シールズの“実態”触れず「街頭政治」と持て囃す朝日の「反議会主義」
◆選挙で表される民意
「SEALDs(シールズ)」が15日に解散した。安保関連法や改憲に反対して国会前でデモを繰り広げ、参院選で野党共闘を呼び掛けたことで知られる学生団体だ。一部メディアは若者の代表のように報じ、英雄扱いした。
その最たるものが朝日で、解散を受けて「回顧モノ」を盛んに載せている。17日付は2面に「街頭政治 シールズが残したもの」とのロゴを使い、「市民が争点作る 種まいた」などと、SMAPばりの扱いだ。
おまけに社説まで掲げ「(シールズの活動は)選挙による代表制民主主義に限られない民意の表し方を、わかりやすく、スマートに示した。反発も受けたが、若者だけでなく、より上の世代の政治参加も後押ししたのは間違いない。それがうねりとなり、やがて政党を動かすまでにいたったことは、大きな功績だ」と褒めちぎっている。
18日付からは政治面に前記ロゴのシリーズを組み、「デモ、自分たちのやり方で 秘密法反対、集った若者」(18日付)「『普通の人』学生・母親が声 安保法異議、地方にも波及」(19日付)「野党共闘呼びかけへシフト 候補乱立で落選、変えたい」(20日付)と、まるでシールズの代弁者だ。連載はまだ続いている。
それにしても、よくもこんな浮いた記事を載せたものだと感心する。「選挙による代表制民主主義に限られない民意の表し方」というが、そんな「民意」はあろうはずもない。民意(国民の意思)は選挙を通じて表されるもので、一部の自己主張、プロパガンダ(主義・思想などの宣伝)を民意とは言わない。
◆議会否定の共産主義
そもそも憲法前文の冒頭に「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」とある。朝日はそれとは別の「民意の表し方」を描くが、いったい何なのか。
思い当たるのはアナキストや共産主義者の反議会主義だ。彼らは、議会制はプロレタリア大衆が直接行動(革命)へと向かう力を押しとどめ、ブルジョワ独裁に貢献するとして否定した。朝日も同じ考えなのだろうか。
「街頭政治」は反議会主義の表れだ。むろん憲法は表現の自由を保障しており、街の路上に政治があってもよい。だが、国政を論じる場合、政治とは「国家の統治作用」を指し、それは国会を通じてなされる。街頭政治はそれを真っ向から否定する概念だ。
朝日はシールズの行動を「わかりやすく、スマートに示した」というが、これにも首を傾げる。昨夏の国会前集会では安倍首相に対して「バカか、お前は」「アベやめろ」などと怒号を飛ばし、ひんしゅくを買った。下品で、ヘイトスピーチに近く、とてもスマートとは言えまい。
それに若者はシールズに共鳴していない。そのことは朝日が実施した参院選の出口調査(7月11日付)でも明らかなことだ。同調査によれば、自民、公明両党への投票は20代が最も高く、次いで18、19歳でいずれも半数を超えた。とりわけ自民党支持が高い。
17日付記事はこの出口調査に触れ、「若者の多くは与党を支持した。シールズの訴えが広く行き届いたとは言えない面もあった」と書いている。ならば、「うねりとなり」との社説の記述は虚偽ではないか。
◆虚偽を重ね英雄扱い
何よりも不可解なのは、朝日がシールズの実態に迫らないことだ(22日現在)。本紙読者なら先刻承知のように創設・主要メンバー(奥田愛基氏ら)は左派色の濃いキリスト教愛真高校(島根県)の出身者が多く、「背後に共産党系民青関係者」がいる(本紙1月4日付)。
朝日は「地方にも波及」というが、本紙取材班が「シールズ琉球」の実情を探っていくと、他の地方組織の「首都圏」や「関西」で確認された構図と同様、共産党の若手の下部組織である民主青年同盟(民青)の幹部が影響力を行使していた(2月22日付)。
サンデー世界日報(21日付)「Q&A ここが知りたい日本共産党」は、シールズ解散の背景を共産党機関紙「しんぶん赤旗」から読み解き、両者の深い関わりを伝える。
こうした「実態」は朝日にまったく載らない。触れては困る内容だからか。虚偽を重ねてシールズを英雄扱いする。「革命神話」でも作りたいのだろうか。
(増 記代司)