安倍再改造内閣発足に経済再生の加速や構造改革求める保守系各紙
◆保革で論調分かれる
第3次安倍再改造内閣が発足した。安倍晋三首相は会見で「未来チャレンジ内閣」と命名し、2020年とその先を見据えながら1億総活躍をはじめ日本の未来を切り開いていくとの決意を表明した。
新聞各紙は組閣後の4日にそろって社説で論評を発表した。見出しを列挙すると、以下の通りである。
読売「経済再生を効果的に加速せよ」、朝日「『安定政権』で何をする」、毎日「党対策より改革推進を」、産経「成長へ効果上げる采配を」、日経「新内閣は難しい課題から逃げるな」、東京「憲法擁護こそ自覚せよ」、本紙「飽くなき挑戦で課題克服を」――。
論調は保守系紙とリベラル系紙とで見事に分かれた。保守系紙は安定政権として、これまでの3年半で積み残してきた課題に取り組むよう鼓舞し、リベラル系紙は警戒感を露(あら)わにする姿勢である。
今回は経済的側面から、新政権の抱える課題に対する各紙の論評を見ていきたい。
力の入っているのは、やはり、大社説(通常2本立ての社説枠を1本でまとめた)の読売と日経である。
読売は「政策の継続性と安定した政権運営を重視した、手堅い陣容」と評価。そして「デフレ脱却をはじめ、様々な重要課題に果敢に取り組み、具体的な成果を上げねばなるまい」と指摘し、新内閣の目的を「最優先すべきは、無論、日本経済の再生である」と強調した。
日経も同様に、「改造内閣の最優先課題は勢いを欠く日本経済の立て直しとなる」と、「今度こそ腰を据えた対応が問われる。中長期で経済の実力を強くする構造改革に踏み込むべきだ」と説く。
◆消費増税の指摘なし
両紙の主張は尤(もっと)もで、同感である。ただ、ではなぜ日本経済の再生が必要になったのか、なぜ勢いを欠くようになったのか、この点が問題である。
日経は3年半のアベノミクスについて、次のように説明する。金融緩和と財政出動、構造改革の3本でデフレ克服と経済の底上げを狙い、当初は日銀の強力な異次元緩和の効果で円安と株高が進み、景気や物価の状況も改善した。だが、米国がドル高を容認しない姿勢に転じ、中国経済の不透明感もあって円安の流れは反転した――。
ここで明らかに抜け落ちている事象がある。2014年4月から導入された消費税増税である。
日経が説明するように、金融緩和と財政出動、特に異次元緩和の効果で円安・株高が進み、景況感が改善していったが、その「勢いを欠く」契機となったのが消費税増税であることは、誰の目からも明らかであろう。しかし、それを指摘しない(できない?)のは、日経自身が消費税増税を訴え、その導入を強く主張してきたからであろう。
安倍政権が消費税増税を実行した14年4月以降、大きな経済政策の決定を官邸主導で進め、財務省を蚊帳の外に置いていることを、以前、小欄で紹介した。その背景には安倍政権に、消費税増税を主張し、その経済への悪影響を見誤り、反省もしない財務省への不信があるということであり、同政権は消費税増税の影響の大きさを知ったということである。
◆まず需要創出が必要
しかし、今なお、日経をはじめ大手紙はアベノミクス変調、つまり「経済再生」(読売)を叫ばなければならないほど「勢いを欠く」(日経)ようになった原因が消費税増税にあったことを認めていない。
読売などは政府の経済対策に対し、「効果が一過性の旧来型公共事業のバラマキは許されない」としたが、たとえ一過性でも、消費税増税以降、内外需とも低迷している状態にあっては需要を創出することがまずは重要で、それをいかに民間投資を誘発するものにするかである。
日経も「社会保障や労働市場の改革などの難しい課題にも逃げずに取り組み、日本経済の潜在成長力を高めてほしい」と指摘し、そのために構造改革の推進を常々強調する。
確かに、その通りと思うことも少なくないのだが、同紙の主張がより説得力を持つ意味でも、まずは真摯(しんし)な反省が必要であろう。
(床井明男)





