韓国の国情揺るがす大統領弾劾デモに異様なまでの賛美を送る朝日

◆デモの正体には沈黙

 韓国はどこに行くのだろうか。朴槿恵大統領の弾劾訴追案が国会で可決され、大統領の職務が即時停止された。今後は首相が職務を代行するという。核・ミサイル開発を止めない北朝鮮の“暴発”が懸念される中、韓国の政治混乱は深まっていくのは必至だ。北東アジアには何とも憂鬱(ゆううつ)な師走となった。

 大統領を弾劾へと追い詰めた“功労者”は「ろうそくデモ」だそうだ。それを朝日はまるで自分のことのように喜ぶ。10日付「天声人語」は「抗議集会は大きくなる一方で、先日のソウルでは32万人が街を埋めた▼隣国の市民社会の強さを見せつけられた思いがする」と、デモを「市民社会の強さ」と浮かれている。

 同じく10日付「時時刻刻」は「市民の怒り」「世論の怒り」との表現を何度も使い、国際面は「韓国民意、国会動かす 朴氏の弾劾訴追可決に『勝った!』」の見出しを躍らせた。社説は「与野党はすでに大統領選に向けた動きを始めているが、見失ってならないのは、国民の怒りのありようである」と、ここでも「国民の怒り」を強調する。

 他紙は「北を利する『政治空白』」(読売10日付¥回転(90)¥長体(23)=中島健太郎ソウル支局長)「韓国混乱 見えぬ収拾/日韓 関係改善に打撃」(毎日10日付「クローズアップ2016」)と政治混乱を懸念するが、それとは対照的な異様なまでの朝日のデモ賛美である。朝日にとっては「デモこそ命」か。が、そのデモの正体については沈黙を守っている。

 正体を暴くのは産経の「久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ」(3日付)だ。久保田氏は元ソウル特派員で、現在は編集委員。

◆背後に親北極左勢力

 「これまで週末に5回連続で繰り広げられたデモはみるみる間に膨らんだが、その中心にいたのは労働者団体や親北極左NGOの核心的な勢力だ。デモを誘導している親北団体は1500に上る。『朴槿恵政権退陣罷業国民運動』と仮面をかぶっているが、急進的な労働団体から北朝鮮の代弁機能を果たしてきた団体、さらに慰安婦運動をしてきた韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)まで入っている」

 要するに極左過激派デモの類である。その背後で北朝鮮が暗躍している。本紙11月20日付は、北朝鮮が2年も前から今事件の疑惑を示唆し、中央日報系ケーブルテレビが決定的物証を暴露する1カ月前から宣伝工作を強めていたと報じている(上田勇実・編集委員)。

 また、本紙7日付は主催者発表で100万人が参加したという3回目のデモ(11月12日)が「戦闘的路線で知られる全国民主労働組合総連盟(民主労総)が動員に力を入れていた『民衆総決起』の当日だった」と指摘している(「どこへ行く混迷・韓国 国政介入事件の深層」下)。

 「民衆総決起」とは歴史教科書の国定化などに反対し昨年11月に初めて行われたもので、鉄パイプまで持ち出す過激デモだった。産経の黒田勝弘氏(ソウル駐在客員論説委員)は今回の群衆の中心は2002年に左翼・革新系の盧武鉉氏を大統領に当選させた「盧武鉉世代」で、父子2代(朴正煕氏と朴槿恵氏)への「復讐戦」と分析している(10日付)。

 朝日はこうしたデモの思想的背景(つまり共産主義)にお構いなしで、デモ賛美にうつつを抜かしているわけだ。まさに同じ穴のムジナだ。今後、わが国にも「デモ政治」を持ち込もうと朝日の左翼論調に拍車が掛かると見て間違いあるまい。

◆反戦闘争けしかける

 それで思い出すのは、福島第1原発事故後の朝日の反原発デモへの賛美ぶりだ。11年9月に東京・明治公園で「さようなら原発」集会が開かれると、「人々が横につながり、意見を表明することは、民主主義の原点である」と褒めちぎった(同21日付社説)。

 その中で「60年安保では群衆が国会を取り囲んだ。ベトナム反戦を訴える街頭デモも繰り広げられた。それが、いつしか政治的なデモは沖縄を除けば、まれになった」とし、安保闘争やベトナム反戦闘争の再来をけしかけた。

 過激派の中には韓国に出向いてデモに参加し民衆蜂起を研究しているとの情報もある。朴槿恵大統領の弾劾訴追をほくそ笑む朝日の顔が見えてきそうだ。

(増 記代司)