県民調査で「自治権強化」の回答者を”潜在的独立派”とした琉球新報

◆「反日」の流れで分析

 沖縄の地元紙、琉球新報が「県民意識調査」の結果を発表した。調査は2001年から5年ごとに実施しており、今回は4回目(昨年10~11月)。地域、年代ごとに行い、質問も多岐にわたる。県民意識の現状や変化が知れ筆者も重宝している。同紙の恒例事業でその労を多としたい。が、分析記事は何とも怪しい。

 元旦の1面トップで「自治権強化35%望む 『現行通り』半数割る」、中面で見開き特集、社会面で「日本における沖縄の立場 40代『単独州』50代『連邦』 中年層で自立志向強く」と展開し、3日付から「変わるウチナーンチュ像」と題する7回連載の分析記事、4日付には「自己決定権求める異議だ」との社説も掲げた。なかなかの力の入れようである。

 そこで強調されたのは「“潜在的独立派”が増加 基地強行 怒り表れ」(連載初回)の見出しが示すように「独立」と「基地」だった。同紙は(もう一つの地元紙、沖縄タイムスも)独立を唱えるような「反日」「反米軍基地」キャンペーンを張るが、その流れで調査結果を分析している。

◆「独立すべき」は減少

 では、本当に独立派が増えたのだろうか。質問は「今後、日本における沖縄の立場(状況)をどうすべきだと考えますか」というもので、11年の回答をみると「現行通り、日本の一地域(県)のままでいい」61・8%、「日本国内の特別区(自治州)などにすべきだ」15・3%、「独立すべきだ」4・7%、「わからない」18・1%だった(『沖縄意識調査報告書2011』琉球新報社)。

 これに対して今回は回答の内容を変え、現行と独立の中間に2問作った。すると「現行通り」は46・1%に減少し、新たに設けた「沖縄関連予算の編成権を持つなど内政上の権限を強化した制度(道州制の沖縄単独州、自治州、特別県制など)を取り入れるべきだ」が17・9%、「内政上の権限を強化し、さらに外交・安全保障に関しても沖縄側が政府と同等の権限をもつ連邦制にすべきだ」が14%となった。「独立すべきだ」は2・6%、「わからない」は18・1%。

 11年と比べると、確かに「現行通り」は半数を割った。しかし、「独立すべきだ」は半減し、わずか2・6%に落ち込んだ。一方、中間の回答は増えたが、「連邦制」には疑問が残る。イギリス連邦のような別国家の連邦制もあれば、スイス連邦のように同一国家内のもあるからだ。

 質問は最初に「内政上の権限を強化し、さらに外交・安全保障」とするから、回答者は後者の連邦制つまり独立と一線を画す連邦と考えたに違いない。とすれば、元旦1面の見出しで言うように「自治権強化」にとどめるべきだ。それを分析記事は“潜在的独立派”と強引に独立へと持っていこうとしており、あまりにも恣意(しい)的だ。

 もっと疑問なのは「基地強行 怒り表れ」としていることだ。米軍基地について11年は撤去が26・3%だったが、今回は20%。何と6・3%も減っている。沖縄紙の一大撤去キャンペーンをもってしてもこの減りようだ。維持は3・2%増の14・2%、縮小は横ばいの40・5%(0・9%増)、強化は1・6%(0・5%増)。この数字のどこから「基地強行 怒り表れ」と読めるのか、首をひねる。

◆少ない若者の撤去派

 目を引くのは若者の基地意識だ。20代では撤去はわずか7・5%で、維持は23・1%と高い。30代の撤去はさらに低く6・1%。この世代は回答を保留する「どちらとも言えない」が3割を超えた。前回も同じ傾向だった。これに対して60代以上では撤去が3割以上だ。それで同紙は「中高年は革新的 若者、基地問題で戸惑い」(4日付)とするが、若者の撤去派が1割を切っていることこそ強調してしかるべきではないか。

 これは新聞購読率と関わっていると思う。中高年の情報源は新聞(地元紙)が多いが、若者は新聞を取らず、ネットだ。ネットには中国の軍事的脅威が目につく。ところが地元紙にはそれが載らない。意図的と思えるほど小さく扱ったり、抹殺したりしているからだ。

 いずれにしても地元紙自らの調査によって、独立も米軍撤去も沖縄県民の世論でないことがはっきりした。このことを肝に銘じておきたい。

(増 記代司)