既存メディアを出し抜きSNSの新しい可能性を示した松居動画
◆背後にサポーター
タレントの松居一代(60)が夫で俳優の船越英一郎(56)の「不貞」を訴える動画がインターネットで拡散している。既に5本が公開されており、いずれも、松居が夫婦間の秘め事や船越の個人情報を暴露しながら、一方的に詰(なじ)る内容だ。
1本目は夜中に公開されたが、事前に松居は自身のブログで“緊急重大発表”を告知し、「寝ないで待っていてください」とまでして注目を集めた上で動画を流した。夜中に還暦を過ぎたすっぴんの女性が夫への恨みつらみを吐く鬼気迫るシーンを見せられたのだ。寝付きが悪かったり、寝覚めの悪かった視聴者が多かったのではないだろうか。
ただ、この動画の撮影・配信を全部自分一人でやっているとすれば、この人は相当なSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の使い手だと思わせたが、やはり背後にSNSに詳しいサポーターがいることが後になって明らかになり納得。
ともあれ、週刊誌とテレビのワイドショーにとって、これほど“おいしい”話題もない。芸能人のスキャンダル、離婚騒動に不倫疑惑、それに莫大(ばくだい)な財産の分捕り合戦も予想される。だが、週刊誌もテレビも情けない。松居動画の“後追い”をさせられているだけで、振り回されている感は免れないからだ。
◆文春に“一日の長”
その中で“一日の長”があるのは週刊文春だ。7月20日号で、なぜ松居がこれほど激しく動画攻勢をしているのかの理由を書いている。同誌は最初の松居動画で、「週刊文春に騙(だま)された」と怒りの矛先を向けられていた。既に前から離婚話の取材を続けていて、松居に不利な内容を公表しようとしていた。なので、その前に松居は反論しておきたかったのだろう。それで深夜の動画配信になったわけだ。
さて、攻撃の理由である。同誌によると、松居は船越をいたく怒らせたらしい。二人が結婚する前に船越が川島なお美(故人)と交際していたと暴露したのだ。その理由は、話題を集めて自身の本が売れるように仕組んだ、しかも、サクラ記者を会見場に仕込んで、この件を質問させ、それに答える形で「川島さんのプライバシーを暴露して注目を集めようとした」というのである。
船越は激怒した。松居は「ひたすら謝っているのです。しかし船越さんが謝罪を受け入れず離婚が不可避と知ったため、彼女は先手を打つ意味で(今回の)暴露を始めたのです」と同誌は、「船越家の知人」の話を紹介し、「かつて愛した夫を攻撃し続ける松居は、一体、どこに向かおうとしているのか」と記事を結んでいる。
◆政治家もSNS利用
少し、松居一代・船越英一郎の話題に紙数を割き過ぎたが、最近、話題の主が自らの主張をSNSで明らかにして、週刊誌など既存の媒体を出し抜くことが多くなってきた。
衆院議員・中川俊直の「重婚・不倫」騒動でも、中川は記者会見を開き、テレビや週刊誌などのメディアの前で釈明することなく、自身のフェイスブックで「今回の件は私の不徳以外のほかなにものでもありません(原文ママ)」と謝罪しただけで、ことを終わらせようとしている。
地元選挙区は自身が出向いて謝罪しているようだが、テレビなどで彼が頭を下げている姿は見ていない。既婚者なのに、なぜハワイで別の女性と「結婚」したのか、読者視聴者は知りたいのにだ。
都合が悪い時には政治家は「入院」するものだ。実際に体調を崩して加療が必要な場合もあるだろうが、大概は雲隠れに病院が使われる。既に今年の流行語大賞に“非公式ノミネート”さている「このハゲー!」「ちがうだろ!」の衆院議員・豊田真由子も「入院」しているが、これが“正しい”逃げ方である。
だがSNSで自説を展開し、反論する政治家も見られるようになってきた。その最たるものが米大統領トランプだ。ツイッターにほぼ毎日、自説を展開し、反論をアップしている。日本の政治家でもツイッターで情報発信する人は多くなってきているが、SNSは補助的手段にすぎない。政治家はあくまで自身の肉声で有権者に語るべきで、特に重要なことを訴えたり、過ちを謝罪する時には会見を開くべきである。
それでも「動画」というメディアがこのように利用されたのは初めてで、松居動画は新しい可能性を示した。SNSで反論できる時代、週刊誌はどう対応するのか。(敬称略)
(岩崎 哲)





