衆院補選/責任ある政権運営求めた読、産と野党の奮起求めた朝、毎
◆色合いの違い際立つ
「日本中で自民党が支持されているかは、慎重に検討して対応すべきだ」「勝ったときほど謙虚にやっていかなければいけない」(自民党・二階俊博幹事長)
7月の参院選のあと初の国政選挙となった東京10区と福岡6区の両衆院補欠選挙(23日投開票)は自民党が大勝して議席を維持する結果となり、与党候補が一敗地にまみれた先の新潟知事選からの悪い流れにひと区切りをつけた。与党内はホッとした空気も流れる一方で、幹部は先に控える解散・衆院選をにらみ引き締めに動き出した。
一方、形の上では候補者を民進党公認に一本化した民進、共産など4野党は、両補欠選挙で及ばなかった。共産党との関わり方次第で拡大する「野合」批判や保守票が逃げるマイナスを無視できない民進党と共産党などと推薦や政策協定などでぎくしゃくし、共闘が不発に終わったからだ。
補選翌日の朝刊(24日付)社説は一斉に衆院補選について論じた。読売と産経(主張)がもっぱら勝利した与党に、政権運営の責任を果たすことを求めたのに対し、朝日と毎日は野党の課題や共闘の立て直し、奮起を促す提言と色合いの違いを際立たせた。日経と小紙は双方について論じ、ニュートラルなスタンスとなったのである。
◆民進に知恵授ける朝
補選について、自民党は「勝って当たり前の選挙だった」と軽く流した産経は、巨大与党の責務である「政策の断行を躊躇(ちゅうちょ)し、放置したままにしているケースが目に付く」ことを問題視。その最たる例に社会保障制度改革を挙げ、75歳以上の保険料の特例廃止や介護保険料の所得に応じて負担する仕組みに変更する案などが「選挙への影響を懸念してか与党には慎重論が相次いで」いる。だが、「これでは制度はいずれ立ち行かなくなる」と論じ、痛みを伴う改革は「丁寧に国民に説明し、理解を得」て具体的な政策の実行を求めたのである。
誰もやりたがらないテーマだが、誰かがやらなければならないことである。
読売は補選の勝利で、環太平洋経済連携協定(TPP)の早期承認に向かう大事な時期に、不用意な失言をした山本有二農水相を叱った。「民進党の審議拒否は行きすぎだが、山本氏の発言も不適切で、政府・与党のおごりと批判されるのは仕方ない」とした上で「国会運営にもっと緊張を持たねばなるまい」とたしなめたのは当然である。
一方、蓮舫氏の代表就任後の民進党についても「民進党は、野党共闘について明確な方針を示さずにいる。場当たり的な対応をいつまで続けるつもりなのだろうか」と呆れる。失政続きだった政権時のドタバタを野党になっても繰り返している。政権に少しも近づけていないのもむべなるかなである。
早くも次の総選挙を見据える朝日は「今回の敗北から、野党はどんな教訓を引き出すべきか」と、1週間前の新潟県知事選が「有力な手がかりになる」と民進党に知恵を授ける。
新潟知事選では東京電力柏崎刈羽原発の再稼働が大きな争点だったとし、「今回の補選と新潟知事選の結果を分析し、学ぶべき教訓を引き出してもらいたい」と繰り返す。
目下の国会論議や政権運営などはまるで眼中になく、次の総選挙に向け民進党への応援メッセージの連発は、いかにも朝日らしいと言えよう。
◆戦略立て直し求める
本音は朝日と似ていても、毎日は今夏の参院選で一定の成果を挙げた東北の1人区の野党共闘路線を持ち出し「TPPへの反発が強いことも野党の追い風となった。/しかし、今回の補選で再現はできなかった」と分析した。アベノミクス批判など争点の差別化が浸透しなかったが、「ここ数年の国政選挙で野党が連敗している背景には、争点形勢能力の不足がある」と指摘。野党には「選挙戦略の立て直しを急ぐ」よう求め、安倍政権には「補選の勝利におごらず、謙虚に政権を運営するよう望みたい」と朝日より冷静な社論の展開である。
補選の結果を踏まえ、小紙は民進党に「票を得るための『数の論理』でなく、政権を担える政策作りにこそ力を注ぐ必要がある」と指摘した。日経は衆院の小選挙区制から今年で20年。「明確な対立軸のある政策本位の選挙にいまだなっていかないのは何とも残念である」と結んでいる。
(堀本和博)





