「都議会のドン」追及第5弾を放った文春も問われる「覚悟と手腕」

◆“味の濃い”記事満載

 この週の週刊誌は“豊漁”なのかもしれない。強姦致傷罪で逮捕された俳優・高畑裕太容疑者の「実父」が明らかになり、インサイダー捜査について国会質問した山本幸三地方創生相が追及され、スポーツ紙が報じたお笑いタレントと美人キャスターの「熱愛・妊娠」情報を芸能プロダクション社長が押さえこんだ。1日発売(首都圏)の週刊新潮、週刊文春(いずれも9月8日号)がそろって報じている。

 単独でも十分に目玉記事になりそうな話題を両誌とも“惜しげもなく”三つ一緒に載せているのは、情報も鮮度が勝負で“旬”を逃すと価値がなくなるため、大漁でも放出せざるを得ないからだ。

 こういう“味の濃い”記事がそろっている中で、さらに他誌にない特徴を出そうとするのは、けっこう力のいる仕事だが、年初から乗りに乗っている週刊文春がまた「文春砲」をぶっ放した。「都議会のドン」追及第5弾である。

 折しも、小池百合子東京都知事が「都政改革本部」を始動させ、膨れ上がった五輪関連予算にメスを入れようとしており、タイミングはぴったりだ。

◆五輪と豊洲がリンク

 記事は「『五輪予算』膨張の裏で都議会ドン関連企業続々受注」というもので、「膨らむ施設整備費用を小誌が調べてみると、都議会のドンと関係の深い企業の名前が浮かび上がってきた」という。

 同誌によると、「都議会のドン」こと内田茂都議が役員をしている企業・東光電気工事(千代田区)がバレー会場、水泳会場の建設整備を受注しているが、バレー会場の「有明アリーナ」の整備費は「立候補時点では百七十七億円だったが、現在公表されている数字は四百四億円」に、同じく「水泳会場の『オリンピックアクアティクスセンター』。三百二十一億円の予定が、六百八十三億円にまで膨らんだ」という。

 それだけではない。「豊洲新市場の関連工事」でもドンの影がチラつき、「五輪と密接にリンクしている」というのだ。

 これらの情報が事実ならば、どうして今まで都議会で“利権構造”が追及されなかったのかと疑問に思わざるを得ない。その点について、同誌は次のように説明する。

 「地方自治法では、地方議員は自治体の事業を請け負う企業の役員を兼ねることを禁じ、違反すれば、その職を失うと定められている。ただ、これに該当するか否かは、議会で出席議員の三分の二以上の同意が必要だ。内田氏が君臨するこれまでの都議会では、議論すら不可能だった」

 内田氏のニラミで誰も問題化できなかったようなのだ。しかし、これがいよいよ動きそうだ。9月からの都議会で「取り上げる動きが出てきた」という。

◆議会での追及は微妙

 「都知事選で小池氏を支援した都議会会派『かがやけTokyo』の上田令子幹事長が、『(略)これまで都議会では我々が質問しても、自民党が数の力で勝手に議事を進めてきました。しかし、これだけ世間の注目が集まる中、内田氏に見解を問い質す必要があります』」と構えているのだ。

 とはいえ、都議会の勢力図は自民党60、公明党23で与党は約65%の議席を抑えている。片や「かがやけ」はわずかに3人。9月議会で内田問題を質問できるかどうかは微妙だ。「世間の注目」と「文春砲」の援護射撃があったとしても、議会では別の理屈がまかり通る。「内田氏は一連の報道に対し、『みんな分かってねぇな、ハハハ』と笑い飛ばしているという」と同誌は伝える。

 また、小池知事が今後、議会とどのような関係を築いていこうとしているのかも見なければならない。「改革本部」で深々とメスを入れていけるのかどうかだが、五輪であれ、豊洲移転であれ、都議会の承認がなければ予算が決まらず、執行できない。知事は妥協点を見出すのか、力技で突破を目指すのか、同誌は「小池知事の覚悟と手腕が問われている」と結ぶ。

 今のところ、内田都議追及は文春が熱心に取り組んでいるが、他の紙媒体やテレビではまだ本格的に扱われてはいない。今後どこまで迫れるのか、同誌の「覚悟と手腕」も問われている。

(岩崎 哲)