人口減少に少子化対策の加速訴えた読売、激減後の社会見据えた産経
◆物足りなさ残る対策
2053年に1億人を割り、65年には8808万人に減少する――。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が公表したわが国の将来推計人口である。
以前から指摘されてはきたが、やはりショッキングな内容である。こうした人口推計を各紙はどう捉(とら)えたか、社説見出しはこれまでに次の通り。掲載順に、朝日(11日付)「政策にどう生かすか」、毎日「質量共に対策が足りない」、本紙(15日付)「若者の結婚を後押ししたい」、読売(17日付)「少子化克服へ対策を加速せよ」、産経「激減後の社会に向き合え」。
見出しの通り、「少子化対策」に重点を置いたのは読売である。
少子高齢化は、社会・経済の活力を殺(そ)ぎ、社会保障制度の維持を危うくする。「そうした将来への不安や悲観が、経済を停滞させ、一層の少子化を招くという悪循環に陥っている」からである。
読売はしかし、「人口推計は、あくまで予測に過ぎない。未来を変えるのは可能だ」として、「その決意で、少子化克服へ対策を加速させることが大切である」と強調する。
対策として同紙は、仕事と子育てを両立できる環境の整備や、長時間労働の是正を中心とした働き方改革、若年層の経済基盤の安定策などを挙げる。ただ、これらは既に政府が実施している対策であるため、それを「加速せよ」ということなのだが、対策として強調するには、既に指摘され実施されてもいる内容のため物足りなさが残る。
◆社会の支え手が減少
より厳しい認識を示したのが、産経である。安倍晋三政権は「1億人程度」の人口を維持することを掲げているが、「だが、出産可能な女性が減っている以上、出生数の大きな回復は難しい」からである。
産経は、出生数減に歯止めを掛ける努力は、言うまでもなく続けなければならないが、「しかし、当面は人口が減りゆくことを前提に考える必要がある」と強調。そして、「それには、人口が大きく減った後に、どんな社会を目指すかについてのグランドデザインがいる。その際、当座の対策だけでなく、中長期的な視座に立った取り組みも求められる」というわけである。
同紙が急務として取り上げたのは、社会の支え手がハイペースで減ることへの対応である。
各紙が指摘するように、生産年齢人口(15~64歳)は総人口より減少スピードが速い。将来推計では、今後50年間に総人口は3割減、生産年年齢人口はそれを上回る4割減なのである。
約50年後の65年8800万人という総人口は、1950年代と同じ水準だが、大きく異なるのは、「(1950年)当時は現役世代(生産年齢人口のこと)10人以上が高齢者1人を支えた」(毎日)のに対し、「2065年には現役世代1・3人が高齢者1人を支える『肩車型』になる」(同)ことだ。
その影響について、産経は「社会保障制度や経済だけにとどまらない。税収の落ち込みは行政サービス全体を劣化させる。若者の少ない社会は活力がそがれ、あらゆる場面で人手不足が深刻化するであろう」と警告するが、こうした点は深く認識すべきであろう。
同紙は、「個々の事案に付け焼き刃で対処しても効果は薄い。過去の常識を打ち破る発想が大事だ」と説いたが、その聞きたい中身が示されていないのは、残念である。それだけ、この問題の解決が容易でないことの証左ということか。
◆同時並行的な対策を
民間研究機関の日本創生会議が14年5月に、人口減少で896自治体が消滅する恐れがあるという衝撃的な発表をしてから3年。
産経が指摘するように、コンパクトで効率的な町づくりは不可避であろう。「地方の衰退は国家の衰退につながりかねない」(本紙)からである。
結局、結論は抜本的な少子化対策が急務ということに落ち着いてしまうのだが、当面の出生率を上げるための対策と、人口とりわけ生産年齢人口の減少を見据えた制度、システムの再構築という中長期的な対策を同時並行的に進めなければならないということである。その際は、産経が文末で指摘した「縮みを否定せず、積極姿勢で臨みたい」こと、然りである。
(床井明男)





