米軍熊本被災地支援に誤報に基づく反オスプレイ報道する朝日など

◆嘆く元海兵隊関係者

 「はあー、情けない、情けない。政治的な主張と、災害対応は分けて考えるべきです。少なくとも今くらいは、意味のない議論はやめなさいと言いたいです」

 こんな嘆息を漏らすのは東日本大震災で米軍「トモダチ作戦」を手掛けたロバート・エルドリッヂ元在沖縄海兵隊・政務外交部次長だ(産経23日付「単刀直言」)。

 政府は熊本地震で米軍の空輸支援を受け入れ、海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが支援物資を南阿蘇村に輸送し、地元民から感謝された。ところが、朝日や東京、沖縄紙がこれにいちゃもんをつけている。

 朝日は「今回の救援活動に必要なのか。安全面に問題はないのか。疑問の声が出ているが」とし、小池晃共産党書記局長の「けしからん」の発言などを紹介(19日付)。夕刊の風刺コラム「素粒子」は「中身より入れ物が大切。容量が小さく、音がうるさくても。あえて使うオスプレイ。政府と米軍の思惑を届ける」と嫌みたらしく書いた(19日付)。

 オスプレイ批判の急先鋒(せんぽう)、琉球新報は「安全性を不安視する世論の沈静化を図る狙い」との評論家の声を載せ(19日付)、同紙社説は「災害の政治利用はやめよ」と叫んだ(20日付)。東京は「熊本地震・政府対応 膨らむ『なぜ』 川内原発止めず/オスプレイ投入」(21日付特報)と反オスプレイを露(あら)わにした。

◆本紙、読、産など反論

 こうした批判に対して反論の口火を切ったのは本紙だ。21日付社説「オスプレイ批判こそ筋違いだ」は、「米軍の持つ機能は大規模災害時の緊急対処においても世界最高水準」と指摘しオスプレイ投入の意義を強調。これに読売と産経の23日付社説が続いた。

 産経は「着実な日米協力を示した」とする。東日本大震災の経験を踏まえ日米は昨年改定の防衛協力の指針(ガイドライン)に大規模災害への対処協力項目を新設。オスプレイの活用も含め、防災共同訓練に取り組んできた。それが生かされたとしている。

 読売は「オスプレイの活用は効果的だ」と言い、「理解できないのは、野党内に、オスプレイ活用に批判があることだ」とし、民進党の原口一博・元総務相が安全性に懸念があるとして「避難している皆さんも不安に思っている。米軍の協力はありがたいが、やめてほしい」と発言したのを取り上げ、こう反論した。

 「他の米軍機に比べても重大事故率は低く、フィリピンの大型台風やネパール地震で支援実績もある。活用しなければ、物資供給が滞り、被災者のより大きな不安を招いたのではないか」

 安全性について本紙は「2012年の同機の事故率は1・12で、それ以前に就役していたヘリコプターCH46Eの1・14より低く安全性は高い」と指摘している。原口氏は何を根拠に懸念を抱くのだろうか。

◆欠陥機は沖縄紙誤報

 もともと「欠陥機」のレッテル貼りをしたのは沖縄紙だ。オスプレイは開発段階で事故が多発したが、その後、改良を重ねて実用化された。その経緯を黙殺し欠陥と断じた。

 琉球新報は捏造(ねつぞう)まがいの報道までやってのけた。典型的なのは米NPO国防分析研究所の元主任分析官レックス・リボロ氏の発言で、「エンジン停止で墜落」などと報じた(12年5月28日付)。だが、同氏は「危険なのは戦場で、平時の事故は稀だ」「墜落の可能性は低い」と述べていた。それでも「墜落」の見出しを躍らせた。

 米軍の規則では新兵器・装備に「構造上の危険」があれば、原因が取り除かれるまで運用を中止する。精鋭の海兵隊員らを事故で亡くす損失は計り知れないからだ。こんな規則も沖縄紙は語らない。

 10年に空軍用CV22がアフガニスタンで墜落し「機体不良」を疑う一部報道があったが、事故調査責任者のハーベル空軍准将(当時)は「機体は改良を重ねており、飛行実績をみる限り、他の固定翼機やヘリコプターに比べても安全性が高い」と言明している(産経12年7月13日付)。それでも沖縄紙は「機体不良」と言い募った。

 こうした「誤報」を朝日や原口氏らは鵜呑(うの)みにしているのだろうか。「オスプレイ反対と言う人よ、災害で同胞犠牲にするのか」(エルドリッヂ氏)。こっちこそ懸念される。

(増 記代司)