石原家を次の標的に定めた小池都知事の「大作戦」を分析した文春

◆参考人招致で対決へ

 最近、新聞を開いても、週刊誌を繰っても、テレビをつけても、話題はトランプ米大統領、五輪と市場移転の東京都、そして隣の韓国大統領選の行方ばかりである。ワイドショーは毎日繰り返し報じているので、普段テレビを見る時間の少ないサラリーマン夫より、主婦の方がはるかに詳しくなっているほどだ。

 週刊新潮(2月16日号)が、「『トランプ』の神経毒は日本の薬か?」の特集を組んでいるが、予想記事は結果が出てしまえば用をなさないため、ここでは取り上げない。本稿が載る頃には日米首脳会談の内容とゴルフのスコアが明らかになるはずだ。

 石原慎太郎元東京都知事が築地市場の豊洲移転の経緯について、これまでの態度を一転させて、都議会特別委員会の参考人招致に「喜んで応じる」と明らかにした。「売られたケンカは買ってやる」と言わんばかりの口ぶりで、いよいよ「小池対石原」戦の幕が切って落とされるわけだ。

 小池百合子都知事がなぜこれほどまでに石原氏を“攻撃”するのか。週刊文春(2月16日号)は「小池VS石原ファミリーおとり潰し大作戦」の記事で、「嫌いなのよ」とその理由を紹介している。

◆敵をつくり注目保つ

 小池氏は都知事選の時に石原氏から「大年増の厚化粧」と揶揄(やゆ)されたことがある。確かに、女性が容姿を貶(けな)されれば恨みを抱く。しかし、選挙戦に付き物の舌戦の一つで、それだけでこうまで攻撃はしないだろう。同誌は小池氏の政治スタイルによるものだと分析する。すなわち「敵をつくる」ことだ。敵をつくって注目を集め続けるのだ。

 小池氏のこれまでの敵は「都議会のドン」こと内田茂都議だった。「代理戦争」といわれた千代田区長選で圧勝し、内田氏は政界引退に追い込まれる。当面の敵を“片付けた”小池氏が次のターゲットにしたのが石原氏というわけ。

 既に都知事選で、それまで都連会長だった石原伸晃元環境相を辞任させ、三男の宏高衆院議員と併せて、次の総選挙での当選を脅かす体制をつくりつつある。もし2人とも落選すれば、石原家で議員バッジを付ける者が誰もいなくなり、政界での「お家断絶」になりかねない。

 ここで慎太郎氏としては自身が出ていって小池氏と一騎打ちをしないことには、みすみす「おとり潰し」にされるのを手をこまねいて見ているだけとなる。老体にムチ打って単騎出陣した理由である。

 同誌は「“おんな城主”小池氏。その目は『東京・夏の陣』に向いている――」と記事を結ぶ。都議選のことだ。それまで老将との戦いを持たせるつもりなのかは書いていない。

◆楽観許さぬ日韓関係

 週刊新潮に戻って、韓国大統領選の記事を見てみる。「次期大統領はこんなにとんでもない男」だとして、野党共に民主党の文在寅(ムンジェイン)氏に焦点を当てた。文氏は、「筋金入りの左派政治家」として、「完全に北朝鮮寄りで、中国べったり。言ってみれば、『福島瑞穂の男版』」と絶妙の喩(たと)えをするのは、「元時事通信ソウル特派員の室谷克実氏」だ。

 その「反日親北」の文氏が「支持率32%」でトップを走る。気になるのは対日関係だ。「朝鮮半島での取材経験が長い邦人ジャーナリスト」という正体が分からない人物のコメントだが、慰安婦合意を「今後の新たな慰安婦像設置を容認し、骨抜きにしていく」という。「THAAD(高高度防衛ミサイル)に反対」(元朝日新聞ソウル特派員の前川惠司氏)し、「韓国の沿岸で中国海軍の活動が活発になる恐れ」(拓殖大学教授の呉善花氏)があり、「済州島の韓国海軍基地への、中国の軍艦の寄港を認めるかもしれない」(前のジャーナリスト)という状況になる。

 すなわち「待っているのは戦後最悪の日韓関係。ソウルに赤い旗が立ち、世界の構図が変わりかねません」(室谷氏)という危機状況になると同誌は伝える。トランプ氏のような「大統領になれば、極端な政策はとらない」という楽観論は、文氏に関しては一つも出てこない。

 水面下での動きを報じる週刊誌があってもいいと思う。

(岩崎 哲)