左派紙の偏向体質を浮き彫りにした最高裁のNHK受信料合憲判断
◆朝日による介入・攻撃
最高裁はNHKの受信料について「知る権利を充足する」として合憲とし、「テレビ設置時にさかのぼって受信料の支払い義務が生じる」との判断を示した。各紙は判決をおおむね是とするが、「判決をお墨付きにせず、公共放送としての自覚を新たにしなければならない」(毎日8日付社説)と注文を付けている。
だが、「自覚」の中身となると、いささか怪しい。朝日7日付社説は「NHK幹部が政治家と面会して意見を聞いた後、戦時下の性暴力を扱った番組内容を改変した事件」を取り上げ、「近年強まる政治家によるメディアへの介入・攻撃」に抗せよと迫っている。
盗人猛々(たけだけ)しいとはこのことだ。「事件」は朝日による介入・攻撃事件であって、政治家の圧力事件では断じてなかった。古い話で忘れてしまった方のために「事件」をおさらいしておこう。
2000年12月、「『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」(バウネット)という団体が「日本軍性奴隷を裁く『女性国際戦犯法廷』」なるものを開いた。「法廷」には「弁護人」役はおらず、「検事」役として北朝鮮から拉致工作機関の幹部2人を招き、昭和天皇に対し「強姦と性奴隷制」の責任で“有罪判決”を下す異様なものだった。
バウネットは左翼記者として名高い元朝日編集委員の松井やより氏(02年12月死去)が創立したもので、「法廷」の直前には西野瑠美子氏(後の代表)らが訪朝、検事役と「証言」予定の女性らと打ち合わせまでしていた。
◆虚偽報道で歴史捏造
これをNHKは教育テレビで放映しようとした。番組製作を下請けしたNHK子会社の女性プロデューサーも運営委員として加わっており、準備段階から放映のシナリオをバウネットと作り上げていた。左翼団体と北朝鮮による「慰安婦」反日工作とみてよい。
この「法廷」を産経が取材し一般参加者もいたことから、NHKの放映予定に批判が噴出、安倍晋三官房副長官(当時)がNHK予算の説明にきた幹部に「公正中立」を求めた。局側は内容を吟味し、自主的に編集し直して翌01年1月に放映した。
それを朝日は4年もたった05年1月12日付で政治圧力による「NHK『慰安婦』番組改変」と騒ぎ立てた。記事はあやふや極まりない内容で、朝日は第三者委員会の設置を余儀なくされ、「取材不足」を認めた。だが、訂正・謝罪をしなかったので、毎日から「事実解明なしで新聞社ですか」(同9月1日付社説)と揶揄(やゆ)される始末だった。
一方、バウネットはNHKを相手取り損害賠償訴訟を起こしたが、全面敗訴(08年6月、最高裁判決)。逆に裁判を通じて政治介入がなかったことが証明された。ちなみに虚偽記事を書いた朝日の本田雅和記者は、松井氏の“弟子筋”に当たる「極左記者」(週刊新潮)で、西野氏の訪朝に同行しており、つるんでいたことも判明した。
これが「事件」の真相だ。誰が見ても政治圧力事件でなく、朝日の虚偽報道事件だったことは明白だ。それを朝日は平然とウソをつく。歴史捏造(ねつぞう)の手口を目の当たりにした感がする。
◆「市民」実は左翼団体
毎日にも驚かされた。7日付社会面トップで「『健全なNHKに』 元職員ら 市民に応えて」との見出しで合憲判決を報じたが、「元職員」とはバウネットと相通じて「法廷」の放映を企てた永田浩三・元プロデューサーだった。
記事は、バウネットを「市民団体」と書き、訴訟で永田氏は「局の幹部が現場に介入した実態を細かく証言」して組織に反旗を翻す形となったので早期退職したとし、「今回の判決で、NHKの報道に疑問を持つ人の声まで消えるわけではない。公共放送として、健全な報道を求める世の人に向けて仕事をしてほしい」との永田氏の発言を載せている。
これも話はあべこべだ。永田氏が言う「健全な報道」とは恐るべき偏向報道のこと、「市民に応えて」の市民は北朝鮮の手先のように動いた左翼団体だ。そのことを「真相究明しないで新聞社ですか」と言った毎日は百も承知しているはずだ。
それを今になって翻すのは歴史捏造への加担と言うほかない。受信料合憲は左派紙の偏向体質をいみじくも浮き彫りにしたようだ。
(増 記代司)