川内原発周辺の放射線量計に事実を理解せず住民の不安を煽る朝日
◆反原発派に偏る朝毎
ノンフィクション作家の門田隆将氏が産経20日付「新聞に喝!」で、「全国紙は福島の復興を望まないのか」と東日本大震災5周年の記事に疑問を突き付けている。全国紙とは毎日と朝日のことだ。
毎日には福島県郡山市から新潟市に娘と避難した主婦が登場し、同県の「住宅無償提供」が来年打ち切られるのを非難し、東電への集団賠償訴訟に参加する決意が紹介されている(11日付)。
一方、朝日には妊娠を知らずに「放射線量の高い地域に入った」という女性ドキュメンタリー映画監督が登場し、原子力の平和利用を糾弾する(12日付)。「両紙は、福島が元に戻ることよりも、行政糾弾に主眼が置かれている」と門田氏は言う。
実は筆者も郡山市民だが、事故直後を除いてほとんど全部と言ってよい市民は避難していない。同市の放射線量の測定数値を門田氏は紹介しているが、3月11日の線量は市内17カ所とも0・05~0・18マイクロシーベルトの正常値だ。地元では避難者は「プロ市民」か、「何か事情のある人」と受け止められている。
なぜ、こんな特殊な人だけを取り上げるのか、門田氏ならずとも疑問だ。地元では両紙とも部数が少ないが、なにせ全国紙だ。「風評被害」量が測定できれば、異常値だろう。
前記の毎日記事には主婦の娘は「原因不明の鼻血を繰り返し」とある。だが、鼻血と放射線被曝(ひばく)との因果関係は否定されている。福島県相馬郡医師会は11年度から13年度にかけて住民延べ3万2000人余りの健康診断を行ったが、事故前に比べて鼻血が出るようになったと答えた人はいなかった(14年5月発表)。
鼻血をめぐっては漫画「美味しんぼ」騒動もあったが、鼻血話を持ち出すのは大概、反原発の確信犯的人物だ。それを知ってか知らずか、毎日はそうした主婦を登場させた。またぞろ、である。
◆虚偽報道を繰り返す
原発をめぐる虚偽報道では14年5月に朝日が「所員の9割が吉田所長の命令に違反して撤退した」とする「吉田調書」の誤報が名高いが、それだけではない。
朝日は12年10月15日付に横浜市で1㌔当たり129ベクレルの放射性ストロンチウムが検出されたとし、「原発周辺と同じレベルの汚染が首都圏まで及んでいたことになる」と報じた。
毎日も「横浜で検出されたということは、東京、群馬、長野などでも出ていると考えた方がいい」との脱原発派の話を載せ、健康不安をあおった。だが、文科省が調べたところ、ストロンチウムは検出されたが、原発事故とは無関係の核実験によるものだった。
毎日は「(原子力)規制委員長 住民聴取拒む」「避難住民の意見は反映されない見通し」などと報じた(13年11月10日付)。原発事故で避難した住民の帰還対策の提言案をめぐる記事だが、規制委は住民への聞き取り調査を行っており、スクープは真っ赤なウソだった。毎日は同17日付に謝罪記事を載せた。
「デマ報道」は今も続いている。朝日は3月14日付1面トップで、再稼働した九州電力川内原発の周辺の放射線量計について「避難基準値 半数測れず」と報じた。「モニタリングポストのうち、ほぼ半数が事故時の住民避難の判断に必要な放射線量を測れない」とし「事故時の住民避難の態勢が十分に整わないまま、原発が再稼働した」と批判した。15日付社説では「避難についてここまでずさんでは、話にならない」と規制委と鹿児島県をなじった。
◆訂正・謝罪ない朝日
だが、鹿児島県によれば、川内原発30㌔圏内では高線量が測れる装置が42台、低線量用が29台設置されており、双方の測定装置をバランスよく配置して高低いずれの放射線量にも対応し、万一の事故に備えているという(産経ネット版16日)。
それを朝日はあたかも避難判断ができないように報じた。規制委は「事実を理解せず、地域住民の不安をあおり立てている」と憤っている。朝日が訂正しないので規制委は今後、朝日の電話取材を一切受け付けず、対面取材の場合は録音するという無期限の取材制限措置を通告している。
かつて毎日は謝罪したが、朝日は開き直った。「非常に犯罪的だ」(規制委の田中俊一委員長)と言うほかあるまい。
(増 記代司)





