本性見抜き油断ない外交を求めた産経

◆厳重抗議した外務省

 中国海軍のフリゲート艦と潜水艦各1隻がこの10、11の両日に沖縄県・尖閣諸島の接続水域に入った。潜水艦は潜航して航行したもので、追尾した海上自衛隊護衛艦が東シナ海の公海上で浮上し中国国旗を掲揚したのを確認。日本政府は15日に海上自衛隊の繰り返しの警告を無視して航行した潜水艦が中国海軍の「商」級の攻撃型原子力潜水艦だとあえて公表し、中国側が尖閣をめぐり挑発のエスカレートをもくろんでいることを国際社会に訴えた。

 また外務省の杉山晋輔事務次官が11、12日に中国の程永華駐日大使を外務省に呼ぶなどして「事態の新たなエスカレーションだ」などと重ねて厳重抗議した。さらに同様な事態が再び起きれば、日中関係改善の流れが逆行しかねないとして、中国側に再発防止の徹底を厳しく求めたのである。

 こうした事態が県内で起きたのに、当の沖縄県紙(琉球新報と沖縄タイムズ)の報道が極めて小さい異常ぶりについては、16日付小欄で増記代司氏がウオッチし、中国の狡猾(こうかつ)な「サラミ戦術」を見破り警鐘を鳴らしている。小欄ではこの問題で社説(主張)を掲載した各紙をウオッチしたい。

 昨日までに論調を掲げたのは毎日「関係改善の流れを壊すな」、読売「日中関係の改善に水を差すな」、産経「中国の本性を見過ごすな」(以上、13日付)、小紙「これで対中関係改善できるか」(14日付)の4紙である。タイトルから一目瞭然だが、昨年11月の安倍晋三首相と習近平国家主席の首脳会談以降、今年の日中平和友好条約締結40年を見据えて関係改善の機運に期待する視点から事態に懸念を示したのが毎日と読売である。関係改善の機運に懐疑的なのが小紙であり、尖閣はもとより沖縄まで狙う中国の侵略の意図にまで鋭く踏み込んだ視点から今回の厳しい事態を分析し危機への覚醒を促すのが産経である。

◆「友好ありき」の毎日

 「中国軍が緊張を高める動きに出たことに懸念」する毎日だが、中国軍の行動に「日本が軍艦の接近に神経をとがらすのは当然」とか「日本の出方を試そうとしているなら危険だ」とか「どちらも冷静に対応し、再発を防ぐべきだ」では、当たり前過ぎて何も言っていないも同然。まず日中友好ありきが鼻について眠たくなってくる。

 少しましなのが読売。政府の抗議に「中国の接続水域に自衛隊艦艇が進入し、中国海軍が追尾・監視した」とする中国国防省のアベコベ強弁に「(日本の固有領土・尖閣諸島は)日本が有効に支配している。中国の主張は筋違い」と一蹴した。さらに尖閣諸島周辺で中国公船が領海侵入を繰り返すなど中国軍の活動活発化に対して、領海侵入には自衛隊に海上警備行動を発令し、艦艇を派遣する政府方針を支持し「自衛隊は海保などと緊密に連携し、警戒・監視活動に万全を期す」ことを求めたのは同感である。

 これに対し小紙は、領土、領海、領空を「断固として守りたい」と強調した菅義偉官房長官が中国側の狙いについて「コメントを控えたい」と口をつぐんだことに「(北朝鮮問題で中国の協力を求めるのは当然だが)性急に関係改善を目指すことが得策とは思えない」「(東シナ海ガス田問題などで中国に誠意ある姿勢は見られない)こうした状況で日本が過度に融和的になれば、中国に乗じられるだけだろう」と、対中改善に前のめりになることを警告したのは適切な指摘と言わなければならない。日本の警戒感が弱まれば「それこそ中国の思うつぼ」にはまることになるからだ。

◆要警戒の中国の動向

 一方、産経の主張は明解だ。関係改善に意欲を示す「政府・与党からは、習近平政権が推進する経済圏構想『一帯一路』への協力姿勢が示され」ている中での中国の暴挙に「このような政権との間で、日本は関係改善を図り、協力していくことができるだろうか」と極めて強い疑問を投げ掛けた。尖閣諸島を「固有の領土」と強弁し、中国海軍が日本側を追跡、監視したとするアベコベの主張にも「とんでもない発言だ。潜水艦に水上艦を付き添わせたのは、このように言い繕う狙いもあったのではないか。実に狡猾」と批判。それでも「『関係改善ありき』の空気が漂っている」おめでたい政府に「関係改善の連呼は控えたほうが賢明」と説き「習政権の本性を見抜き、油断のない外交」を求めたのは、まさに正論である。

(堀本和博)