NHKの「加計」閉会中審査生中継で浮き彫りの「朝日」偏向報道
◆前川前次官の“詭弁”
新聞・テレビに限らず、メディアが行う偏向報道の常套(じょうとう)手段は客観報道を装いながら、実際は事実を切り取って、自分たちの都合の良いことだけ伝えることである。学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設をめぐる衆参両院の閉会中審査についての報道では、それが露骨だった。
なぜそれが断言できるかと言えば、NHK総合テレビが7時間のやりとりを全て生中継したからだ。それをチェックすれば、誰でもどの新聞がどこをカットしたかなど、その偏向ぶりは一目瞭然だった。しかし、普通の視聴者や新聞読者は、そんな暇はないだろうから、その一端を紹介しよう。
閉会中審査に参考人として出席した一人は、前川喜平・前文部科学事務次官。国家戦略特区の枠の中で、獣医学部新設が同学園に認められたことについて、「初めから加計ありき」「行政手続きが官邸の関与でゆがめられた」と訴えている人物だ。落ち着いて、堂々とした彼の発言からは、文部官僚のトップにあった人間としての強い意思がにじみ出ていたが、それが強過ぎて、何でも政権批判に結び付けようとする姿勢が目立ったのは、逆効果だった。
例えば、議論の焦点となっている獣医学部新設を認める基準の4条件について、同学園は満たしていないというのが文科省の立場だと、前川は主張している。これについて、参議院の審査で自民党の青山繁晴は、国家戦略特区ワーキンググループの議事録などを調べた結果として、獣医師を要請する学部の新設を認めない「告示」を2003年に出した文科省には、同学園が4条件を満たしていないとする「挙証責任」があるが、同省はそれを果たしていないのではないか、とただした。
これに対しては、前川は挙証責任と国民への説明責任は別問題であるなどと、質問をはぐらかし“詭弁(きべん)”にも聞こえる発言を行った。これには青山もあきれた様子で、「挙証責任と国民への説明が別だったら、民主主義は終わり」と、問題のすり替えを行う前川を批判した。
◆青山氏分析に説得力
一方、説得力があったのは青山の質問と分析、それに長年にわたって獣医学部の新設を求め続けてきた側の参考人、前愛媛県知事の加戸守行とのやりとりだ。
全国に3万9000人いる獣医師のうち、ペット関連の医師が約4割で最も多い一方で、家畜や防疫を扱う公務員獣医師は1割弱。動物ウイルスなどを扱う産業動物獣医師は十分確保できていない地域がある。
また、獣医学部の定員は現在930人だが、実際は1200人まで水増し入学が行われている。こうした数字を列挙しながらは、青山は「これで需給が均衡していると文科省が判断しているのであればその点もおかしい」「これは獣医師(養成)の学校が現状では十分でないという証拠」と強調。加計学園1校になったのは、獣医師会の要請があったからではないか、と指摘した。
さらに、「初めから加計ありき」と前川が訴え、多くのメディアもそれを強調して報道しているが、それに真っ向から反論したのは、10年前から獣医師の確保に奔走してきた加戸だ。
◆都合悪い部分は削除
「行政がゆがめられたという(前川の)発言は、10年間我慢させられてきた岩盤(規制)に、国家戦略特区というドリルで穴を開けていただき、歪められた行政が正されたというのが正しい」「当時から、獣医師の養成について大変疑問に思ったのは、箱根の関所から東で8割の入学定員があり、西には2割の定員しかない。しかも、私学は水増し入学をするから、実際に養成される数は、東が90%近くになる。空白区は四国です」
その上で、「厚い岩盤規制で跳ね返され跳ね返され、やっと国家戦略特区の枠の中で、(獣医学部新設の)実現が見えるようになった今、本当に喜んでいる」と訴えた。
最後に、加戸はこう述べた。「私は今までたくさん取材を受けた。しかし、(メディアに)都合の悪いことはカットされた。私の言いたいことを取り上げていただいたメディアは極めて少なかったことを残念に思う」。
閉会中審査が行われた翌日(11日)、朝日新聞は審査の「やりとり詳報」を掲載したが、青山の質問や発言、それに対する前川、加戸の発言を全てカットした。これが偏向報道の実態である。
(敬称略)
(森田清策)





