「違憲」が流行している裁判所の解せない判決を痛烈に批判した読売
◆選挙無効判決は疑問
このところ、裁判所の「違憲判決」が続いている。9月に最高裁は婚外子相続問題で民法規定を違憲と断じたが、広島高裁岡山支部は7月の参院選を「違憲で無効」とした。いずれも解せない判決だ。
婚外子判決を真正面から批判したのは本紙だけだが、11月29日付社説はさらに踏み込み、最高裁判事の「罷免」の在り方を俎上(そじょう)に載せている。判決への批判は月刊誌などにも広がっており、司法の在り方が今後、大いに問われよう。
「1票の格差」判決も同様だ。最高裁大法廷は1週間前の20日、昨年の総選挙の「1票の格差」について「立法の裁量」に配慮し、違憲とまで踏み込まず「違憲状態」とし、無効ともしなかった。ところが、広島高裁岡山支部は最高裁の判断を無視し、いきなり違憲無効判決だ。この裁判長は今年3月にも違憲無効判決を出しており、どうやら「1票の平等」信奉者らしい。
これを読売は痛烈に批判している。第1報の28日付夕刊では「ある裁判官は『大法廷判決の趣旨をあまりにも軽視し過ぎている』と驚く」と解説。29日付では3面スキャナーで「最高裁の判断『度外視』 即時『無効』強い批判」と判決の問題点を洗い出し、社説は裁判長の政治や国会への理解不足が目立つとし、「選挙無効判決は乱暴に過ぎる」と畳み掛けている。
なかなか歯切れがよい。読売は、判決が比例代表ばかりを重視し、政治の安定を図る選挙区選の機能を軽んじているとも批判しているが、比例中心の選挙制度を主張するのは共産党だ。まさか裁判長は青法協(青年法律家協会=共産党系)か、そんな疑念を抱かせる。
◆論理が矛盾する毎日
これに対して他紙は違憲無効判決を手放しで評価し「1票の平等」を金科玉条としている。毎日28日付夕刊は「民意反映へ是正を」とし、「国会の現状を断罪」と解説。朝日29日付も「国会の怠慢断罪 小手先の是正認めず」と強調する。だが、肝心の是正策についてはいささか心もとない。
朝日は「都道府県より大きなブロック制や、比例区だけではどうか」と共産党的な主張をにおわせ、「改革するには、参院の存在理由を定義し、それを踏まえた選挙方法を設計する必要がある」と曖昧だ。
維新の会やみんなの党は「参院の存在理由」が存在しないとして憲法改正で一院制に改めると主張している。朝日は護憲のままで、どう「存在理由」を定義するのかを明らかにせず、口を閉ざしたままでは是正策はないに等しい。
これに対して毎日は「私たちは、参院の『地方代表の府』とすることも一つの選択肢と指摘してきた。衆院との機能分担のあり方について、政党は議論を深めるべきだろう」としている。
だが、論理が矛盾している。参院を「地方代表の府」にするというなら、それこそ「1票の平等」判決に異議を唱えるべきだ。昨年10月の最高裁の「違憲状態」判決では、都道府県単位の選挙区制設定を槍玉に挙げていた。岡山支部判決もそうで、「1票の平等」を貫こうとすれば、過疎地議員は激減し、それこそ地方は切り捨てられる。
毎日の「地方代表の府」が米国の上院のような「州代表」をイメージしているなら、3700万人のカリフォルニア州も54万人のワイオミング州も定数は同数で「1票の平等」などあり得ないと知るべきだ。
もとより「地方代表の府」にするにも「衆院との機能分担」をするにも憲法改正が必要なのは論をまたない。それを毎日は言わずに「政党は議論を深めるべきだ」と逃げていては言論に筋が通らない。
◆産経は参院選改憲案
その点、産経は明快だった。判決について批判しないが、29日付主張は自らの改憲案を紹介し、国会議員を国民が直接選挙するよう定める現憲法を参院議員に限り「直接選挙および間接選挙」で選出するといった改革案を示す。
その参院について朝日と毎日は特定秘密保護法案が衆院を通過し参院に送付されたことを受けて「抵抗の府」になるよう盛んに煽(あお)っている。ご都合主義も甚だしい。朝日は「衆院が通過した法案を追認するだけの軽い存在なら、参院は要らない」(28日付)と勇ましいことを言っている。ならば、そんな改憲案を提示してみてはどうか。
(増 記代司)





