リオ閉会式の「安倍マリオ」登場に「政治利用」と難癖付ける朝、東京
◆見出し工夫する各紙
南米初の「スポーツと平和の祭典」リオ五輪が幕を閉じた。日本選手団は過去最多のメダルを獲得しただけに閉会式を伝える各紙は「熱狂 東京に続く」(産経23日付)「さあ4年後は東京の出番だ」(読売社説=23日付)と、東京五輪への“決意表明”を思わせた。
リオ五輪では感動を伝える紙面作りが印象的だった。毎日はレスリング女子53キロ級決勝で吉田沙保里選手が敗れると、20日付1面で「吉田 金以上の銀/時代築き、後進育て」とし、スポーツ面では「泣くな吉田 五輪の花だ」の大見出し。隣の紙面は「川井 芽吹きの金」と、63キロ級で優勝した初出場の21歳、川井梨紗子選手をたたえている。
こんなふうに新聞の見出しにも工夫が欠かせない。読者は勝敗結果もそれにまつわる喜びや悔しさも、すでにテレビで分かち合っている。だから紙面はスポーツ記者や整理記者の腕の見せどころとなる。
腕の見せどころといえば、閉会式での次回大会PRコーナー「フラッグハンドオーバーセレモニー」がそうだろう。毎回、次回開催地は宣伝に力を注ぐ。朝日23日付は「東京は『LOVE SPORT(スポーツを愛する)』をテーマに、アニメのキャラクターや最新の映像技術を駆使して、伝統的な姿よりもむしろ、新しい姿をアピールした」と評した。
安倍首相が「スーパーマリオブラザーズ」のマリオに扮してサプライズ出演したが、朝日は「五輪旗の受け渡しやあいさつで開催地の首脳が登場することはあるが、演出の中で登場するのは異例だ」としたが、否定的ではなかった。
◆“心変わり”した朝日
海外メディアの反応についても朝日は「英BBCが、安倍首相が『日本の最も知られた輸出物』のマリオに扮したと紹介。米CNNは『日本は会場の観客を驚かせた』と報じた。『スーパーマリオ』の人気が高い中国でも、この演出は好意的に受け止められた」と、「好意的」のお墨付けを与えている。
安倍嫌いで知られる朝鮮日報の日本語版も「3時間の閉幕式に8分間の強烈インパクト」との見出しをうち、日本は「憎らしいほど楽しく平和のメッセージを伝えた」と報じた(産経24日付)。安倍マリオは「異例」だったからこそ、インパクトを与え、東京五輪への日本の意気込みを世界に伝えたと言えよう。
朝日社説「東京がモデルを築こう」(23日付)は「リオ五輪では五輪公共機関(APO)が設けられ、政府、州、市の間の調整にあたった。東京五輪でも、それぞれを横軸で調整する機関があれば準備がしやすくなるはずだ」と提案し、「組織委と東京都、政府が一体となる必要がある」と訴えている。安倍マリオはその政府の姿勢を示したのだから評価されてしかるべきだ。
ところが、朝日はその後、心変わりを起こした。28日付の1面コラム「天声人語」は、まるでほとぼりが冷めるのを待っていたかのように安倍首相の閉会式出席を「政治利用ではないか」とクレームを付けた。
中面コラム「政治断簡」では前田直人・世論調査部長が「珍妙な『安倍マリオ』の姿を見たとたんに感動的だった五輪の余韻は消え去って、脳内が現実政治に引き戻されてしまった」と揶揄(やゆ)している。
◆五輪報道に汚点残す
東京に至っては27日付特報面で安倍首相のパフォーマンスを「政治利用」と断じ、「東京五輪 問われる理念 憲章、プロパガンダ禁止」と、まるで五輪憲章に違反したかのように書き立てた。
だが、IOC(国際オリンピック委員会)の委員からそんな声はまったく聞かれない。首相の登場を「政治的プロパガンダ」と解するのは日本の左翼ぐらいのものだろう。
「東京」を名乗る新聞が東京五輪への政府の意気込みに水を差すのは合点がいかない。朝日の心変わりもそうだが、どうやら安倍憎けりゃ東京五輪まで憎いの図らしい。リオ五輪報道に汚点を残した。
(増 記代司)





