朝日鼎談で仏の「非嫡出子が半分」を評価する自民・野田氏の不見識
◆“売れる素材”放さず
週刊文春が2月18日号で宮崎謙介衆院議員(当時)の「ゲス不倫」を暴いて、辞職に追い込んだが、それだけで済むとは誰も思っていなかった。会見で宮崎氏は他にも女性問題があったことを認めていたからだ。予想通り、次の25日号で第2弾が炸裂(さくれつ)した。
議員辞職して“私人”になれば、引き続き追い掛けられることはあまりないが、週刊誌として宮崎氏は“まだまだ売れる素材”だ。手放すはずがないし、都合のいいことに、叩(たた)けば叩くほど埃(ほこり)が出る。何よりも彼の「ゲス」っぷりを叩く分には読者が喜ぶ。
今度はなんだ。「二重婚約」していたという。同誌によれば、現夫人の金子恵美衆院議員と結婚に至る過程で、他にも約束した女性がいたという話だ。この女性は宮崎氏のためにキャリアを諦め、将来の夢も断念した。衆院選でも弱気になる宮崎氏を支え、彼の初当選で「議員の妻」になる覚悟も固めていたという。
金子氏との結婚は報道で知ったというから、この女性の受けた衝撃はいかほどだったことか。その後連絡が取れなくなり、「未だに説明も謝罪もないそうです」と、女性の友人が同誌に語っている。
最初の加藤鮎子衆院議員との結婚も「浮気」で破綻し、2度目の結婚では二股を掛け、臨月の妻そっちのけで、女性を家に連れ込む。議員辞職は身から出たさびなのだが、「芯からチャラ男の宮崎氏」はこの期に及んで「『もう復活できないんスかね?』と聞いていた」と「政治部デスク」が同誌に明かす。何だ、この感覚は。
◆最大の牽引者は移民
というところで週刊朝日(2月26日号)の「『自民党若手の劣化』を叱る」の見出しが目に留まった。「議員カップルの先輩格」である野田聖子前自民党総務会長と鶴保庸介参院議員、古賀誠元衆院議員に、かつて週刊文春の「トップ屋」として活躍した作家の大下英治氏が聞いたものだ。
しかし「若手を叱る」内容は少ない。昨年の自民党総裁選で、安倍総裁を恐れて、自派閥の野田氏を若手が推さなかったことを言っているだけだ。むしろ看過できないのは野田氏が少子化について語っている内容である。
フランスの出生率が「V字回復」している例を引いて、「結婚してもしてなくても嫡出子・非嫡出子にしませんという宣言から始まって改革をした。今では子供の約半分がいわゆる非嫡出子です」という現状を評価している。
フランスだけでなく欧州各国では事実婚が増え、国によっては婚姻関係と同数に迫るところもある。オランド仏大統領自身も事実婚である。しかし、人口が増えているのは嫡出非嫡出の区別をなくしたことだけの功績ではない。最大の牽引(けんいん)者は移民だ。それも、厳格な家庭倫理観を持ち、大家族の多いイスラム教徒の貢献が大なのだ。
野田氏は、「不倫を増やすとか、若い子供たちにセックスが蔓延するとか言われる。古い人たちばっかりなんですよ」というが、それじゃ宮崎氏を「新しい人」とでも言って、彼と同列に並ぼうとでもいうのだろうか。望まない十代の妊娠が、どれほど少女の人生を狂わせ、幼児虐待や死亡事故を引き起こしているか。少し実態を見てから発言した方がいい。
◆「元少年A」への疑問
週刊文春のこの号の目玉は何と言っても、「元少年Aを直撃!」だろう。昨年6月に手記「絶歌」を出版した神戸市連続児童殺傷事件(1997年)の犯人を同誌が直撃している。
手記の出版から今日まで、Aは数度転居を繰り返し、それを同誌は執拗(しつよう)に追跡してきた。そして今回初めて直で接触して取材を試みたのだ。
「元少年A」をなぜ文春は追い掛け回すのか。一言でいえば「本当に更生しているのか」という疑問がどうしても拭えないからだ。成人してもなお、匿名の陰に隠れながら、手記を出したりサイトを開設したりしている。猟奇犯罪に興味を持つ者から崇(あが)められてもいる。被害者が彼の所在を知らずにいることの不安・不当感、矯正教育の失敗、少年法の不備、等々、もやもやした課題がそのままになっている。
人権問題をはらんではいるが、それでも誰かが「元少年A」を見続けなければならないだろう。
(岩崎 哲)