致命傷になりかねない都知事候補・鳥越氏の「女性問題」各誌が報道

◆またも炸裂“文春砲”

 東京都知事選も佳境に入っている。主要候補3人の戦いはまるで「人気投票」のようだ。知名度だけが物を言い、投票日まで10日を切って、ようやく政策論争らしきものが聞こえてきた。

 そんな中で“文春砲”が炸裂(さくれつ)した。週刊文春(7月28日号)が野党統一候補の鳥越俊太郎氏の「『女子大生淫行』疑惑」を載せたのだ。この時期、この手の記事は選挙妨害、名誉毀損(きそん)に問われかねない。鳥越事務所は記事掲載が明らかになった20日に、文春編集部宛に「抗議文」を送っているが、しかし、出てしまったものは抑えようがない。鳥越氏にとって、この記事は致命的打撃になりかねないだろう。

 内容は2002年夏、マスコミ志望の女子大生を富士山麓にある鳥越氏の別荘に誘った。そこで関係を迫ったものの未遂に終わり、帰路でも「ラブホテルに行こう」と誘った。鳥越氏は「彼女は妄想癖がある」と言いふらした。女性は今もトラウマに苦しんでいる。鳥越氏は抗議を受けて「テレビから引退する」と言いながらもその約束は守られていない。そんな鳥越氏が知事になったら耐えられないと女性の夫が告発した、というものだ。

◆刑事告訴に疑問の声

鳥越氏側は「事実無根」として、文春編集部を公職選挙法違反と名誉毀損で刑事告訴した。「『疑惑』がいかにも真実であるかのごとき印象を与えるものとなっている」と記事を批判している。

 こうした鳥越氏側の対応の仕方に疑問の声も上がる。橋下徹前大阪市長はツイッターで、「今回の週刊文春の追及くらいで、自ら説明責任を果たさずいきなり弁護士を使って法的措置を執る」やり方を批判した上で、「報道の自由を最も尊重しないのが鳥越さん」「徹底的に言論で大喧嘩しなさい」と呼び掛けている。

 鳥越氏の「女性関係」を報じたのは文春だけではない。週刊新潮(7月28日号)は女優の岸惠子さんとのうわさを伝えており、鳥越氏の古巣「毎日OB」が同誌に、「社内では只ならぬ関係ではと話題になったものです」と語り、「二人が非常に親密だったのは紛れもない事実」と同誌も断定する。

 さらに、週刊朝日(7月29日号)も、民進党関係者が、「鳥越氏はハンサムなだけに過去の女性関係について色々と噂があり、週刊誌が血眼になってスキャンダルを探している」と不安を口にしていたことを伝えている。

 「鳥越氏の女性問題を知る立場にある関係者を直撃すると、こう話した。『相手女性が公表を望んでいないのでお話はできない』」ということだ。文春のケースではない別の女性の存在を示唆している。

 かつて鳥越氏はサンデー毎日編集長を務めていた1989年、宇野宗佑首相(当時)の愛人問題を暴露し、辞任に追い込んだことがある。自分がやったことが今度は自らに降り掛かっているのだ。

◆選挙への影響不可避

 今回の都知事選、文春の記事が切っ掛けとなり、舛添要一知事が辞任したことで行われている。その最中にまた候補者のスキャンダルを挙げてきた。有権者に判断材料を提供するのはマスコミの使命の一つとはいえ、正直“文春砲”にはやや食傷気味でもある。

 同誌は参院選でも自民党比例で出馬した青山繁晴氏を共同通信時代、社の経費を私的流用した「トンデモ候補」と書いている(7月7日号)。選挙中のことで、青山氏は「選挙妨害」として刑事告訴した。結局、記事は青山氏に大したダメージを与えなかったようで、48万票を獲(と)って党で2位当選を果たした。

 だが今回、鳥越氏の「女性問題」は同誌だけでなく、週刊新潮、週刊朝日でも同じく取り上げられており、こうなると妻子ある同氏の「節操」は疑問をもって見た方がよさそうだということになる。

 文春は「第2弾」を用意しているという。次の号で記事が出るとすれば、投票日の数日前。鳥越陣営がいくら刑事告訴しようとも、選挙戦への影響は避けられない。結局、部数は伸びて“書き得”で終わりそう。それが週刊誌というものだ。

(岩崎 哲)