韓国ウオッチャー大御所2人の結論は「距離を取る」だと報じる新潮

◆「関わらない」を主張

 日本と韓国について「今年の両国は、戦後類を見ないほどの“決裂状態”に陥ることは間違いなさそうだ」と週刊新潮(2月2日号)が書いている。

 釜山領事館前の「慰安婦像」、竹島への設置の動きに加えて、盗んでいった仏像の返還問題など、日韓を決裂させるには十分な懸案が解決の道筋すら見えずに山積みされているからだ。

 現在日本国内には単なる「嫌韓」を超えて、「鎖国」「国交断絶」などといった勇ましい声がネット上で乱舞している。もちろん現実化するとは思わないが、マグマがたまって限界を超えた時が恐ろしい。かつて福沢諭吉が、「われは心においてアジア東方の悪友を謝絶するものなり」と切り捨てたが、いま国内の知韓派から出ている「しばらく関わらない方がいい」という声に「歴史は繰り返す」の言葉が思い浮かぶ。

 脱亜論の後に来た現実は日韓併合だった。「関わらない」と言いつつ、日本にとって無視し得ないのが朝鮮半島の地政学的条件だからだ。韓国では次の大統領選で左派政権が誕生する可能性が高い。これは日本にとって看過できない情勢をつくるかもしれず、東アジアは緊張をはらむことになる。

 「関わらない」を主張するのは「産経新聞の黒田勝弘・ソウル駐在客員論説委員」だ。同誌に「アジアに深入りするな」と語っている。「日清・日露戦争、満州国建国に至るまで、日本は北からの脅威に備えて、朝鮮半島に“入れ込んだ”。しかし、逆にそのことによって、引き込まれ、足抜け出来なくなり、海洋国家のアメリカと対立して、戦争、敗戦に」至ったと説く。

 「歴史的教訓」として、「朝鮮半島との付き合い方は(略)距離を取って付き合うこと」だとし、「“アジアと共に”などの心地よい言葉に誘惑されてはいけないのです」と結論付ける。

◆近いが故に利害対立

 「元時事通信ソウル支局長の室谷克実氏」は同誌に、「日本人には“隣国と仲良くしなければいけない”“仲良くしなければアジアで孤立する”という精神が根強く残っています。これが韓国への甘い対応を生んでいる」と指摘する。だから、「近いが故に利害対立は起きるもの」と割り切り、「韓国をクールに利用する、すなわち『用韓』の考えが重要だ」と強調する。

 黒田氏にしろ、室谷氏にしろ、長年、朝鮮半島を取材してきた韓国ウオッチャーの大御所だ。両人とも“入れ込んできた”くちである。しかし、韓国に長く関われば関わるほど、韓国を弁護するよりも、辛口になり批判も鋭くなっていく。その両人が到達した結論が、「距離を取り、利害対立を当然視せよ」ということだ。現状を見ても、取り得る対策は当面、それ以外になさそうである。

◆思想集団が大衆扇動

 週刊文春(2月2日号)もトップ記事に韓国を持ってきた。現地ルポを載せている。竹島に慰安婦像を設置しようとする京畿道議を直撃したり、釜山の像を設置した団体「未来世代」代表に迫っている。現場主義は同誌らしいつくりだ。

 ソウル日本大使館前の慰安婦像を囲んでいる団体、各地に設置しようとしている団体等々はそれぞれ別個のものだが、共通分母があるはずである。「挺身隊問題対策協議会」(挺対協)や「韓国労働組合総連盟」(労総)などだ。これらの核の周りに進歩団体や左派傾向の人々がおり、外周に一般人を引き付けて置いておき、「市民団体」の名を被(かぶ)っているのだ。

 同誌は京畿道の閔敬善(ミンギョンソン)道議や、釜山の団体代表の女子学生に迫ったが、いずれも取材には失敗している。閔議員は野党「共に民主党」所属、「独島愛・国土愛の会」代表。釜山の女子学生は「左派系の南北統一団体『キョレハナ』に所属」しており、彼らの背後関係を深く掘り下げれば、見えてくるものも違っただろう。追及不足だ。

 黒田氏は同誌に「世論は目先の溜飲を下げることだけを求めている」とコメントしている。そうした“後先考えない大衆”が思想集団などに操られ扇動されているのが韓国の現状ならば危うくてしようがない。

(岩崎 哲)