主力読者層の高齢化をうかがわせる朝日、文春の健康・医療関連記事

◆最近注目のフレイル

 週刊朝日(1月19日号)はトップ記事に「老齢症候群フレイルに負けるな」を掲載した。フレイルとは聞き慣れない言葉だが、「健康と要介護の中間の時期」を指し、「最近注目されている」のだそうだ。一方、週刊文春(1月18日号)でも「老けない『最強魚』ベスト15」の記事が特集されていた。

 政治家や芸能人のスキャンダルと並んで健康や医療関連の話題は週刊誌の“売り”の大きな柱だが、こういう記事からはその読者層が透けて見えてくる。つまり、そろそろ健康が気になる中高年がターゲットになっているのだ。

 20代以降の各世代に平均して読まれている経済誌に比べて、一般週刊誌は40代以降の中高年が主力という歪(いびつ)な読者分布だ。読者は高齢化していき、現在の20代、30代が週刊誌を手に取らなければ、最悪、消滅は免れないということになる。そうした危機を眼前にしつつも、当面の売り上げを確保しようとすれば、主力読者層の関心事を取り上げざるを得ない。それが医療関連記事だったり、健康志向だったりするわけだ。

 せっかくなのでフレイルとは何かをのぞいてみる。「この時期には体力や筋力の低下、うつや認知機能の低下、閉じこもりなど」が起こってくるという。記事では15のチェックリストを掲げ、4点以上だとフレイルと判定される。「転んだことはあるか」「つまづいたり、滑ったりするか」「食欲はあるか」「1日中、家の中で過ごすことがあるか」などだ。これなら四つくらいは簡単に当てはまる。そうすると「介護」が先に見えてくる、というありがたくない話なのだ。

 恐らくほとんどの自治体では公会堂や公民館で役所の福祉部か民生委員協議会が音頭を取って、高齢者を集めて「筋トレ体操」を行っていることだろう。この対象は前期・後期高齢者で、決して中高年ではない。

◆敷居が高い地域組織

 しかし、高齢者の手前にいる中高年は退職して、やることもなく家にいるとフレイルになってしまう。かといって、高齢者、それもほとんどが女性ばかりの中で筋トレをするのも気が引ける。ゴルフに行こうにもメンバーが集まらない。

 そこで同誌は運動以外に「ボランティアへの参加や趣味のクラブに入る」ことを勧めている。簡単に言うが、今まで仕事一筋でやってきた男が、「退職しましたのでよろしく」と言って地域に入っていけると考えるのは大間違いだ。既に出来上がった組織やグループがあり、新参者が入っていくにはかなりハードルが高い。まして、役職に就いていた男は今さら頭を下げたくない。結局、家にこもることになる。

 同誌はそこまでのことはアドバイスしていない。記事は食生活と運動にほぼ限られている。恐らく記者や編集者がそういう問題に直面していない世代だからだ。しかし、こうした“あぶれた”中高年は実に多いのだが…。

 週刊文春は前号(1月4・11日号)の「老けない『最強肉』ベスト10」に続き、「最強魚」ベスト15を取り上げた。記事は“老けない”ことに焦点を当てている。つまり、同誌読者の多くがこれに関心を持つ世代だということだ。週刊誌に出る「がんの名医」「糖尿病」「血圧」などの記事は、みなそうした世代を対象としている。

◆韓流も中高年向け?

 そう見てくると、週刊朝日の「韓流K-POP最前線2018」も、実は中高年向けなのではないかと思えてくる。「東方神起やBIGBANGに続く次世代がブレーク中」というのも、韓流人気を支えている中高年女性たちに新しい情報を提供し、途切れることのないファンとして確保していきたいとの狙いではないかと勘繰ってしまう。

 「やっぱり韓流ドラマはおもしろい!!」の記事は、「今、日本で再び韓国のドラマに注目が集まっている」と紹介する。しかし、韓国ドラマにありがちな無理のある設定、ご都合主義の展開、あり得ない歴史ファンタジー等々が再び評価を受けているというのは信じ難い。韓国ドラマを垂れ流しているだけのBS放送の宣伝なのか?

 週刊誌が生き残っていくには、他のメディアもそうだが、あらゆる世代に読者を確保することだ。健康関連記事を見ながら、週刊誌の老化を防ぐ秘策に考えを巡らせる。

(岩崎 哲)