テロ対策に「共謀罪」織り込む組織犯罪処罰法改正に難癖つける朝日
◆世界で当たり前の法
都道府県ごとに住民の「体感治安」を探る全国調査を警察庁が初めて実施した(毎日8月31日付)。
それによると、体感治安が最も悪かったのは大阪だった。昨年の刑法犯件数と比較しても、大阪は人口当たりの件数がワーストだ。最も良かったのは山形で、警察への信頼度が高い都道府県ほど体感治安も良い傾向がみられた。
だが、無差別テロが発生すればどうだろう。信頼は一瞬にして吹き飛び、体感治安は最悪だろう。だからテロをどう封じるかは至上命題だ。それで政府は「共謀罪」を織り込んだ組織犯罪処罰法改正案を次の臨時国会に提出する。
共謀とは「犯罪を共同してたくらむこと」で、犯罪の準備段階で摘発できるのが共謀罪だ。国連で採択された「国際組織犯罪防止条約」が義務付けており、約180カ国が創設した。もはや世界では当たり前の法律だ。
ところが、わが国に共謀罪がない。小泉政権が国会に3回、提出したが、野党や左派メディアの猛反対に遭い廃案となった。それで条約を採択し国会で承認されているのに締結できず、国際社会から日本は対テロの「弱い輪」と非難されてきた。
この共謀罪の国会提出を朝日が8月26日付の1面トップでスクープした。今回は適用対象を絞り、「目的が4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」と定義し、テロ組織や暴力団、振り込め詐欺集団などを想定しているとしている。
ようやくとの感がするが、それでも朝日は難癖をつけ共謀罪を悪玉に仕立てあげたいらしい。記事には「過去の法案では、犯罪を行うことで合意する『共謀』だけで罪に問われていた」とあるが、舌足らずも甚だしい。
◆過激派擁護の論法に
これまでも対象は「犯罪組織」と規定し、05年の与党修正案では適用対象を「重大な犯罪を実行することを共同の目的とする団体」と限定し、共謀だけでは罰せず、共謀した者の誰かが実行の下見など外部的な行動をした場合(犯罪の実行に資する行為)のみを処罰するとしていた。
同案は結局、日の目を見なかったが、朝日はこういう経緯を端折って、記事では「一般の会社の同僚らが居酒屋で『上司を殺してやろう』と意気投合しただけで処罰されるといった批判があった」などと、おどろおどろしく書く。
当時、朝日は「一般市民も飲み屋で相談しただけで捕まる」「内心の自由すら認められない」「619もの罪が対象で、暗黒社会の再来だ」などと書き立てた。が、どれも恣意的な反対論にすぎない。
一般市民が飲み屋でテロや重大犯罪の相談をするとでもいうのだろうか。「619もの罪」は、条約が定める重大犯罪を日本に適用すればその数になるだけの話で、政府が意図的に広げたわけではない。
どうやら朝日は同じ論法で反対論を張るつもりのようだ。26日付3面では「『共謀罪』新設案 問題点は」を特集し、「(適用)当局の解釈で適用拡大も」「(準備行為)何が該当 基準は不透明」などと否定論を並べている。
記事は日弁連の共謀罪法案対策本部副本部長の海渡雄一弁護士の反対論で締めくくっている。海渡氏はそれこそ共謀罪の対象団体と思われる極左過激派の支援弁護士として知られる人物だ(妻は夫婦別姓の福島瑞穂社民党前党首)。
◆共謀罪は導入すべし
さらに朝日は29日付社説「『共謀罪』法案 政権の手法が問われる」で、先の参院選の自民党の公約になかったとし、「選挙が終わるやいなや、市民の自由や権利を脅かしかねない政策を推し進める。特定秘密保護法や安全保障法の制定でもみせた、この政権のふるまいである」と反対した。こういう言い方こそ朝日が秘密保護法や安保法でみせた振る舞いそのものだ。
毎日も30日付社説「テロ準備罪 本当に必要性はあるか」で、「定義の仕方によっては、幅広い解釈が可能になる」などとし「副作用は大きい」と朝日に同調。東京も右、いや左に倣えだ(27日付など)。
こうした反対論は「国家は悪」「警察は権力の手先」とする共産主義に毒されているとしか思えない。無辜の市民が犠牲になってからでは遅い。今度こそ腰砕けにならず共謀罪を成立させてもらいたい。
(増 記代司)