「自然の摂理」に反する同性婚反対のデヴィ夫人、「多様な家族」容認の堀潤
◆孤立無援の反対派
「同性婚は、絶対反対! 自然の摂理に反する」
「私はまったくそう思わない!」
「結婚の形はさまざまあっていい」
日曜日の朝だというのに、14日放送のフジテレビ系列のバラエティー「ワイドナショー」は、出演者たちのこんなやりとりで白熱した。同性カップルの関係を“結婚”と法的に認めることに強く反対したのは、タレントのデヴィ夫人(デヴィ・スカルノ)。
「お花に、雄しべと雌しべがあるように、動物に雄と雌があるように、結婚は子孫を残すことですから、それに反しますよね。カトリック教徒の教えですが」と力説した。
同性カップルの関係を結婚に準じて扱う「パートナーシップ制度」や同性婚を話題にする報道番組や情報バラエティーが増えているが、出演者が口にするのはほとんどが容認論で、デヴィ夫人のように、信念を持って「同性婚反対」を訴える出演者はめずらしい。同番組でも、発言した他の出演者は全て容認派で、デヴィ夫人は孤立無援の状況だった。
◆視聴者をミスリード
これに対して、「そうは思わない」と真っ向から反論したのは、タレントの一ノ瀬文香。2年前、レズビアンのパートナーと、“結婚式”を挙げただけでなく、婚姻届けを役所に出して、不受理となった経歴を持つが、パートナーとの関係は1年前、破綻している。それを公表し、堂々とテレビに出演するのは、同性愛を社会に公認させて同性婚を法制化させようとの運動を続けるからで、デヴィ夫人の発言に反論するのは当然だ。
出演者でもう一人、「多様な家族」を説いて同性婚容認論を展開したのは、ジャーナリストの堀潤(元NHKアナウンサー)。前述の2人は比較的自分の考えをストレートに表明していたのに対して、堀の発言は事実をゆがめており視聴者をミスリードしかねないものだった。
例えば、デヴィ夫人がカトリックの教えに触れた時、堀はこんなことを言った。「カトリックに関して言えば、ローマ法王が今まで同性愛に制限を加えてきたのは間違っていたと言うほど、改革を進めている」
これだと、カトリックは今後、同性婚を認めるのか、と誤解する視聴者がいても不思議ではない。だから、デヴィ夫人はすぐさま「でも結婚は認めていない」と反論した。
さすがに局側もこれではまずいと思ったのだろう。テロップで「カトリック教会は同性愛者に不快な思いをさせてきたことについて謝罪すべきだ」という「ローマ法王の発言」(昨年6月)を流し、堀の不正確さを修正した。
堀の問題発言はさらに続く。「結婚の形はさまざまであってもいいと思うし、フランスのように、いろんな形で選択肢が増えて家族といういろんな形があっていいと思う」
◆家族制度崩壊の一歩
「多様な家庭があっていい」という主張だが、「愛があればいい」というだけで、無原則に「家族」を拡大すれば、一夫多妻、多夫一妻、重婚、近親婚も認めることになり、結局、家族制度は崩壊してしまう。その第一歩となるのが同性婚で、それを認めれば、人工授精による出産によって親子関係が複雑化するという深刻な問題も待ち受けている。この問題に触れずに、「多様な家庭」という曖昧な家庭論は、社会の無秩序につながり、危険である。
デヴィ夫人は友人の中には同性愛者もいると言ったが、それでも「自然の摂理がめちゃめちゃになる」と叫んだのは、「男女」という結婚の基本原則を崩して同性婚を認めれば、その先に家族制度の崩壊があることを見ているからなのだろう。これは現在のわが国の家族法の考え方とそう変わらず、伝統的なものだ。そんなデヴィ夫人が番組で浮いて見えたのは、その他の出演者が勉強不足だからか、意図的に現行制度を無視したのか、のどちらかだろう。
また、一ノ瀬が「(めちゃくちゃに)ならない!」とすぐさま否定したのは、結婚制度の論議に、有性生殖という自然の摂理を持ち出されると、同性婚合法化の根拠を失うからである。
堀のほかレギュラー出演者の東野幸治、松本人志らも「本人たちが幸せになればいい」と容認派だったが、ならば同性婚だけでなく一夫多妻などその他も認めるのか、同性カップルが人工授精の医療技術を使って子供をつくることをどう考えるのか、その結果、社会はどうなるのか。同性婚を議論するなら、そこまで踏み込んで考えるべきである。(敬称略)
(森田清策)