「加計」報道で煽った揚げ句「国民の疑念」に固執するNHK「時論公論」
◆首相介入の証拠なし
今年春から続いてきた加計騒動は、学校法人「加計学園」による獣医学部新設が認可されたことで収束する気配である。この問題を「安倍たたき」に利用してきた野党や左派メディアは結局、行政手続きに安倍晋三首相が介入したことを示す証拠を提示できなかったからだ。
反安倍陣営と規制緩和への抵抗勢力は、最後の頼みの綱である「国民の疑念」を持ち出し、往生際悪くしばらくはあがき続けるだろうが、ためにする批判はいずれ国民から相手にされなくなるだろう。代わって浮上してきたのは組織的な情報操作説である。
15日に行われた衆院文部科学委員会の質疑。NHKはこの模様を同日正午のニュースで流した。「(獣医学部新設を)地域の知の拠点として大学を活用してほしい」という与党議員の質問の後、「総理や官邸が何らかの肩入れや関与をしたのではないかと言われているが」という野党議員の追及の声を伝えた。使い古されたフレーズが並んだだけだったにもかかわらずニュースにしたのは、視聴者に「国民の疑念」は晴れていないと印象付けたかったからに違いない。
◆NHKこそ仕掛け人
「総理の意向」と記した文科省文書や前文科事務次官の証言を材料に、安倍政権攻撃し続ける左派新聞の系列下のテレビ局ならいざ知らず、公共放送のNHKが印象操作を行うはずはないと思う視聴者がいるかもしれないが、この問題では「朝日」と並び、NHKこそが騒動の仕掛け人である。文芸評論家の小川榮太郎氏の著書「森友・加計事件」によると、同学園の獣医学部新設は、前出の文部科学省文書を最初に報じたのはNHKだった(今年5月16日夜)。
大学設置・学校法人審議会が同学園による獣医学部新設を認可するよう文科相に答申し、事実上新設が決まったのは今月9日。その翌日夜、NHKの時事解説番組「時論公論」は、西川龍一解説委員が「加計学園獣医学部新設へ 残る疑問は」と題して解説したが、ここでも「国民の疑念」を持ち出して新設に疑念を呈している。
突っ込みどころの多い解説の中で、第一の疑問点は52年間も獣医学部の新設を認めてこなかったのは「獣医師過剰の恐れがある」からという文科省の言い分をそのままたれ流したことだ。大学設置の許認可権と官僚の天下りは表裏一体である。加計騒動の背景には、その既得権益を守りたい文科省と、国家戦略特区制度をテコに規制緩和を進めたい内閣府との対立があるというのが大方の見方だ。なのに、西川氏がそこに触れないのは妙である。「総理の意向」があったと証言した前事務次官は文科省の組織的な天下り斡旋(あっせん)で辞任した人物だ。
さらに、西川氏は「入学定員の水増しをしないことを厳格に守るよう求めたことは、後発にもかかわらず、国内最大の定員となる獣医学部の新設に、審議会が最後まで懸念を示したことの表れ」として、視聴者に「懸念」を印象付けた。
◆組織的に情報操作か
だが、獣医学部の定員については、今年7月10日に行われた参議院の閉会中審査で、自民党の青山繁晴氏が、獣医学部の定員930人に対して、実際は1200人まで水増し入学が行われているとの実態を明らかにした。これで需給が均衡していると文科省が判断しているのであれば、文科省の方がおかしいのだが、この点について西川氏の言及はなかった。
最後に西川氏は「国民の疑念」を持ち出して、「それを晴らさないまま、次の段階の手続きが進められた」と批判した。ちなみに、西川氏の過去の解説を調べると、沖縄の米軍基地問題、核兵器禁止条約など、左派が好むテーマが多い。
明確な根拠を提示することなく国民の疑念を煽(あお)る報道を続けた揚げ句、攻撃材料がなくなると、その疑念を晴らせとは理不尽である。前出の著書の中で、小川氏は「加計スキャンダルは朝日新聞やNHKとの幹部職員が絡む組織的な情報操作である可能性が高い」と推測しているが、いまだに「国民の疑念」に固執する報道姿勢からは、組織的な情報操作の臭いがプンプンしてくる。
(森田清策)





