朝日が絶賛する日弁連の「死刑廃止宣言」の実態をスクープした産経

◆死刑存続の続報なし

 朝日の1面コラム「天声人語」7日付が米大統領選と共に注目していたのが、カリフォルニア州で実施される死刑廃止法案の是非を問う住民投票だ。先進国で死刑制度を持つのは米国と日本だけで、同州で同法案が賛成多数となれば、その意義は大きい。死刑廃止論者の朝日らしい期待を込めた内容だった。

 その結果はどうか、続報を待ったが、朝日紙面にはさっぱり載らない。トランプショックでそれどころではなかったのか、それとも反対多数だったので無視したのか。AFP通信は12日付で「米3州で死刑制度賛成の住民投票 廃止論者に衝撃」と報じていたから、どうやら後者らしい。

 それによると、同様の住民投票はオクラホマ、ネブラスカ州でも行われ、いずれも反対多数で死刑制度は維持され、人権団体は「新たな夜明けに向かうチャンスを手にしながら、欠陥のある政策を選んだ」と非難している。オクラホマとネブラスカはトランプ候補が制したが、カリフォルニアはクリントン圧勝。それでも死刑制度は守られた。なるほど朝日には期待外れだった。

 天声人語は「日本弁護士会は先月、『2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきだ』との宣言を賛成多数で採択した」と、まるでこの紋所(もんどころ)が目に入らぬか、と言わんばかりに宣言を持ち出し、死刑廃止論を主張する。だが、日弁連の「賛成多数」はそれほど意味があるとは思えない。

 なにせ採択は全弁護士約3万7000人のうち546人(1・4%)によるものだ。大会は委任状による議決権の代理行使を認めておらず、ごく少数の参加者(人権派弁護士)による宣言にすぎない。

◆木で鼻を括った回答

 その“証拠”を産経が9日付でスクープしている。関東弁護士連合会(関東13弁護士会)と九州弁護士会(九州8弁護士会)がそれぞれ実施した死刑制度に関する会員対象アンケートで、死刑を廃止すべきだとの回答が4割超にとどまり、賛成と保留を合わせた回答が過半数に達しているというのだ。

 多くの弁護士が「軽々と回答できない」と賛否を保留しており、賛否が定まらない中で日弁連が「死刑廃止宣言」を採択したことに改めて疑問の目が向けられそうだ、と産経は言う。

 朝日は日弁連の宣言採択を社説で「大きな一歩」と評価し、死刑存続を訴える弁護士らに死刑廃止に向けた論議に協力せよと高飛車に主張したため、同弁護士らは「なぜ協力する必要があるのか」と質問状を送付していた。その回答を「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」が明らかにしたが、木で鼻を括(くく)ったような内容で「朝日は何も答えていない」と怒りを倍増させている(産経9日付)。

 日弁連は死刑廃止だけでなく安保法反対、集団的自衛権行使反対、共謀罪反対等々、政治運動に実に熱心だ。これも一部の「賛成」で行っている。弁護士は日弁連への登録が法律で義務付けられているだけに身内からも批判の声が出ている。産経はここにもメスを入れるべきだ。

◆左翼弁護士が多数派

 かつて本紙の法曹問題研究取材班がその実態を長期連載したことがある(1987年11月25日~12月26日付)。それを再編集し『被告席の日弁連 告発される日弁連の左翼運動』として発刊されている。今も日弁連の実態を知る数少ない出版物だ。

 1980年代、左翼弁護士らは共産党の反スパイ防止法に同調し、87年5月の日弁連第38回総会で賛成多数で「国家秘密法(スパイ防止法)案再上程反対」決議を採択した。採択時の出席会員(弁護士)は3807人で全弁護士(当時、1万3417人)の27%。と言っても出席者のうち3422人は委任状によるもので、採択の場にいたのは僅(わず)か385人だった。

 驚くべきことに日弁連の会則には総会の定足数についての定めがない。定足数は議事を行うために必要な最小限度の出席者数を言い、株主総会などでは必須だ。それで多忙な弁護士の多くが参加せず、動員の左翼弁護士が総会の多数派を占める仕組みとなっていた。おそらく今も同じ構造なのだろう。

 もっと恐るべき実態があるが、いかんせん紙幅は尽きた。関心のある読者は本書の一読をお薦めしたい。

(増 記代司)