安倍政権のアラばかり突き「言論弾圧」問題で腰の引けた新潮

◆首相ついに倒れる?

 週刊新潮(6月22日号)に「『安倍』深更の重大変調」の記事が載った。イタリア・サミットから帰国して、テロ等準備罪の国会通過に全力を挙げる中、加計学園問題で連日責められていては体調も悪くなろうもの。健康問題を抱える安倍首相がついに倒れたのか?と思わせる見出しである。

 事実関係を同誌はこう伝える。

 「結婚30周年」記念日の9日に昭恵夫人と「東京・代々木のイタリア料理店で食事会を開いた。夜10時過ぎに富ヶ谷の私邸に戻った後、しばらくして突如、体調が悪化。深夜0時過ぎ、慶応病院の主治医が急遽駆け付ける事態になった」

 「翌10日にももう一度、メディカチェックを受けることになった。首相動静では、午後2時過ぎから約3時間、六本木のホテル内にあるフィットネスクラブで汗を流したとされていますが、実は、こっそりとそこに主治医に来てもらい、あらためて診察を受けている」

 「ストレスが限界まで達し、持病に悪影響を及ぼしたのではないでしょうか」

 いずれも「永田町関係者」が同誌に語った話である。

 一国の首相ともなれば、診察を受けるだけで「すわ一大事か」と緊張するのも無理からぬものがある。首相の体調は国政に影響するからだ。過密スケジュールに加えて、精神的ストレスを抱えていれば、体調の一つも悪くなろうもの。しかも「持病」がある身ではなおさらである。

 新潮がこの話題をトップにしたのはその点では分かるが、ほぼ引用した部分だけの「事実」のみでトップとするのには弱い。内容的に見て、文科省の「文書」再調査結果が発表されるタイミングでの報道には別の意図もありそうだと勘繰られても仕方あるまい。

◆総理に近い記者告発

 最近の新潮は安倍政権のアラばかりを突いている。「総理に近い」ジャーナリストの「準強姦罪告発」など、背景に何があるのか、一般読者でも疑問を持つ話題を告発側に立ってリードしている。

 このジャーナリストはワシントン駐在時分、「韓国軍がベトナムで慰安所を開設していた」と週刊文春(2015年4月2日号)で書いたことがある。米国の公文書を基に明らかにした衝撃的な内容だった。そういう記者を“葬ろう”という意図がどこかで働いてはいないだろうか。それに新潮は“乗せられた”のか、それともこのジャーナリストの行状が目に余るのか。「慰安婦問題に触れると…」といった“都市伝説”じみた話もあるが、そんな疑問に答えるのが週刊誌のはずだが。

 だから、「言論弾圧」問題でも腰が引けている。何かというと、作家の百田尚樹氏の一橋大学園祭での講演が「潰された」件だ。「同大の学生らでつくる『反レイシズム情報センター(ARIC)』という団体」が、学園祭実行委員会に「レイシストである百田尚樹に講演させるわけにはいかない」との中止要請を2カ月近くにわたって行い、その結果、講演会は中止に追い込まれた。

◆寄稿ではなく取材を

 この話題を、記者が取材した書き原稿ではなく、百田氏の「緊急寄稿」体裁にして済ませているのだ。つまり、原稿の責任は百田氏にあり、新潮は誌面を提供しただけということである。もちろん、掲載した以上、編集部の判断も入っているが、寄稿とすることで、その責任は小さいとでもしたいのだろう。

 百田氏の講演中止を強硬に求めたARICは「背景は不明です。代表は34歳の在日朝鮮人三世で、一橋大学の大学院生です。(略)『ヘイト発言』なるものを探り出し、それをデータベース化していく」(百田氏)活動をしているという。「2017年6月現在で、120名を超える文化人や政治家などの2800を超える発言が『差別発言』として認定され、データベースに載せられて」(同)いるのだという。

 ヘイトスピーチはあってはならないが、その基準は捉え方によって曖昧だ。一団体の物差しだけで「ヘイト」に認定され、記録されることが公正なのかは疑問がある。現に言論活動が封殺された。

 寄稿であれ、取り上げたことは評価できるが、この話題は編集部の取材原稿にすべきだった。

(岩崎 哲)