加計学園めぐる閉会中審査で「加戸発言」に触れない朝毎の印象操作

◆偏向手法が浮き彫り

 学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる衆参両院の閉会中審査が先週、行われた。それを伝える一部メディアの偏向ぶりには唖然(あぜん)とさせられた。

 本紙読者なら16日付本欄で承知の通りだ。NHK総合テレビが7時間のやりとりを全て生放送したので、自分たちの都合の良いところだけを切り取って報じる、逆に言えば都合の悪いところを封印する「偏向手法」が浮き彫りにされた。

 メディアが描くのは、国家戦略特区での獣医学部新設が安倍首相の友人が理事長を務める「加計学園ありき」で決まったという構図だ。朝日などは「安倍首相の友人」を加計学園の枕ことばのように書き、まるで行政が私物化されているかのように報じている。

 だが、加計の獣医学部構想は安倍政権下で、にわかに出てきた話ではない。2007年11月に今治市と愛媛県が共同で構造改革特区として新設するよう国に求め、14年11月まで実に15回にわたって提案し続けきた案件だ。

 これが実現しないのは岩盤規制とされた。岩盤規制とは役所や業界団体などが改革に強く反対し、緩和や撤廃が容易にできないことを言う。民主党政権下では同党議員らが問題視し、自民党政権時代に「対応不可」だったのが鳩山政権時代に「速やかに検討」へと方針が転換された。

◆加戸氏も焦点のはず

 加戸守行・前愛媛県知事は知事時代に鳥インフルエンザや口蹄(こうてい)疫などの発生時に獣医師が足りず、志望者がなく県が公務員獣医師を採用できずにいたと窮状を訴えてきた。文科省の岩盤規制について加戸氏は「獣医学部の定員は神奈川県以東が8割、岐阜県以西は2割。こんな規制が医学部にあったら暴動が起きる」とまで述べて批判している(産経ネット版6月15日)。

 だから、閉会中審査では前川喜平・前文部科学事務次官だけでなく、加戸氏の発言も焦点のはずだった。前川氏は「官邸の不当な関与」を強調したが、加戸氏は「岩盤規制にドリルで穴を開けていただいた。ゆがめられた行政が正された」と述べた。だが、メディアは前川発言だけを大きく報じた。

 それを産経12日付は「加戸氏発言 報じぬ朝毎」との見出しで、「報道の“印象操作”が浮き彫りとなった」と詳述している。記事で分かりやすいのは、各紙が加戸氏の発言を報じた行数について表を付けて比較していることだ。

 それによると、一般記事で産経は50行、読売は68行、東京は11行、日経は9行取り上げたが、朝日と毎日は0行だった。朝日は加戸発言を引き出した自民党の青山繁晴参院議員の質問を審査の詳報でも掲載しなかった。東京は社会面で加戸発言を取り上げたが、発言の肝である「ゆがめられた行政が正された」の部分を記載しなかった。

◆岩盤規制は書かない

 だが、ここまで具体的に指摘されながら、朝日は懲りずに印象操作を続けている。16日付に1頁を割いて「『加計』問題 晴れぬ疑念」と題する特集を組んだが、ここでも強調するのは加計学園の理事長が「安倍首相の友人」であるという一点だ。

 例えば、リード文は「安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人『加計(かけ)学園』の国家戦略特区での獣医学部新設について」の一文から始まり、年表には「14年5月 安倍晋三首相が千葉科学大の式典に出席。加計孝太郎理事長を『腹心の友』と呼ぶ」と記載、本文では「首相の友人が経営する加計学園『ありき』で、一連の行政手続きが不公平にゆがめられたのではないか」などと記す。

 一方、加戸氏が指摘した岩盤規制については書かない。年表では前記の愛媛県の動きなどを記載したが、特集のメインに据えた「加計学園の獣医学部新設をめぐる構図」では加計学園と首相官邸、文科省の3者のやりとりだけを描く。これでは獣医学部新設が加計学園と首相官邸だけで進められたとの印象を与える。地元・愛媛県は蚊帳の外に置かれっぱなしだ。

 これぞまさに「フェイク(偽装)ニュース」だ。近く安倍首相が出席して閉会中審査が開かれるが、朝日からどんな「フェイク」が飛び出すか、油断は禁物だ。

(増 記代司)