TBS「時事放談」で劇場型の政治に疑問を呈した石破・藤井の両氏

◆入閣辞退の決断評価

 リオデジャネイロ五輪閉会式の東京大会PRセレモニーで、スーパーマリオに扮した安倍晋三首相、五輪旗を振った和服姿の小池百合子東京都知事。次の2020年東京五輪に向け脚光を浴びる両氏をめぐり、それぞれ自民党総裁任期延長論と「小池新党」説が浮上している。

 これらについて21日、地球の裏の閉会式を前にTBS「時事放談」が扱った。ゲストは、第3次安倍再改造内閣への入閣を辞退した自民党の石破茂前地方創生担当相、民主党政権時代に要職を務めた藤井裕久元財務相。

 入閣辞退について司会の御厨貴氏から尋ねられた石破氏は、「50年先、100年先の日本をどうするか整理しておかないといけない」と、まずは大局的見地から返答。「もう一つは党内にいろんな意見があって、一つしかないわけではない。……いろんな意見を戦わせて決まったらそれに従う、そういう本来の自由民主党があるべきだ」と語った。

 これに野党側の藤井氏は相槌(あいづち)を打った。「今の内閣は独裁色が強くなりつつあると言わざるを得ないと思う。そういうことにきちっとした対応をお取りになった石破さんが民主主義の原点に戻っておられるんだと思う」と、石破氏の姿勢を評価した。「独裁色」の表現に慌てたのか、石破氏は「というより、みんなが安倍さんの意向を忖度(そんたく)して、こうだろうな、ああだろうなということで、結果的に藤井先生のおっしゃるようなことになっているとすれば、それは自民党のためにもならないし、安倍政権のためにもならない」と、言い直した。意味深長な問い掛けでもある。

◆政治経歴に共通項も

 自民党の変化で決定的だったのは郵政解散(05年)。小選挙区制を利用した劇場政治だった。民営化に反対する議員をワンマンの小泉純一郎首相は公認せず、党公認の「刺客候補」をぶつけた。小池百合子氏もその一人。

 都知事選の展開が、その劇場政治を彷彿(ほうふつ)とさせるためか、来年の都議選をめぐる「小池新党」説にも石破氏は、「(新党は)知事が選択肢の一つと言ったのであって、これしかないと言ったのではない。……劇場型の政治というのは本当に都民を幸せにするだろうか」と疑問を呈した。藤井氏も「劇場型というのはその国を悪くする」と警戒した。

 ところで、石破氏と藤井氏の政治経歴には共通項がある。政治改革をめぐる自民党離党だ。衆院選が中選挙区制の時代、派閥政治の閉塞とカネの問題で自民党長期単独政権の弊害が表れ、政治不信を招いた。石破氏は若手リーダーとして政治改革論議を進め、藤井氏らは離党して細川護煕連立政権を樹立(1993年)。同連立政権で小選挙区比例代表制を導入する政治改革関連法を成立させたが、当時の野党・自民党が反対した中で石破氏は賛成し、離党した(その後、新進党を経て自民党に復党)。

 党営選挙で政権交代しやすくする小選挙区制度だが、今の民進党の停滞は「二大政党」の均衡を崩している。小選挙区制を推進した2人の「放談」には、中選挙区時代の長所を見直しているように思えた。最近、田中角栄が評価されてもいる。石破氏指摘の「本来の自民党」は、派閥が競った頃の姿でもあろう。

◆容易でない3期9年

 自民党総裁任期の延長に関して石破氏は、「今議論することに違和感がある」と述べた。

 一方、NHK「日曜討論」は同日、第1部「内政・外交 菅官房長官に問う」で安倍政権の“大番頭”、菅義偉官房長官が登場し、内外の課題に首相の「未来チャレンジ内閣」に懸ける方針を手堅く説明。自民党総裁任期延長には「党内、国全体、日本の国のありようを考えた時、安倍総理限定じゃなくて誰にでも適用するような形で変えるべきではないかと議論されている」と、前向きに語った。

 他党には長らく党首が同じ例があるが、自民党が与党として「3期9年」も総裁=首相であり続けるほどの逸材がいるなら、むしろ国益にかなうかもしれない。世論の注目の中で参院選2~3回、衆院選2~4回ぐらい「選挙の顔」になって勝ち、総裁選も3回勝たなければ3期9年にならない。これをクリアするのは容易ではない。

(窪田伸雄)