前川氏の「嘘」に触れず読売の報道姿勢を批判した池上氏の朝日コラム
◆安倍政権つぶし狙い
加計学園の獣医学部新設問題をめぐる国会の第2回目の閉会中審査が行われた。前川喜平・前文部科学事務次官の「証言」から始まった加計問題だが、審査では大山鳴動してネズミ1匹どころか1匹も出てこなかった。どう見ても「崩れた『加計ありき』 前川氏、論拠示せず」(産経7月25日付)だった。
それでも朝日は「加計疑惑 証拠なき否定」(25日付)と「疑惑」のレッテルを貼り続けている。だが、ありもしない「証拠」はどう言われようが出しようがない。それを疑惑と言い募るのは、安倍政権つぶしが狙いなのだろう。
審査前に佐伯啓思・京都大学名誉教授は「現時点での情報だけからすれば、連日、メディアが大騒ぎするほどの大問題だとは私には思われない」とし、「フェイク(捏造〈ねつぞう〉)ニュース」についてこう述べていた(産経10日付『日の蔭りの中で』)。
「そもそも『事実』がどこにあるのか分からないような問題において、『事実が明らかにならないから、政府は何かを隠蔽しようとしている』といってもこれまたフェイクになってしまう……とすれば、この問題を過度に重視するメディアは政府を批判するためにフェイクに肩入れしていることになろう」
◆「疑惑構図」だけ描く
佐伯氏の見解は審査後も変わらないだろう。2回の審査とも大騒ぎするほどの材料が出てこなかった。これではメディアはフェイクに肩入れしているどころか、フェイクそのものだ。
とりわけ朝日や毎日は愛媛県今治市への獣医学部誘致を推進していた加戸守行前同県知事の発言をほとんど報じず、「安倍首相の友人が理事長の加計学園」という「疑惑構図」だけを描いた。この構図の証拠は審査で挙がらなかった。もはや完敗のはずだ。
ところが、ジャーナリストの池上彰氏は朝日紙上のコラム「池上彰の新聞ななめ読み」(28日付)で、まるで朝毎をかばうかのように読売の報道姿勢を批判している。
前川氏をめぐって読売は5月22日付に東京・歌舞伎町の出会い系バーに通っていたとの記事を掲載したが、これについて審査で議員に問われた前川氏は、昨秋に杉田和博・官房副長官から注意を受けていたことを明らかにした上で、「官邸と読売新聞の記事は連動しているというふうに感じた。私以外でも行われているとしたら、国家権力とメディアの関係は非常に問題がある」と述べた。
池上氏はこの発言を朝日と毎日は11日付に詳報しているとして、こう言った。
「さあ、前川氏から、これだけ批判された読売新聞です。いったいどのような記事になっているのかと思って、同日付の読売新聞を読んだのですが…。どこにも、この部分の前川発言が掲載されていません。本文の記事はもちろん、『国会論戦の詳報』というページにも、一言も出てきません。これでは『詳報』ではありませんね」
確かに詳報とは言えない。読売は掲載しておくべきだった。だが、出会い系バー報道への批判に対しては6月3日付に東京本社の原口隆則社会部長名で「公共の関心事であり、公益目的にもかなう」などとする反論を掲載している。池上氏はそれを知っているはずなのに、なぜか書かない。
◆紛れもないフェイク
前川氏は在職中、それも平日夜に「売春や援助交際の交渉の場になっている」出会い系バーに出入りしていた。「女性の貧困を扱う報道番組を見て、話を聞いてみたくなった」と貧困調査が目的だと説明していたが、10日の審査では「調査という言葉使いは適切ではなかった」「個人的行動」と、貧困調査ではなかったと証言した。前川氏は平然と嘘(うそ)をついていたのだ。これも池上氏は書かない。
その上で加戸発言を取り上げ「(朝毎は)詳報で伝えているとはいえ、本文でもきちんと伝えるべきだったのではないでしょうか」と結んでいる。これでは朝毎が詳報で伝えているだけましだと言わんばかりだ。
読売の出会い系バー報道は情報源はともあれ、前川氏も認めるようにファクト(事実)だ。だが、朝毎の加戸発言の矮小化は紛れもなくフェイク(捏造)だ。この違いを覆い隠して朝日を擁護するのはいただけない。
(増 記代司)





