米中首脳会談、「互いに利用し合う様相」などとは言えない半島情勢

◆否定的な評価の各紙

 「初の首脳会談の成果が上がったとはとても言えまい」(読売9日、以下各紙も同)。「米中首脳の会談は、期待はずれに終わったといっていい」(朝日)、「具体的な成果も乏しかった」(毎日)。

 この7日までの2日間、米国・パームビーチ(フロリダ州)の別荘で行われた米中首脳会談は、通常は行われる共同記者会見も共同声明の発表もないままに終わった。そのことが象徴するように、会談についての新聞社説は、冒頭に引用したように概(おおむ)ね否定的かつ低い評価であった。北朝鮮の核・ミサイル開発について、「非常に深刻な段階」とした認識を共有したという程度では評価に値しないということであろう。

 一方で「アジア太平洋地域の平和と安定を損なう動きに、米国は積極的に向き合う姿勢を示した。同盟国である日本としても歓迎したい」と、オバマ時代の「戦略的忍耐」から決別し「あらゆる選択肢」を視野に入れ検討を進めるトランプ米大統領にエールを送った産経は、会談そのものの評価への明確な言及はなかった。

 そんな中で、わずかばかりの評価をしたのが日経である。「関係がギクシャクしてきた両国の間に外交・安全保障、経済、サイバー安全保障など4分野でハイレベル対話の枠組みができたのは評価できる」と。だが、その日経にして、日本の安全保障に密接に関わる北朝鮮の核・ミサイル問題では「目に見える合意は打ち出せなかった」ことに失望を示したのだ。

◆圧力をかけよと迫る

 その上で、中国と習近平国家主席の責任を厳しく追及した。挑発を繰り返す北朝鮮に中国は「戦略的に北朝鮮側に立つことを」見透かされていると指摘。米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備に強く反対するなどの中国の一連の行動は「北朝鮮を利するだけで『朝鮮半島の非核化』という自ら掲げる目標の実現まで阻むことになる。中国はまず北朝鮮に効果が確認できる手法で圧力をかけるべきだ」と迫った。

 習氏が中国人民解放軍と米軍の関係が重要だと強調したことに対しても「衝突を避ける枠組みが重要と考えるなら、まず自ら一方的な行動を慎むのが先だろう」と理路整然と畳み掛けたのには全く同感である。

 成果は乏しく期待外れに終わった米中首脳会談にもかかわらず、両国は対立を際立たせなかった。それについて朝日、毎日、産経は互いに良好な関係の演出に腐心したからだと、それぞれ次のように言及。

 「秋に共産党大会を控える習氏が対米関係安定の演出をねらい、一方のトランプ氏も低迷する支持率の回復をめざして中国に圧力をかける姿を米国民に見せたいという構図」で互いに利用し合う様相(朝日)。「(現実の壁にぶつかっているトランプ氏は)対中政策が批判の材料にされることを避けたかったからではないか。/……(習氏は)内政に力を注ぐため、対米関係や周辺環境を安定化させたいのが本音」で双方の思惑が一致した(毎日)。「両国に溝があることは隠せないものの、米中関係を円滑に進めていくことをアピールしたかったのでは」(産経)などと双方の思惑の一致の結果だと分析する。

◆中国ペースと断じる

 これに対して読売は、閣僚級による外交・安全保障、経済など4分野の「米中戦略・経済対話」の枠組みや米国の対中貿易赤字を縮小する「100日計画」の策定という乏しい成果についても、厳しい見方を示した。さらに「一連の合意は、貿易不均衡の是正や中国のサイバー攻撃など、個別の懸案の早期解決が容易でなく、先送りせざるを得ない現状の表れ」だと指摘。「5年に1度の共産党大会を今秋に控えた習氏は、対米関係の安定を国内に強調することを最優先していた。その思惑通りの結果になったと考えているはずだ」と分析し、中国ペースが目立った会談だと断じたのである。

 トランプ氏は習氏との会談日程中に敢行した米軍のシリア攻撃で、対北朝鮮の圧力強化を求める中国の協力が得られない場合、独自行動の選択肢もあることを示した。昨今の半島をめぐる情勢は、会談で互いに利用し合う様相などとは言えない展開を示している。

(堀本和博)