北ミサイルに米韓演習への対抗経費の苦しさ指摘した「日曜討論」等

◆否めない手詰まり感

 相次ぐ北朝鮮のミサイル発射だ。8月29日には、日本領空を越えて2700キロ飛行し、襟裳岬の東約1180キロの太平洋上に落下した。朝鮮中央通信は30日に新型中距離弾道ミサイル「火星12」の試射に「成功した」と発表。26日にも短距離弾道ミサイル3発を日本海に向け発射し、1発が250キロ飛行した。

 韓国で米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」が21日から31日まで行われ、また、26日の発射は、北朝鮮の「自制」説を打ち消した形にもなったため、27日放送の報道番組で改めて取り上げられていた。

 識者らの共通認識は、北朝鮮が米国東海岸まで射程にする核弾頭搭載大陸間弾道ミサイルの開発・配備を放棄することはない、ということだ。それだけに、議論には手詰まり感が否めない。

 TBS「時事放談」に出演した、日本総合研究所国際戦略研究所理事長で元外務審議官の田中均氏は、「北朝鮮は思い違いをしている」と述べ、「米国という国は、自分の本土が撃たれると具体性を持った話になればなるほど極めて強硬に反応する国だ」と指摘し、「今ほど軍事衝突の危険がある時期はなかった」と厳しい状況認識を示した。

 その上で、田中氏は「外交が不在じゃないか」と嘆いた。しかし、原因は北朝鮮にある。先代の金正日朝鮮労働党総書記時代も核開発は行われ、これをやめる代わりにテロ支援国家指定解除、金融制裁解除をする米朝交渉があったが、今日、目にする核実験・ミサイル発射が示す通り米国はじめ国際社会はだまされた。

 田中氏はその経緯を認め、「対話による解決は簡単ではない」と述べながらも、なお外交努力を訴えた。しかし、世襲から5年以上たつ金正恩朝鮮労働党委員長は、いまだ外交デビューしていない。多くの粛清もあり、果たして外交が通用する国情なのか甚だ疑問である。

◆写真分析する新報道

 NHK「日曜討論」は前半の第1部に民進党代表選候補の前原誠司元外相と枝野幸男元官房長官の討論「民進党はどうなる」。第2部で「緊張続く北朝鮮情勢」を扱った。出演した元外交官、マサチューセッツ工科大学シニアフェローの岡本行夫氏は、「米国政府の中で、北朝鮮には強い言葉でないとダメなんだという議論が急に出てきている感じがする」と述べた。

 トランプ大統領から、グアム島へのミサイル攻撃を警告した北朝鮮に対して「怒りと炎」という言葉が飛び出したためだが、これに強く反発する北朝鮮のミサイル発射回数がさらに増えるとも考えられよう。

 環日本海経済研究所主任研究員・三村光弘氏は、「北朝鮮から見れば米韓合同軍事演習は軍事的挑発と見える。挑発にはそれなりの対処をしないといけないと考えていると思う」と述べた。

 ただ、それには苦しい経済事情が伴うことになる。岡本氏は「北朝鮮は何としても米韓合同演習はやめさせたい。そのたびに対応しないといけないので、人件費とか輸送費とかジェット燃料とか膨大な金がかかる。あれを何とかやめさせろと、そのちょうど案配を考えて、今度の発射なんだろう」と指摘した。

 米韓合同軍事演習期間に発射された北朝鮮ミサイルは短距離弾道3発、中距離弾道1発の4発だが、それでも“予測不能”な国だけに脅威の度が増すのだ。さらに北朝鮮は23日、正恩氏のミサイル開発現場視察写真32枚を公表し、フジ「新報道2001」では写真分析を試みていた。ミサイル軽量化と飛翔距離の長距離化につながるため禁輸措置が取られているはずの炭素繊維や、開発が進んでないと思われたミサイル「火星13」の表示などが被写体にあり、識者が注目した。

◆脅威大きく見せる北

 軍事的脅威は能力と意思によるが、大々的に意思を公表して能力の可能性を示し、脅威を大きく見せようとしているように考えられる。米韓合同軍事演習に対抗するために、実際に大軍を率いて演習するよりは安いと言えよう。

 「新報道2001」はまた20日放送で、北朝鮮のミサイル開発の資金調達をする部署「第39号室」に所属していた脱北者などを取材し、厳しくなる資金納入の証言を得ていた。国連制裁、米韓、日米など同盟国の安全保障措置に北朝鮮が感じる圧力で発射するミサイルは、あと何発まで続くのだろうか。

(窪田伸雄)