難題山積で保守系紙でも論調が割れた東海第2原発の運転延長申請

◆福島第1と同じ型

 福井県の西川一誠知事が、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働に同意した。これで、地元同意の手続きは終わり、関電は年明け以降に2基を順次再稼働させる。

 問題はそれより前に、日本原子力発電が原子力規制委員会に申請した東海第2原発(茨城県東海村)の運転延長である。

 同原発は来年11月に40年の運転期限を迎える。原子力等規制法は原発の運転期間を原則40年と規定、規制委が認可すれば20年延長でき、これまでに関電の美浜3号機など3基が認められている。

 ただ、関電3基と違うのは同3基が加圧水型なのに対して、東海第2原発は東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型であること。来年11月までに規制委の安全審査に合格し、工事計画と運転延長の認可を得られなければ廃炉となる。

 安全審査は10月にほぼ終了し、規制委は事実上の合格証となる審査書の取りまとめ作業に入っているが、約1800億円の安全対策費の工面を安全審査合格の条件としているのである。

◆課題は安全対策費

 この東海第2原発の延長申請について、原発再稼働を支持する保守系紙で社説の論調が割れている。読売(25日付)は「再稼働には総合的判断が要る」との見出しを掲げ、「原発の必要性やリスクに関する冷静な議論が不可欠」と慎重な姿勢を見せたのに対し、産経(同)は「運転延長審査の合理的な進行による合格が、電力の安定供給面からも望ましい」と積極的な支持を打ち出している。

 読売が慎重な訳は安全対策費の工面の問題で、その調達のめどが立っていないからである。日本原電は東京電力ホールディングスや関電など電力9社が共同出資し、電力会社向けに電気を販売する卸売会社だが、保有する原発が全て停止しており、業界の支援で辛うじて経営を続けている。

 また同紙は、事故を起こした福島第1原発と同じ沸騰水型の延長は初めてだけに、「入念な審査が欠かせない」としているほか、県と自治体に義務付けられた避難計画の遅れも指摘する。

 一方の産経は、安全対策費の工面が難しい点について、「この窮状は何によるものか」と逆に問い掛けるのである。「電源車の配備などを条件として稼働を認め、安全審査を並行してしていれば、原電や各電力会社は料金値上げもなく強固な安全対策を採れていたはずだ」として「この際、規制委に自問自答を求めたい」とまで言う。

◆必要な巨視的構図

 産経がここまで踏み込み、今回の日本原電の延長申請を「重要な申請」と強調するのは、万一、審査が来年11月に間に合わず時間切れでの廃炉を迎えることになると、「電力会社は審査リスクの高さを嫌い、延長を断念するケースが増えよう」と指摘。「そうなれば、2030年度での健全な電源構成目標として政府が見込む原子力の比率(20~22%)に届かず、狂いが生じる」と懸念するからである。同紙社説は冒頭で「日本のエネルギーの将来を俯瞰(ふかん)する、巨視的構図の中に位置付けて考えるべき問題である」としたが、同感である。

 周辺自治体の理解についても、同紙は、全国の原発での地元との安全協定は法的根拠を欠いたまま既成事実化しつつあるとして、国が前面に出て調整に当たるべき課題であると指摘する。

 「再稼働には総合的判断が要る」とした読売も、原発再稼働に伴う膨大なコスト負担の在り方については、「政府も真剣に検討すべきではないか」との考えを示す。

 今回の日本原電の場合は、津波に備えて、高さ20メートルの防潮壁を設ける。非常用電源を強化する。原子炉を守る格納容器の損傷対策も多重化する。こうした世界で最も厳しいとされる新規制基準に沿った安全対策は、当然の結果としてコストを大きくし、規制委の審査の長期化も事業者に苦境を強いているからである。

 本紙は産経同様、「運転延長へ効率的な審査を」(27日付社説見出し)を求めた。

 もともと原発再稼働に反対の朝日(24付社説)は「廃炉が避けられない」、東京(25日付社説)は「延命は割に合わない」と予想通りの内容。これら2紙には、産経などが指摘する日本のエネルギーの将来を俯瞰する巨視的構図がない。

(床井明男)