「印象操作」批判に聞く耳持たず「フェイクニュース」の拡散続ける朝日
◆虚偽を32年間も放置
朝日の「あすへの報道審議会」(紙面論評)が「フェイク(偽)ニュース」が拡散する中でのメディアの役割について論じている(5日付)。テーマは「『トランプ時代』をとらえきれているか」。米国の話題だが、おのずから日本のメディアにも論議が及んでいる。
その中で、山脇岳志編集委員(前アメリカ総局長)は「『トーン』、つまり記事の書きぶりは重要だと思う。客観的なニュース記事でも、ちょっとした表現に記者の主観が表れることがある。米国の主要メディアの一部の記事には、トランプ支持者を見下すような色合いがあり、読者を遠ざけてしまった面がある」と述べている。
そうした議論を受けた小島慶子氏(タレント)の次の発言が印象的だった。
「『誤報はない』と言い切るメディアは信用できない。誤報を速やかに正し、過ちから学ぶ姿勢がメディアの信頼性を左右する。14年の一連の問題を経験した朝日新聞には、まさにそれが問われている」
残念ながら、これに対する朝日側のコメントは紙面に載っていなかった。
14年の一連の問題とは何か。よもや朝日は忘れてはいまい。いわゆる慰安婦をめぐる虚偽報道と、東京電力第一原発事故で現場指揮を執った吉田昌郎所長の調書をめぐる虚偽報道だ。
なにせ前者は32年間も虚偽を放置し続けた。虚偽と判明しても謝罪せず、「『朝日新聞社』の辞書に『反省』『謝罪』の言葉はない!」(週刊新潮・14年9月4日号)などと痛烈に批判された。後者は所長命令に違反し所員の9割が撤退したと報じたが、実際はそんな所長命令も撤退もなく、命懸けて作業した所員たちを悔しがらせた。
◆体質は今も変わらず
批判を受けて朝日は第三者委員会の設置を余儀なくされた。同委は同年12月に報告書を発表し、朝日の体質を改めて浮き彫りにした。委員を務めた北岡伸一氏(国際大学学長=当時)は「粗雑な事実の把握」「キャンペーン体質の過剰」「物事をもっぱら政府対人民の図式で考える傾向」「過剰な正義の追及」「現実的な解決策の提示の欠如」「論点のすり替え」の具体例を列挙し、「自らの主張のために、他者の言説を歪曲(わいきょく)ないし貶(おとし)める傾向」を問題視した。
また岡本行夫氏(外交評論家)は、何人もの朝日社員から「角度をつける」との話を聞いたという。角度とは「真実を伝えるだけでは報道にならない、朝日新聞としての方向性をつけて、初めて見出しがつく」というもので、慰安婦問題だけでなく、原発、防衛・日米安保、集団的自衛権、秘密保護、増税等々、方向性に合わせるために「角度」をつけていた(いずれも朝日・同12月23日付)。
山脇編集委員は「客観的なニュース記事でも、ちょっとした表現に記者の主観が表れることがある」と言うが、朝日のそれは「ちょっとした表現」どころではなかった。
その体質は今も変わらない。安保関連法は「戦争法」、テロ等準備罪は「共謀罪」、加計問題では「安倍首相の友人」といったレッテルを貼り、「角度」を付け続けている。これでは「新聞社は運動体でない」(岡本氏)との指摘も空しい。小島氏の言う「まさにそれが問われている」とはこのことを指すに違いない。
◆いまだ反省の弁なし
安倍改造内閣が発足した翌4日付社説も角度を付けていた。「政権の強権姿勢と隠蔽(いんぺい)体質を正せるかどうか。改造内閣が問われるのはそこである」とし、「加計問題では、野党の質問を『印象操作』と決めつけ、明らかになった文書を『怪文書』扱いするなど、首相や官房長官のおごりがあらわになった」と批判している。
首相や官房長官に「おごり」があったかも知れないが、ならば朝日の「印象操作」はどうなのか。加計問題の本質に関わる、愛媛県今治市への獣医学部誘致を推進していた加戸守行前同県知事の発言をほとんど報じず、産経などから「隠蔽」「印象操作」と批判された。
だが、これにも聞く耳を持たない。いまだ反論も反省の弁もなく、無視し続け、「フェイク(偽)ニュース」を拡散している。これではメディアの役割を論じる資格などない。「強権姿勢と隠蔽体質」はそっくり朝日に返すべきだ。
(増 記代司)





