「森友問題」の解明はさておき「アッキー叩き」に終始した各誌報道
◆誤解を招く見出し
「森友問題」はいつの間にか「アッキー叩(たた)き」に変わってきた。アッキーとは安倍昭恵首相夫人のことだ。週刊新潮(4月13日号)ではズバリ「『安倍昭恵』と大麻」を特集した。見出しだけ見れば、早合点の人は夫人がどこかの元女優のように大麻法違反者だと錯覚しかねない。
もちろんそうではない。昭恵夫人は麻の意味を神聖なものとして捉えている。同誌はわざわざ週刊現代(2016年11月12日号)の記事を引用して、「現在神道の祈祷で使われている麻は、ほとんどが中国製ですが、日本古来の神とつながる精神性を得るためには、日本製の麻を使う必要があると思うんです。『日本を取り戻す』ことは『大麻を取り戻す』ことだと思っています」との発言を紹介している。
とはいえ、現在、麻は法律で輸入や栽培、所持、使用が厳しく規制されいる。なのに首相夫人が「日本を取り戻す」とか言って、麻の栽培を目指す団体の顧問に就任するなどしていていいのか、というのが同誌の“危惧”である。だが、後段の記事を見ると、危惧というより“揶揄(やゆ)”に近い。
同誌は昭恵夫人を「誰彼問わず人を信用し、『自分を利用して』と呼びかけて、『口利きのデパート』と化している」と書き、「そのたびに官僚の忖度(そんたく)を呼ぶ、史上稀な力を持った私人である」と皮肉る。
さらに、「思慮のなさは驚くほど徹底しているが、その原点は、バブル時代のあの場所にあった」として、結婚後も「ロングヘアーで、流行のボディコンファッションに身を包み、ジュリアナ東京に通い、VIP席でお酒を飲む姿がたびたび目撃されて」いたという「知人」の証言まで載せた。
◆政権発足以来の危機
確かに昭恵夫人の“評判”は芳しくない。政府つまり夫安倍晋三首相の方針とは逆の「脱原発」「反TPP」を公言するなど「家庭内野党」を言って憚(はばか)らない。首相夫人としてどうか、という声は前からあった。森友問題を契機に「あまり人を疑わない」とか「携帯電話の番号までオープンにする」といった“隙だらけ”のスタイルが災難を招いていることが明るみに出てきた。「育ちが良い」「世間知らずのお嬢様」といって許されるレベルではなくなってきているのだ。
この事態を収拾するタイミングがあったとするのは週刊文春(4月13日号)である。「安倍晋三は『裸の王様』になったのか」の記事で、ある「自民党議員」は「予算成立のタイミングで、記者会見し、『昭恵夫人の行動に軽率な面があった。私の答弁も至らない点があった』とでも謝罪しておけば、局面は変わったでしょう」と振り返る。だが、時すでに遅し。「第二次政権発足以来、最大の危機」だと同誌は見ている。
◆追及すべきは別の点
昭恵夫人のメールには「神様」とか「祈ります」という言葉が出てくる。サンデー毎日(4月16日号)は「安倍首相夫妻が信じている『神』」を載せた。公開されたメールのやり取りでは、昭恵夫人が「祈ります」「神様は全てご覧になっています」「神様は何を望んでいるのでしょう」などの言葉が出てくる。
同誌は「昭恵氏が環境や神への連想からか特殊な『水』を信仰していることは知られている」「晋三氏も第1次政権の頃、『神立の水』を販売する新興宗教まがいの経営コンサルタント『彗光(えこう)塾』に入れ込み、先代の教祖兼社長との親交が報じられた」と紹介する。「昭恵氏の非合理的な精神主義的傾向は、安倍家で培われたフシが強い」とまで書いている。
確かな話ではなく、人が何を信仰しようが自由だが、政治であれ、経営であれ、頂点に立つ者が「より大きな力」に縋(すが)ることはよくあることだ。権力者としての戒めであり、傲慢を払う便(よすが)でもある。同誌は「橋本龍太郎元首相の妻、久美子氏」の言葉を引用した。久美子氏は「政治に携わっていると、何か大きなものにすがらないと、とてもやってられないと思うことはある」と語る。
昭恵夫人の言動がこの事態を招いたことは事実だが、忘れてならないのは、「国有地を“激安”で払下げた経緯、そこに財務省などの忖度があったのかどうか、口利きなどに関与した政治家がいたのかどうか」(政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏)を解明することであって、“アッキー叩き”では埒(らち)が明かないということだ。
(岩崎 哲)