「北朝鮮情勢への言及」を隠しながら機関紙並みに政権批判する朝日

◆国難への対応に集約

 「野党は『加計隠し』『解散の大義』などを問題にするが、国会で大変な時間を費やしたその問題を含め、安倍内閣の信任不信任は国民に委ねられた」(小紙27日付「上昇気流」)のである。

 二院制をとる日本の国会においては法案の議決など参議院に対してさまざまな優越が定められている衆議院は、議員の任期が4年であるが、解散すれば任期前でも任期切れとなる。これまで衆院議員は任期を全うすることもあるが、任期半ばの2年を過ぎると議員の足は選挙区に向き、「常在戦場」で解散・総選挙に備えるのを常としてきた。

 「衆院解散は長年、『首相の専権事項』とされ、定着している。自らが目指す政治や政策の実現のため、もっとも適切な時期に総選挙を実施するのは宰相としては当然」(読売26日付社説)のことで「『解散の大義がない』との野党の批判は筋違い」と言える。

 安倍晋三首相は今日召集の臨時国会冒頭で衆議院の解散・総選挙を断行する。この25日の記者会見で表明したもので、10月10日に公示され、22日に投開票される。首相は消費税増税分の使途変更による新たな社会保障制度の構築と北朝鮮危機への対応などを理由に挙げ、「国難突破解散」だと命名した。

 新聞各紙が翌26日付に一斉に掲載した論評は個々に批判や注文を付けても結局は、核実験を繰り返し2度も日本上空を通過する弾道ミサイル発射を強行し、「日本列島ごとき、あっという間に焦土化できる」と威嚇するなど緊迫化する北朝鮮情勢に直面する国難への対応に集約される。今、この日本を誰に託せるのかの選択をめぐり真っ向からぶつかり、安倍氏とその政権を問うているのだ。

◆北朝鮮が最大の懸案

 北朝鮮の核・ミサイル開発に引きずられてきた「『対話のための対話』では脅威を除けなかったという首相の指摘は妥当」とする産経は「平和実現のための圧力を継続することへ国民の支持は欠かせない」と強調。一方で「民進党や共産党は、憲法違反だとして安保関連法の廃止を唱えている。/それでは国民を守り抜くことができない」と明確な主張を示した。

 「問われる安倍政治の総合評価」の見出しを掲げた読売も、北朝鮮問題が目下の最大の懸案だとし「15年に制定した安全保障関連法は、北朝鮮に対する日米同盟の抑止力を支える重要な法的基盤だ。安倍政権は、その意義をきちんと訴えることが大切」だと指摘した。

 小紙は「国民の国防意識が低いことも『国難』」とした上で、北朝鮮の「明白な脅威から目を背けてはならない。われわれはそれを直視し、進んで安保政策の中身を議論」することを求め、安保関連法の廃棄を主張する民進党には「代案を提示して国民の生命と財産を守る覚悟」を示すよう迫ったのは、いずれも妥当である。

◆本音は「モリ・カケ」

 これらと真逆な主張を掲げる朝日は「核・ミサイル開発をやめない北朝鮮にどう向き合うか」と問いを発しながら、その自問には答えがない。首相が「選挙で信任を得て力強い外交を進めていく」と答えたことに話を移し、「衆院議員を不在にする解散より、与野党による国会審議こそ必要ではないか」「今回の解散の眼目は、むしろ国会での議論の機会を奪うことにある」ことを強調する。

 議論するテーマの本音は、もっぱら<森友・加計学園問題>であって北朝鮮情勢ではない。巧妙に論理をすり替えて「北朝鮮情勢への言及」隠しをしながら一方で、社説は執拗(しつよう)な<モリ・カケ隠し>の主張で安倍政権批判を繰り返す。「国会を軽視し、憲法をあなどる政治姿勢は、安倍政権の体質と言える」と吠える。某党機関紙と見間違いかねないトーンで、“安倍政権潰し”が社の方針だと伝えられるのも故なきことではない、と思わせる急角度の付いた社説と言えよう。

 同じ「安倍政治」批判を展開していても、毎日のそれは一般紙としての抑制を効かせた主張である。「『安倍1強』のおごりやひずみが見えてきた中で、さらに4年続くことの是非が問われる衆院選だ。憲法や安保、経済・財政と社会保障など、さまざまな重要課題をどうしていくのか、日本の大きな岐路となる」と結んでいる。

(堀本和博)